第4話 自分の力を知ろう

起きた。生まれてから今までで一番いい目覚めかもしれない。体が軽い。睡眠環境は大切だと思った。


 今日はやることがたくさんあるけど、とりあえずご飯を食べようと思う。昨日は部屋についてすぐに寝てしまったのでご飯が食べられなかった。せっかくお金を払っているのだからしっかりとたべたい。


「おや、食事をしにに来たのかい?」


 小さくうなずく私を横目に食事の用意をしてくれた。献立はパンにスープと、この国では一般的なものだった。でもすごくおいしかった。孤児院にいたときもここまで来る道中もこんなにいいものは食べられなかったから。食事も大切だと思った。これからはこだわって、おいしいものを食べて生きていたいと思った。


 食べ終わると次は昨日ギルドに聞いていた鍛冶屋に行くことにした。そこは頑固だが子供好きのドワーフがやっている鍛冶屋らしく、子供の私が行ったら割引してくれるかもとのことだ。ドワーフとは鍛冶が得意な種族らしい。私も会ったことはないので詳しくは知らない。


 鍛冶屋に着いたが表通りに面していて結構立派な建物だった。中に入って見ると様々な武器がおいてあった。


「なんじゃ、客か?」


 するとおくから背の低い人間が出てきた。これがドワーフなんだろうか。


「なんだおまえさん見ない顔だな、こんな汗臭いとこに何のようだ。あぁ、ちょっとまっとれ今おくから何か持ってきてやる」


 そう言うとまたおくに引っ込んでいった。少ししたら何やらおいしそうなものを持って戻ってきた。


「ほら、食べな」


 見たことのないものだったがみずみずしくおいしそうだったので一つ食べてみた。


「っ!?」


 みずみずしくて甘い、そして少し酸っぱくておいしかった。


「なに、これ」


「おまえさん、シーリの実ををしらないのか!」


「シーリの実?」


「ああ、こいつの名前だよ。この国では割と有名なもんだぞ」


 しらなかった。今までこういったものを食べる機会なんてなかったから。


「まぁ、そんなことはどうでもいい。それでおまえさんここには何をしに来たんだ?」


「武器を買いに来た」


「やっぱりか。正直おれは、おまえさんみたいな子供には武器を持ってほしくない。武器は他者だけでなく自分自身も傷つけるからだ。だからこそ子供は親に守られながら生長していってほしいと思っている。もちろんそれが無理なやつもいる。そう言ったやつは武器を手にしなければ生きていけないことも分かっている。だから一つだけ教えてくれ。おまえさんは武器を持つ覚悟があるのかどうかをな」


 その話を聞いてうなずいた私を見て小さく『そうか』とつぶやく彼はとても悲しそうに見えた。


「分かった。ならまずは予算を教えてくれ!」


「金貨3枚」


「金貨3枚か。本来ならそんな金で俺の武器を買うことはできない。最低でも金貨7枚はほしいところだ。だが今回は金貨5枚にまけてやる。足りない分は少しずつ払ってくれればいい。」


 そう言って彼は一つの短剣を出してきた。


「これを買うなら本来金貨10枚はいるだろう。だが今回は特別金貨5枚でいい。それとそこにある防具も持って行け。そんなにいいものじゃないが最低限の仕事はしてくれるはずだ」


 渡された短剣はずっしりと重かった。これが覚悟の重さなのだろうか。防具の方は急所を守るための軽装だったがないよりもいいだろう。ありがたくもらっておくことにした。


 店を出た後は雑貨屋に行くことにした。あのぼったくりの店とは違うちゃんとした店だ。店では鑑定の魔道具とポーションと呼ばれる傷を癒やす薬を買った。合わせて金貨1枚だったので本当だったら足りないはずだがさっきの鍛冶屋で、ほかにも買うものがあるだろとお金を受け取ってもらえなかったのだ。


 とりあえず鑑定の魔道具を使ってみようと脇道に入り使ってみた。その結果


 HP:22 MP:10 筋力:3 魔力:2 俊敏:6 耐久:3 器用:7 総合:21 レベル:1

 スキル:


 となっていた。他の人のステータスを見たことがないのでこれが高いのかどうかは分からなかったが、自分の力をしれたのはいいことだろう。


 これは他人に使う場合HP、MP、総合そしてレベルのみ見ることができるらしい。


 次の目的地は冒険者ギルドだ。ギルドでは銀貨1枚でスキルの講習をうけることができるらしい。とりあえず短剣と魔法のスキルの講習を受けるつもりだ。


「講習を受けたい」


「はい、講習ですね。武器は何にしましょうか?」


「短剣と魔法」


「短剣と魔法ですね!分かりました。講習は一回銀貨1枚ですので二つで銀貨2枚になります」


「どうぞ」


「ありがとうございます。ただ魔法の方今日講師の方がいらっしゃらないので明日以降になってしまいます。でも短剣の方は今からでも大丈夫ですよ。ディーターさん仕事ですよ!」


 呼ばれたのはがっちりとした体格の男だった。どっちかというと短剣よりも大剣が似合いそうな体格だ。


「どいつに教えればいいんだ?」


「この子ですよ」


「嬢ちゃんか。おれはディーターだ。嬢ちゃんの名前はなんていうんだ?」


「リア」


「そうか、そうか。じゃあ嬢ちゃんは何を習いたいんだ?」


 呼ばないんだったら名前を聞く必要がないと思ったが何も言わずに『短剣』とだけ答えておいた。


「短剣か、まぁ嬢ちゃんにはぴったりだな。よし!早速訓練場に行くか」


 そしてその後、日が暮れるまで短剣の使い方について講習を受けたが、その日のうちにスキルを覚えることはなかった。

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