第5話 初戦闘

 スキルとは技能が世界に認められた証である。例えば短剣のスキルであればLv.1であれば少しの補正がかかる。しかし少しと言ってもスキルなしと比べると天と地ほどの差がある。Lvが上のスキルに対して、そのスキルのみで戦えば勝てる可能性はほぼないと言ってもいいだろう。他にもLvに応じた戦技を使うことできるようになる。


 あれから一週間短剣術のスキルを手に入れるため毎日訓練しているがまだスキル取得には至ってない。毎日薬草採取と訓練場を行き来する生活をしている。薬草採取の報酬は一日で銀貨三枚と頑張っている。そこから毎日講習で銀貨一枚と宿代に使ったので今の所持金は金貨1枚と銀貨5枚となった。


 ちなみに魔法の講習はまだ受けてない。一つ一つ覚えていこうと思ったからだ。


 そして今日もまた昨日と同じ薬草採取から始まった。採取するのはフェージ草というポーションの原料になる薬草だ。町の外の森まで来ると早速採取を始めることにした。このあたりはフェージ草が主だがたくさんの薬草があるらしい。残念ながら一つ覚えるだけで精一杯だったため他の薬草に関してはあまり覚えていない。


 それから4時間くらい集中して採取していると目標としている量の薬草を集めることができたので、そろそろ町に戻ろうと思っていると。


「グォーー!」


「っ!?」


 どこからか魔物の叫び声が聞こえてきた。この森にはランク2相当までの魔物しかいないらしいがそれでも私にとっては強敵だ。出会ってしまったら死んでしまう確率の方が高いだろう。


 あたりを警戒しながらゆっくりと町の方に下がるように戻り始めた。そのとき目の前の木の陰から何か出てきた。フェシャだ。


 フェシャはランク1相当の魔物で四足歩行の獣型の魔物だ。魔物のランクとは同じランクの冒険者と同じくらいの強さを表すらしい。同じとは言っても冒険者には斥候のように戦闘を主としない人もいるので一概には言えないが。


 もちろん私はフェシャにかつことなんて、できないだろう。だがフェシャは完全に私のことを補足している。この状況から逃げ切ることは不可能だろう。


 選択の時だ。覚悟を決めろ。戦わなければ死ぬ。


「殺す」


 静かにそうつぶやくと自分の後ろにあった気に隠れるようにして走り出した。正面から戦って、勝てるわけがないだろうから障害物を使うことにした。しかしやつはこの森にすんでいる魔物木は障害物にならないらしい。その鋭利な牙を出しながら飛びかかってきた。


「っ!!」


 それをギリギリでかわすと方向転換して走り出したが、どうやらやつの反射神経をなめていたらしい。すぐにこっちに向かって方向転換すると爪で背中をひっかかれてしまった。


「いっ!?」


 そのまま倒れてしまった私の上に乗ってくると、口からよだれを垂らしながらじっくりと見てきた。


 背中の傷が痛い。短剣は倒れたときき落としてしまってので手元にない。


 孤児院から逃げて新しい生活が始まると思った矢先に、死ぬのか。嫌だ、死にたくない。なかなか死なないな。上に乗っている感じはするがそこからの動きがない。何でだろう?恐る恐る目を開けると、ニタニタと笑う敵の顔が映り込んできた。


 あぁ、分かったこいつ私のこと舐めてんのか。傷を負って、武器を落として、戦う力もない私のことを舐めてんのか。


 怒りがわいてきた。さっきまでは、ただ生き残りたい一心で戦っていたが今はもう違う。怒りで心が支配され始めた。


 怒りはそのままでとりあえず今の状況を整理してみた。傷は負っている。上には魔物。メインの短剣はなく、一応持っていた解体用のナイフ一本だけである。ここからやつを殺す必要がある。


 まずはこの小さなナイフでやつの足を傷つけることにした。体を少しひねっていい具合に傷をつけることに成功した。やつは獲物からの反撃に驚いたのか私から飛び降りていった。


 そしてそのまま飛んでいった方向に向かってナイフを投げつけると、落とした短剣の方向に向かって走り出した。ナイフを躱していたやつは行動がワンテンポ遅れ、そのおかげで短剣の回収に成功した。その際、落ちてた石も一緒拾っておき、こっちに向かって走ってくるやつに向かって投げつけた。


 もちろんその石は軽々躱されるが、投げると同時に躱すであろう方向に向かっていた私は躱すことができず、そのまま短剣で傷つけることができた。以外にも深く入ったのか、そのまま倒れてしまったフェシャも首に短剣を突き刺して殺した。そうして私の初めての戦闘が終わった。

 

今回は、なんとか生き残ることが出来たが次もうまくいく保証はない。今回勝てたからといって油断はしないようにと、心の中で堅く誓った。それとは別に、私の心はなんとも言えない高揚感を感じていた。


 その後町に帰った私はなぜか確信していた。そしてそれはステータスを見ることによって確実になった。


 HP:8/22→26 MP:10 筋力:3→5 魔力:2 俊敏:6→9 耐久:3→6 器用:7→10 総合:21→32 レベル:1

 スキル:【短剣術Lv.1】【投擲Lv.1】

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る