第12話 それはヨーグルトの味がした
銃を撃ったことのない人間は非常に取り扱いが難しい武器のように思い込んでいる。素人が銃を撃っても簡単には当たらないとか言うやつも多い。妙に知識が先行してるとそんな思い込みに捕らわれがちだ。
確かに射撃は練習することで上手くなる。
それは事実だ。
しかし、だからといって誰にも扱えないものではないし、素人の撃った弾が当たらないわけではない。
そして、どんな射撃名人も弾切れになったらただの人でしかない。
それもまた事実なのだ。
また、実戦経験が浅く、中途半端な訓練で自信をつけた兵士より、戦場の風を知った民間人の方が遙かに強いことも知っておく必要があるだろう。
殺されるという意識を持った人間は常に慎重だ。
だから、生きる為に殺される訓練を受ける必要がある。
本物の勇気とは恐怖の上にのみ築かれるということを我々は決して忘れてはならない。
……という趣旨の話をしてやるつもりのロパだったが、フローラが熱心に拳銃射撃のレクチャーをしてくれたおかげで出番は全くなかった。
「まあ、要するに安全装置を外した状態で引き金を引けば弾が出ます。最初は照準をつけようとはせず体の向く方向に弾が出ると覚えていなさい。あなたが曲芸師のような
腕を伸ばし、照準を合わせて撃つ方がもちろんいいに決まってるが、ぶっちゃけ胸に引きつけコンパクトに構えた方が当たりやすい。両腕を胸に引きつけると、伸ばした状態よりもブレにくくなり、銃弾が真っ直ぐ前に飛ぶからだ。ほぼ横にずれることはなくなり、手首を固定して上下動だけを意識すれば決まった場所に命中する。フローラの教えたのも、もちろんこの撃ち方だった。
「なんか変な撃ち方ですね」
この構えは確かに不格好だが利点は多い。
照準を意識すると周囲の警戒を怠りがちだが、そもそも照準しなければ片目をつぶる必要もなくなり、両目で全体を見渡すことが可能になる。
また、腕を伸ばしていると出会い頭に銃をたたき落とされることもあるが、胸に引きつけていればそれを防げる。
銃は格好をつける為に装備するファッションアイテムではない。
訓練所で教えるシューティングポーズにこだわり過ぎるのは素人がよく陥りやすい
「軍人になりたいのならちゃんとした射撃姿勢を覚えさせるが、素人が人に当てるだけならそれで十分だ」
「先程も言いましたが、銃弾は体の向く方向に発射されます。視線の先ではないことを肝に銘じておいてくださいね」
近接戦闘に強いエルアーリアは拳銃もよく使う。
よくわかっているから助言や説明も的確で卒が無い。
「それから、相手を倒せる状況になったらためらわずに撃ちなさい。武器を持っている相手は無条件に殺されてしかるべき相手であると認識していただいて結構です。変な優しさは身を滅ぼすだけですよ」
これも重要なことだ。
人を殺すということは想像するよりも遙かにストレスがかかる。
特に最初の一人目は負担が大きい。
そのハードルを下げさせる為にも命令や指示を出すことは重要だと言われている。
もっとも、それに慣れすぎて人を殺すことに抵抗がなくなるというのも問題ではあるが……。
「まあ、とりえずやってみるしかないな。おまえは治癒の法術が使えるんだから、戦闘よりは負傷者の手当を優先しろ。拳銃はあくまでも護身用だと思ってくれ」
「わかりました。ロパさんも無茶しないでくださいね。その体は弱酸性スライム以下であることをお忘れ無く」
「わかってるよ。俺も今回はバックアップに徹することにするさ。フローラもそれでいいな?」
「ええ、当然そのつもりですわ」
フローラは自信を持ってうなずく。
だが、ロパは少し気掛かりなところがあった。
エルアーリアやロパ自身のこともそうだが、この船に乗る乗客乗員の全てがフローラの
戦闘になれば死者や負傷者は必ず出る。
それを未然に防ぐのは天下十二剣聖を
「フローラ、無理に人を助けようとはするなよ」
「はい、万が一、そこの天使さんが捕まって慰み者になっても助けたりはいたしませんわ」
「よし、それでいい」
ロパが言った言葉を聞いてエルアーリアが猛抗議する。
「よし、それでいい……じゃないですよ! 守護天使の貞操をなんだと思ってるんですか! そこは全力で助けるの一択でしょ!」
「場合によってはおまえを餌に釣ることもありうる。殺される前にはどうにかしてやるから多少のことには目をつぶれ」
「いやいや、私を餌にっておかしくないですか? そんな危険な役目、なんで私がやらなきゃならないんですか?」
「捨てるに捨てられなかった処女を捨てる絶好の機会だとは思わないのか?」
「思うわけないでしょ! ってか、人の貞操をゴミみたいに言わないでください!」
本気で怒るエルアーリアを見て、フローラが笑い出す。
釣られてロパも笑い出すと、馬鹿にされたと思ったエルアーリアはその怒りの度合いを深める。
「何がおかしんですか!」
と言われて、ロパとフローラは互いに顔を見合わせる。
本当にわかっていない様子の天使に説明する役は、何も言わなくてもロパが引き受けなければならなかった。
「なぁ、エルアーリア。おまえ、仮にも俺の守護天使だったんだろ?」
「それが何か?」
「四十年以上俺を見てきたんだ。おまえを見捨てるような
「めっちゃ思います」
即答だった。
今度はロパの顔が怒りに
「おい、もう一度聞くが、俺がおまえを見捨てるって本気で思っているのか?」
「見捨てるっていうか、私が襲われたら絶対に最後まで見続けるタイプだと思います。ムッツリスケベでヘタレな童貞にありがちなパターンです」
「え? ロパ様って童貞だったんですか?」
フローラがエルアーリアの暴言に反応する。
「ガッチガチの大童貞です。はじめて見た私の下着姿でイッちゃうほどのピュアピュア中年です。きっと生おっぱいなんかみたら気絶しますよ」
エルアーリアが余計なことを言ってくれたので、フローラがニヤニヤしながら戦闘服の上のボタンを外す。
「下着姿なんてもう見慣れた。俺には通用せんぞ」
あらわになったブラジャーを見ても第九の触手が元気になるくらいで済むようになった。
もう、それくらいでは粘液は出ない。
「じゃあ、これならどうですか?」
フローラがブラジャーを上にずらしてポロンとおっぱいをさらけ出す。
「!!!!!!」
形の良い二つの膨らみ。
その
始めて見る生のおっぱいはあまりにも刺激的でロパの脳髄を激しく揺さぶるような強い快感が貫いた。
また、あの謎の液体が出る。
出てしまう。
そう思った瞬間、目の前のフローラが素早く動き、第九の触手の先端がその口の中に吸い込まれた。
「うおっ……」
生暖かいフローラの口の中へと例の粘液がぶちまけられる。
チュパチュパといやらしい音を立ててながら粘液を吸い取るフローラ。
「あら、これってヨーグルト味ですのね。とっても甘くて、癖になりそうですわ」
涎に混じって口の端についていたそれを指でとってなめる。
そのフローラの姿を見ながらロパは夢見心地で意識を失っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます