5 さあ、ゲーム開始だ!


 「江蓮は、truth or dare っていうゲーム知ってる?

 日本語で言うと、『真実か挑戦』ね。


 よく、初対面の人どうしが、相手がどんな人なのかを知るためにやるゲームなんだけど」



 「さあ、聞いたことないです」



 「ルールは簡単。

 互いが順番に、相手に対して『真実か挑戦』のどちらを答えるのか尋ねていくのね、例えばこんな感じ。


 まずは私から江蓮にやってみるから、ゲームの流れをつかんでね。

 

 では、『真実』、じゃあ江蓮、きみが最近読んだエロ本の題名を教えてください」



 真面目に話を聞いていたのに、とんでもない例題が飛び出してきたので、一瞬息が止まり、そのせいで次に激しく咳き込んでしまった。

 暗渠のなかの、暗く淀んだカビくさい空気で肺がいっぱいになる。


 とつぜん、なに言ってんだ、このひと!!



 「はあっ!? ななななんですか、それぇ!」



 「いいから、いいから。

 イヤなら答えなくていいんだよ。


 そのかわり、『真実』に答えたくなかったら、『挑戦』を選ぶの。

 それが、このゲームのルール。


 じゃあ江蓮、『挑戦』として、体操選手ばりに、ちょーっとバク転でもしてみようか」



 エレンはまた、なんでもないことのように、とんでもないことを言い出す。

 バク転って、日常生活でそんな気軽にやるもんじゃないだろ、なんなんだよいきなり!


 まあ俺は運動系全般は基本的に得意だから、たぶんバク転もできるとは思うけど、せめて床にマットを敷いてもいいですか…って、いやいやそうじゃなくてっ!



 「はあっ!?

 イヤですよ、こんな暗いとこでバク転なんかしたら頭打って死にますって!


 ていうか、すぐ後ろに井戸の穴があるんですよねっ!?

 落ちますって!


 なんなんですか、その無茶ぶりは!」



 「だから、そういうゲームなんだって。

 答えづらい『真実』か、やりづらいことに『挑戦』するか、どちらかを選ぶの。


 これを順番に相手に出しあうってわけ。

 それで、どっちも出来ないってことになったら負け。


 だから相手が答えにくい『真実』と『挑戦』を提示したほうが勝ちってことね、もちろん限度ってものはあるけれど。


 どう、面白そうだと思わない?」



 とても楽しそうに解説するエレンとは正反対に、俺は気持ちの悪い冷や汗をかきながら、ごくりと唾を飲み込んだ。


 なんなんだよ、このゲーム内容は。

 なんという、ドSゲームなんだ…。


 正直、いまの例題を考えてみても、『真実』も答えたくないし、『挑戦』もやりたくない。

 だけど…これから先、俺がゲームに勝つためには、どちらか一つは必ず選ばなければいけないのか、難しいな…。


 このゲームに勝つには、どうしたらいいだろうか。


 きっと本戦でも、エレンはとんでもない難問をけしかけてくるに違いない。

 例題が繰り出してきた破壊力からして、これから始まる戦いの激しさを察することができるというものだ。


 暗闇のなかで俺が頭を抱えていると、冷静で無慈悲なエレンの声が、俺に追い打ちをかけてくる。



 「それで江蓮、エロ本の題名はなんなのよ」



 え?


 

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