第10話 王都に到着

 弟子になってから数日がたった。ゴブリンジェネラルにやられた傷は、治癒魔法で塞がったのだが血を流しすぎてしまったらしく、まだ動くことはできていなかった。


 そのため、強くなるための訓練はしばらくできないと思っていたのだが、クラウスが急に来たと思ったら外まで担ぎ出されてしまった。


「いいか、おまえはまだ動けないらしいからまずは魔法の訓練からやるぞ。魔力は使えば使うほど増えていくから、とりあえずぶっ倒れるまで魔法を打っとけ」


 それだけ言うとまたどこかに行ってしまった。言われたからにはやっておいたほうがいいだろうと、サンドウォールで壁を作ってそこにストーンショットを打ち込むと言うのを1時間ほどやっていたらそこからの記憶はない。魔力切れを起こしたのだろう。


 魔力が切れてしまうと気絶するとは聞いていたがこんな感じなのか。次の日からも同じことをしていたが3日ほどたつと体も動くようになった。


 竜の牙のメンバーはもういない。彼らは普段この国の王都を中心に活動しているらしく、3日まえに王都に帰っていった。私は体の調子が戻ったら王都に来るようにと移動費をおいていってくれた。


 王都まではまだ距離があるのでそろそろ行こうと思う。前回とは目的が違うが結局王都に行くことになってしまった。今度こそは無事につきたいものだ。



 あれから2週間ほどたってやっと王都に着いた。正直移動を始めるのが早かったと思う。体も動くようになったとはいえまだ本調子にはほど遠い。2週間の長旅はなかなかにきつかった。とはいえ無事につくことはできたのでそこはよかったと思う。


 このあとは彼らを訪ねるのだが、肝心の家の場所を聞いていなかった。まぁ、冒険者ギルドで聞けば分かるだろうしとりあえず冒険者ギルドに行くことにしよう。王都の冒険者ギルドは今まで見たどのギルドよりも大きかった。


 でもあまり驚きはなかった。なぜなら王都に入る前から、もっと大きいお城が見えていたからだ。いくら何でも大きすぎる気がする。倒れたりしないか心配になってしまった。ギルドの中も外同様とても大きかった。ただ、私がはいってくるのをみてニヤニヤと気持ち悪い顔で笑ってくるのは気になった。


「本日はどのようなご用件でしょうか?」


「竜の牙のメンバーが住んでるところを教えてほしい」


「えっと、失礼ですが竜の牙とは面識がおありでしょうか?」


「クラウスってひとの弟子になった」


 そう言った途端ギルド内で大爆笑が起きた。よくみると受付の人も笑っている。


「ハハハハハ、おまえがクラウスさんの弟子?おいおい、最近のガキは冗談がうますぎるぜ」


 顔がほんのり赤くなっている男が近づいてきた。どうやら私が嘘を言っていると思ったらしい。でも、証明する方法はない。仕方なく黙っていると甲高い声がギルドに響いた。


「ちょっと!こんな小さな子を大の大人がよってたかって馬鹿にしてはずかしくないの!」


 見ると私と同じくらいの年の子が5人たっていた。確かに彼らの言っていることは分かる。だが、それが酔っ払いに通用するかと言ったら、するわけがなかった。


「急になんだよ、ってその服魔法学園の制服じゃねぇか。なんだ、ただの世間知らずの坊ちゃんたちかよ。帰った帰った、ここはおまえらみたいのがあそににくるところじゃないんだよ!」


 他の人も魔法学園に恨みでもあるのか、帰れコールが始まってしまった。その様子にさすがにびびってしまったのか後ずさりを始めてしまった。


 そんなとき一つひらめいたことがあった。私がクラウスの弟子である証明。目の前の男を倒したら、さすがに信じてくれるのではないだろうか。この男の強さは分からないが、私を馬鹿にするときも先頭切って始めていたし、そこそこは強いだろう。そう決めたなら早速行動に移そうと、後ろを向いている男に飛びかかって首元に短剣を当てた。


「なっ!?」


「これで信じてくれた?」


 私の突然の行動に誰もが唖然としている。ワンテンポ遅れて状況を理解したのか、男が私を振り落とそうと暴れ始めた。なので、短剣がもっと食い込むようにすると、すぐにおとなしくなってくれた。


「おまえら何やってんだ!」


 するとギルドのおくから立派なひげを持った男が出てきた。周りで騒いでいた奴らも、彼を見てすぐに静かになった。


「マ、マスターこれは違くて」


「なにが違うんだ、こんな騒ぎやがって、おちおち寝てもいられん」


 どうやらこのギルドのマスターらしい。ギルドマスターとはギルドの支部ごとにいるそこで一番偉い人のことだ。たださっきの発言曰く、あまりしっかりした人ではなさそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る