第20話 死守の覚悟
ロパが目覚めた時、目の前には第九の触手を
「あ……」
と言いながら顔を上げるフローラ。
何故かシースルーの下着姿で、スケスケのブラジャー越しに乳首と乳輪がはっきりと見えている。
「え……どういうこと……?」
体がすごくだるい。
フローラが体を起こして座り直すのに合わせてロパもベッドの上に起き上がる。
フローラは下もスケスケのやつだった。
プラチナブランドの控え目なアンダーヘアーなので生えていないように見えるが、よく見ると小さな茂みがある。
座っているのでさすがにあそこは見えないが、いつもなら大興奮するはずの触手が硬くならなかった。
というか、ちょっとひりひりする。
しかも、唾液でべっとり濡れていた。
「何してたんだよ!」
「何って、もちろん、治療ですわよ」
「触手が微妙に痛いんだが」
「そこから魔力を注入しましたからね」
「どうやって?」
「お口で銜えてちゅるちゅるーっと」
フローラは自分の指をいやらしくなめてみせる。
死後十年経ちロパは六十三歳だ。
もうあの時みたいに知識が無いわけでは無い。
「まだ
「いや、それはこの間、おまえにされただろ」
「あら、そうでしたか? では、私がロパ様の初めての女というわけですね」
勝ち誇ったようなフローラの顔は昔より少し大人びて色気が増していた。
「昔、女のことを教えてくれるって言ったのを覚えているか?」
「初めて会った日のことですか? ええ、覚えていますよ。筆頭の座を退くまでに振り向かせてみせるとも申しました。結局、あの約束は果たせませんでしたね」
「そうだな。できることなら生きている間に教えてもらいたかったな」
「御興味はおありだったんですね」
「最初は無かったけどな。最後の方は興味津々だった。魔王城強襲作戦におまえを参加させないと決めた時、だだをこねるおまえの口を格好良く自分の口で塞ぎたかったんだがな。死を覚悟していた俺にはおまえの情を受ける覚悟が無かった。結局、
「そうだったんですか……。私はあの時、最後まで拒絶されたのだと絶望的な気分になりましたわ……」
「もし、あの時に戻れたなら、俺は……」
と言いかけたところで、下着姿のエルアーリアが隣のベッドでこちらを睨んでいるのに気付いた。
「あ、どうぞ、どうぞ。お気になさらず続けてください」
ちょっと不機嫌そうな顔をするエルアーリアを見てロパは咳払いをする。
「いたのか?」
「ええ、いましたよ。ずっといました。治療だってさっきまで私がしていたんですからね。おかげで顎が大変なことになってますよ」
「それはすまなかった。いや、ここは礼を言うべきところだな。ありがとう、エルアーリア」
「べ、別に、ロパさんの為にしたんじゃないんですからね! これはあくまでも守護天使としての務めを果たしただけです!」
「わかってるよ」
ちょっとアレなところもあるが、まあ、基本的に良い子だとは思う。
ただもっと素直さがあれば可愛いのにとも思う。
「それで、俺はどれくらい眠っていたんだ?」
「二時間ほどですわ。私がやったら一分で終わってしまうのであえて彼女にしてもらいました」
フローラが説明してくれる。
その事実はエルアーリアも初耳だったようで目を丸くしていた。
「じゃないかって思ったよ。おまえも相変わらず意地が悪いな」
「そのおかげで発射感覚がだいぶ延びましたわ」
「そのせいで俺の触手はひりひりするし、あいつの顎も大変なことになったそうなんだが?」
「何度も替わると申し上げましたのですが、ね。よほどあの粘液が気に入ったようでなかなか放そうとしなかったのですわ」
フローラがエルアーリアに視線を向ける。
「そうなのか?」
「ち、違いますよ。私はただ純粋に治療の為に……」
「そうかしら。最後は自分の指で……」
「あああああっっっ!!!!」
エルアーリアが枕を抱きしめながら絶叫する。
耳まで真っ赤にして左右に首を振る。
「フローラ、それ以上はやめてやれ。金切り声がうるさくてかなわん」
「蕩けたような顔で見せた痴態。ロパ様にも見せてさしあげたかったですわ」
「やめてぇえっっ!!!!」
恥ずかしさが頂点に達したエルアーリアは枕を抱えたままベッドの上を転がり始める。
「本当にそれくらいにしてくれ。なんか、かわいそうになってきた」
「そうですわね。ちょっとやり過ぎたかもしれません」
「ところで、賊は全員捕縛したんだろ? 尋問はしたのか?」
「私は苦手なのでロパ様にお願いしようと思いまして」
「ってことはする予定はあったってことだな」
「はい。実のところ、都市消滅が反政府テロリストによるものなのか、それとも政府による弾圧の結果なのか、決めかねているところなのです」
「政府の調査派兵がカモフラージュである可能性も否定できないってことか?」
「噂されているような魔法実験の犠牲にはなっているとは思えませんが、消滅したとされるスタボロスキはチェルネチェの首府であるソルジャー・ガラとは地理的に近い位置にあります。スタボロスキはスタボロスキ地方の州都で、住民の中にはチェルネチェ共和国派を支持する声も少なくなかったようです」
「だからと言って見せしめにするか? 仮にも州都だろ?」
「連邦は秘密主義ですから情報が少なく、どれが真実なのか、判断がつきにくいのです。せめて参謀であったディオゲネス様のご意見を賜れればよいのですが……」
しかし、かの御仁は十二剣聖最高齢であるにもかかわらず健脚で放浪癖がある。
今どこにいるのかはフローラも知らないのだろう。
「やはり、尋問するしか無いってことか……。正直、あまり気が進まないな……」
「だったら、色仕掛けでもすればいいじゃないですか」
突拍子も無いことを言うエルアーリアに二人の視線が向けられる。
「おまえ、そういうのは言い出しっぺがやることになるんだぞ?」
「え? 私? 私はやらないですよ」
「じゃあ、フローラにやらせるつもりだったのか?」
ちょっとキレ気味にロパが質問する。
「だって、フローラさんならそういう経験もあると思って……」
「そういう考え方自体がフローラへの侮辱だが、それ以上に自分がやりたくないことを他人にやらせようとするのは感心しないな」
「すみません……」
エルアーリアがしゅんとなってうつむく。
「大体なぁ、おまえは勘違いしているぞ。俺は確かに弱くなったが、心まで弱くなったわけじゃない。おまえにしろ、フローラにしろ、この命に代えても守ると決めている。だから、そんなことは冗談でも考えるんじゃない。いいな?」
「ロパさん……」
うつむいていたエルアーリアが顔を上げた次の瞬間、目の前のフローラが抱きついてきた。
「さすがはロパ様。惚れ直しましたわ」
ロパの体中にキスの雨を降らせるフローラ。
そんな彼女を見てエルアーリアがちょっぴり悔しげな顔をしているようにも思えたが多分気のせいだろう。
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