第9話 師匠
気がつくと私は、知らない部屋の中にいた。ジェネラルはどうなったのだろうか。あのとき、何か声がしたような気がしたがあれは何だったのか。考えても分からなかったので、とりあえず部屋から出てみることにした。
「っ!?」
立ち上がろうとすると全身に激痛が走った。どうやらジェネラルにやられた傷は思っていたよりも深いらしい。立てないならしょうがない。
ベットで寝かされていることを考えると、少なくとも急に襲われることはないだろう。ベットの上でぼーっとしていると、誰か来たようだ。一人分の足音がこっちに向かってくる。
「あら?起きたのね」
優しそうな顔立ちのお姉さんがはいってきた。
「あのあとのことは覚えているかしら?」
「あのあと?」
「ゴブリンジェネラルと戦ったあとのことよ」
「覚えてない」
そう言うとお姉さんは今に至るまでの経緯を教えてくれた。どうやら、私を助けたのはランク6の冒険者だったらしい。スタンピートに備えて事前に呼ばれていた人たちの先行隊だったようだ。
町に着くなり戦っている私を発見。その中の一人の意見で戦いが終わるまで観察してたらしい。町はその後到着した、本体によって魔物を一掃され、数は少ないが生存者もいたらしい。
そのあと、近くの町まで運ばれて、1週間寝たきりだったようだ。ランク6の冒険者。それは、冒険者の最高峰と言っていいだろう。冒険者ランクの上限は決まっていないので、少しおかしい気がしないでもないが、今現在存在している中では最高ランク、英雄的存在だ。
その存在は少なく、この国にあるランク6のパーティーは、二つだけだったはずだ。つまり、この人は、ギルダハ王国の冒険者の一角を背負っている人、と言うことになる。あまり強そうに思えないので、戦闘系ではないと思う。ランク6の冒険者。意識がなくなる前の声の主もランク6何だろうか。できればお礼が言いたい。
「ガキが起きたんだって?」
馬鹿でかい声を響かせながら、大柄な男が部屋に入ってきた。強い。敵意も何も感じないのに、そこにいるだけで圧倒されるような感じ。それでいてゴブリンジェネラルとは違い安心できるような感じだ。
「ちょっとクラウス、怪我人がいるんだから少しは静かにできないの?」
「そんな怒るなって。そんなことよりもガキが起きたんだろ。少し話をさせてくれよ」
「はぁ、あなたっていつもそう。自分のことしか考えてなくて。まぁいいわよ。でも少しだけだからね」
「わかってるよ。なぁガキ、おまえは強くなりたいか?」
「強く?」
「そう、強くだ。俺は、おまえとゴブリンジェネラルの戦いを見て思った。こいつは伸びるってな。もし、強くなりたいならこの俺が直接鍛えてやる。少なくともこんなくそみたいなところに行くよりも強くしてやる」
私の持っていた魔法学園への紹介状を持ちながらそう言ってきた。いつとったのだろうか。荷物の中に入れていたはずだから、あさったと言うことか。
性格はともかく実力は確かなはずだ。魔法学園も興味あるが、強くなりたいなら彼のところの方がいいだろう。
心の中で灯はともったままだ。学園に行ったとして、これを絶やさずにいられるだろうか。ゴブリンジェネラルと対等に戦えるようになるだろうか。無理だろう。元からそこまでは期待していなかった。ならば、より実践に近い彼について行った方がいいのかもしれない。
今回の戦いを通して、強くなりたいと言う思いは強くなっていた。
「ちょっとあなたそれをどうしたの?まさか、この子の荷物をあさったなんて言わないわよね」
「あさってなんかいねぇよ。ちょっと拝見したってやつだ」
「それをあさるっていうのよ」
彼らの言い争いを聞きながら、私の中では答えが出ていた。それからしばらくして、言い争いが収まったタイミングで話を切り出すことにした。
「強くなりたい。どんなやつにも負けないくらい、強くなりたい」
「そうか、強くなりたいか。じゃあ俺についてこい。約束してやる、おまえを強くしてやると。よし、そうと決まればまずは自己紹介からだ。他のやつも呼んでくるからちょっと待ってろ」
そう言うとどこかに行ってしまった。数分後に戻ってくると、仲間であろう人を連れてきていた。
「おいクラウス、少しは事情を説明しろ。急に来いと言われただけでは何をするのかも分からないだろう」
「そうですよ~。クラウスさんのその性格はなおしたほうがいいとおもいます~」
「今説明してやるよ。まず、こいつが俺の弟子になったガキだ。おい、自己紹介しろ」
「リア」
「だそうだ。よし、つぎはおまえらが自己紹介しろよ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。弟子になった?そんな話聞いてないんだが?」
「決まったのはついさっきだからな」
「この人に詳しい経緯を聞くのはあきらめましょうよ~。どうせむりなんですから~。じゃあまずは私から自己紹介しますね~。私はリーナです~リアちゃんどうぞよろしく~。一応魔法使いやってます~」
「次はわしがしよう。わしはラース見ての通りドワーフの戦士じゃ」
「はぁ。それもそうか。僕の名前はクルト、このパーティーのリーダーをやってる。」
「最後は私ですね。私はローザ、役割はヒーラーです。これからよろしくお願いしますね」
「以上が俺のパーティー竜の牙のメンバーだ。おまえは俺の弟子だがこいつらにも鍛えてもらうからしっかり覚えておけよ」
「だから、そういうことは先に僕たちに相談しろーーーーー!」
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