第六話:神出鬼没の辻占い師
GM:ギルドマスター、ドーラからの依頼を受けた冒険者たちは、さっそく迷い猫の情報を集めるために、再び下町の喧騒の中へと足を踏み入れました。
ピノ:ねぇねぇ、シン。前衛のシンの装備、ちょっと心許ないっていうか、情けないっしょー?
シン:なっ!? んな変か? ショートソードに、バックラー(小型の盾)、レザーメイル(革鎧)。駆け出しの冒険者としては、ごくごく一般的な装備だと思うぜ?
ピノ:うーん。それはそうかもしれないけど、いまのこのパーティーだと、前衛をシン一人に任せることになるよね? ピノは吟遊詩人だし、ハルはヒーラー(回復役)だから、前に出て戦うのは厳しい。そうなると、シンの防御力がちょっと低いかなぁって思うっしょー?
シン:たしかに。……まあ、そりゃ……そうだな。一理ある。俺が倒れたら、お前ら二人は……(言葉を詰まらせるシン。彼の脳裏に、守るべきだった母の姿がよぎる)
ハル:ピノさんのおっしゃる通りですわ。わたくしの回復魔法にも限りがあります。シンさんには、できるだけ長く前線で持ちこたえていただきたいのです。
シン:ピノたちの言ってる事は正しい。……でもなぁ……ガメル(お金)がねぇんだよ。家財道具一式売り払って1200ガメル確保したはいいが、武器防具に冒険者セット、それにここまで来る馬車代で、もうすっからかんだぜ?
GM:では、シンがピノから装備を整えるためのお金をうまく借りることができるか、サイコロの出目で決めましょう。交渉判定ですね。サイコロを2つ投げて、合計値が6以上なら、ピノはシンの覚悟を信じてお金を貸してくれる、ということで。
シン:おっ、そりゃ助かるぜ。(カラカラ……コロン)。よっしゃ、出目は10! つまりはガメルゲットだぜ!
GM:あくまでも借りなので、クエストを達成したらきちんと返済するのを忘れないようにしてくださいね。借金の件は、こちらのパソコンのメモ帳にしっかりと記録しておきましたので。
シン:あったぼーよ。出世払いで、利子つけて全額首揃えて返してやらぁ。見てろよ!
GM:そんなこんなのやり取りの末、三人は下町の路地裏にひっそりと佇む、いかにも怪しげな道具屋を訪れます。
* * *
GM(道具屋):へいらっしゃい! 朝一番で収穫したばかりのピチピチ新鮮な武器と防具が揃ってるよ~。さあさあ、見てきな、買ってきな!
シン:……八百屋かよ
ハル:いえ、魚屋ですわ
ピノ:というか、どう見ても盗品蔵っしょー?
GM(道具屋):八百屋でも魚屋でもないし、盗品蔵でもないよ! お嬢ちゃん、人聞きの悪いことを言うもんじゃないねぇ。さーて、どれも中央の店の七掛けだ。安いよー、買ってきなー。
ハル:ピノさん、見てくださいまし。この腕輪……とっても綺麗ですわ。紫色の宝石が、まるで夜空の星々を閉じ込めたみたいで、神秘的ですわあ
ピノ:あ、それは〈疾風の腕輪〉だね。装備した人の敏捷度を+2増加させることができる魔法のアイテムだよ。軽戦士のシンには、まさにうってつけっしょー
シン:へぇ、すげぇ装飾品だな。……って、高ぇ! 腕輪一つで1000ガメルってマジかよ! 俺のショートソードが12本も買える値段じゃねぇか!
GM(道具屋):お目が高いねぇ、お兄さん。そいつは一級品だ。いまなら特別に、ヒーリングポーション(回復薬)もおまけでお付けしますよ。さぁ、どうされますか?
シン:……くそっ、しゃーねー、買った! ピノ、恩に着るぜ!
* * *
シン:ひゅー。〈疾風の腕輪〉、かっけーな。なんだか本当に、体が軽くなった気がするぜ! 敏捷度+2は伊達じゃないな!
