第6話 魔法

 ステータスを確認したらすぐに眠ってしまったので昨日は講習を受けることができなかった。もっとも、もうスキルを覚えてしまったので短剣の方は必要ないけれど。


 練習では全く覚えられそうな感じがしなかったけど、実践ではすぐに覚えてしまった。ディーターも言っていたがスキルを覚えたいなら、実践が一番だというのは、どうやら本当らしい。


 なので今日からは魔法の講習を受けようと思う。でも、魔法の方完全に才能に依存するので、無理だったらすっぱりと諦めよう。


「ようリア。おまえ昨日の講習はどうしたんだよ?ここのところ毎日受けてたじゃねぇか」


「短剣は覚えてからもういらない。次は魔法にする」


「もう覚えたって、おまえこの前はぜんぜんできてなかただろ?」


「魔物と戦ったら覚えた」


 ギルドにつくとディーターが話しかけてきたので、昨日のことを話してあげた。


「なっ!?おまえフェシャを倒したのかよ。さすがは俺の弟子だな」


 一通り褒めると満足したのかどこかに行ってしまったのでそのまま受付に行って魔法の講習をお願いした。前回とは違い今回は講師の先生がいるらしくそのまま訓練場で講習を受けることになった。


 訓練場では立派なひげを生やしたおじいさんがいた。


「おぬしがリアじゃな。話は聞いておるよ。さっそく訓練を始めようか」


「なまえ」


「む、そうじゃな、わしのことは気軽に先生とでも呼んでくれればいいじゃろう」


 そう言うと先生は何か板のようなものを出し始めた。


「これは魔法適性を調べることのできる魔道具じゃ。魔法を教える前にまずは適性を知らないことには何も始められない」


「先生の属性は?」


「わしか。わしは火と風の魔法を使うことができるぞ。基本は一つの属性しかないんじゃがまれに複数の属性を持つものもいるのじゃ」


 そう言うと、せかすように魔道具を押し出してきたので手を置いてみた。すると魔道具の中の一カ所が光り始めた。


「土属性か。わしはもっとらんがまぁおしえることはできるぞ。魔法の基本はどの属性も同じで、呪文を覚えて唱えるだけだからのう。普通のやつは一ヶ月もあれば覚えるんじゃが、おぬしはどれくらいでおぼえるのかのう」


 今度は分厚い本を渡してきた。


「呪文はこれに書いてあるが、おぬし文字はよめるかの」


「むり」


「だと思ったわい、では唱えてみるからしっかりと聞いておくのじゃぞ」


 その日の講習は呪文を覚えるだけでほとんど終わってしまった。


「よし、これで呪文は十分じゃな。それじゃあ最後に唱えてみなさい」


「‐―‐‐―【ストーンショット】」


 すると小さな石が的にむっかて飛んでいった。できてしまった。短剣術であんなに苦労したことをちょっと複雑ではあるが。一発でできてしまったことに驚いて固まっている先生を横目に教えてもっらた他の魔法を試してみるとどれも一発でできてしまった。


「て、天才じゃ。本物の天才じゃ。どうじゃおぬしにその気があるならば王都にある王立学園への推薦状を書いてやってもいいぞ。年齢的にも大丈夫そうじゃろう」


 先生は興奮した様子でそんなことを言ってきた。年齢については言っていないので外見を見て判断したのだろう。それにしても学園か少し興味がある。行ってみるのも悪くないかもしれない。


「年齢って何歳からなの?」


「あぁそうじゃな。学園は12歳から15歳までの三年間通うことになるじゃろう」


 12歳か。今が11歳であと数ヶ月で12歳になるので時期的にはちょうどいいだろう。私がだっまていたので不安になったのか先生が慌てだしてしまった。


「もしや、もうその年を越えているのか?」


「大丈夫。今度の3月3日でちょうど12歳」


「おぉ、それはちょうどいい。どうじゃ行ってみる気はないかの」


「興味はある」


 そう言うと喜んで紹介状を書き始めた。


「王都まではここから馬車で1ヶ月ほどかかるからそれを含めてあと2ヶ月はあるのう。よし、その間はわしと一緒に勉強じゃ」


 2ヶ月間勉強なんてそんな話は聞いてない。行きたくなくなってきた。


 その後2ヶ月間の地獄の勉強が終わりついに王都に向けて出発する日がやってきた。


「ちゃんと紹介状はもったかのう」


「大丈夫。それじゃあ、行ってきます」


「頑張ってきなさい」


 先生やディーター、町の冒険者に見送られて私は王都に向かって出発した。


 勉強の途中先生から学校のことについていろいろ教えてもらった。何でも王立学園と言うところはこの国の貴族と平民が一緒になって学ぶところらしい。平民と言っても、それは一部のお金のある商人のこどもや私のように紹介状を持っている人しか入れないらしい。そんなところに紹介状を書けるなんて、先生は何者なんだろうか。聞いてみたけれど、結局教えてはくれなかった。


 そして今年入学するのは、普通の貴族だけでなくこの国の王女様や最近聖剣に選ばれた勇者という人も入学するらしい。まぁそんな人たちとは関わらないから大丈夫だと先生は言っていたが、それでも不安は残る。


 不安と言えば武器代である。まだ払えていない。もちろん町を出る前に払うと言ったのだが、学園に入学するなら金は必要になるだろうとまた受け取ることを拒否されてしまったのだ。


 いろいろと不安はあるがとりあえず今は忘れることにした。私にとっては初めてのまともな旅なのだ。不安ばっかりだとなんだかもったいない感じがしたのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る