第22話

「お、俺は……」

「貴方はここで結構ですよ。本当にありがとうございました」




 神官の男は笑みを浮かべながら頭を下げてくる。

 しかし、口元は笑っていても、顔は笑っていない。

 むしろ、一切変わらないその表情は不気味以外の何物でもなかった。




「リックくん、本当にありがとうございました。また何かありましたら、お力を借りてもいいですか?」

「あ、あぁ……。俺は金さえ貰えたらな」

「ふふっ、リックくんもアルクさんと同じようなことを言うのですね。わかりました。そのときはしっかりとお金を用意させていただきますね」




 そういうとリーナは神官と二人、奥の部屋へと入っていってしまった。


 後に残されたリック。

 なんとなく、そのまま帰る気にはならず、奥の部屋での会話を聞き耳を立てることにした。







「――では、大教会で聖女様は襲われた……と?」

「はい、そうです。理由はわかりませんが、突然襲われて、その……。私は騎士の方々が逃がしてくれて、辛うじて生き延びることができたんですよ」

「なるほどなるほど……。それは確かに大変ですね」

「ですので、すぐに大教会を取り戻す手はずを――」

「ですが、その話は一部偽りがありますね」

「……偽りですか?」

「えぇ、聖女様。いえ、『元』聖女様。あなたの味方は既にどこにも居ないのですよ」

「……!? ま、まさか貴方も!?」

「いえいえ、私は別に聖女様には逆らうつもりはありませんよ。でも、聖女を騙る偽者が現れたのなら、また話は違いますよね?」







「ま、まずい。お姉ちゃんが捕まっちゃう……。す、すぐにアルクを呼びに行かないと!」




 聞き耳を立てていたリックは慌てて教会を飛び出すと、その足でアルクを探し始める。

 そして、町の外へと向かう彼の姿を発見する。




「あ、あ、アルク……。ま、待って……」

「なんだ、リックか。もう荷物運びは良いのか?」

「そ、それはいいんだけど、お姉ちゃんが……」

「神官にでも襲われたのか?」

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