GM:新しい買い物がよほど嬉しかったのか、シンは腕輪に見とれてしまい、気がつくと下町のメインストリートから一本はずれた、薄暗い裏路地に迷い込んでいました。
シン:おっと。……いつの間に、こんな裏路地に
GM:シンが疾風の腕輪から目を離し、ふと視線を上げると、目の前にひび割れた水晶玉を抱えた、高齢のタビット(*ウサギとよく似た二足歩行の人族)が、汚れたゴザを敷いて座っていました。
怪しげな刺繍の入った衣装を身にまとっていますが、どれもそれなりの値打ち物のようです。どうやら、この辻占い師の仕事は、それなりに順調なようですね。
シン:……まさか、あなたがドーラさんの言ってた、辻占い師か?
GM(辻占い師):ひっひっひ。いかにも。わしがこの界隈でちょいと知られた辻占い師、オルカ・キーブさね。おまえさんたち、顔つきからして新米冒険者だねぇ……。ちょいとばかりの金銭を対価に、おまえさんたちの未来を占ってあげようじゃないか。そうさね、……特別に1500ガメルでどうだい。安いもんだろう?
シン:1500ガメル……。あいにくだが、こっちはさっきの買い物で、もうすっからかんだぜ。三人の有り金かき集めても、到底払えそうにねぇな。
GM(辻占い師):うーん。それは困ったねぇ……。わしも商売でやっているからのぅ。わざわざわしに会うために、大金を抱えて訪れる冒険者もいるくらいさ。さすがにタダってわけには、いかないねぇ……?
ピノ:うーん、そうだ! そういえば、〈グランレイダーズ〉のギルドマスター、ドーラさんが言ってたっしょ。『オルカのために、新しい上物の水晶玉を用意している』って。これって、辻占い師さんにとっても、有益な情報じゃないかい?
ハル:ええ。わたくしたちからの、ささやかな情報提供ですわ。これで占いの代金とはいきませんでしょうか?
GM(辻占い師):おお! あのドーラが、わしが長年探していたという伝説の水晶玉を、ついに見つけ出したというのかい! うん、……それは良い知らせだ。今日は気分がいい。よかろう、その情報提供の対価として、一つだけ占ってあげよう。……どうだい、なにか占ってほしいことはあるかい?
ハル:ありがとうございます。では、下町で見失ってしまった黒猫の居場所を探して欲しいのですわ。
GM(辻占い師):ふむ……。ウルタールという名の、黒い猫……。どれどれ……(水晶玉を覗き込む)。むむむ……。水晶玉を見るかぎり、真っ暗で何も見えはしないねぇ……。ただ、かすかに老夫婦の声が聞こえるから、恐らくは屋内だとは思うのじゃが……。それ以外は、すまないが、わしにも分からんねぇ。
ハル:ありがとうございます。暗い場所に閉じ込められている可能性が高そうですね。だいたいでかまいませんので、どのあたりにいるか、方角だけでも教えていただけませんでしょうか?
GM(辻占い師):そうさね。……この路地から見て、あちらの方角……貧民街区のオーガストリート、その3番街あたりから、微かに猫の気配が感じられるさね。……詳しい場所は、近隣の住民にでも聞いておくれ。
GM:グランゼールの貧民街区の中でも、最も危険な地区。それがオーガストリートです。オーガストリートでは……強盗殺人、放火、通り魔、そして時には蛮族の急襲。そういった命の危険が、日常茶飯事となっています。
GM(辻占い師):……駆け出しの冒険者にとっては、ちとばかり危険な場所じゃが、それでも行くのかい?
一同:はい。行きます。
GM(辻占い師):そうか。……人生は長いようで短い。わしは、あんたらがうまくやることを、ここで祈っているとしよう。気をつけてな
GM:(よし、ここらでいったん10分休憩をはさもうか。まだ夜の10時前。オンラインセッションに参加してくれているみんなが協力的なおかげで、非常に順調に進んでいる。このペースならば、日をまたぐ……夜の12時を超えることはなさそうだ。みんな仕事があるだろうし、タイムキーピングも地味だけど大切なGMの仕事だからね)
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