第22話
「お、俺は……」
「貴方はここで結構ですよ。本当にありがとうございました」
神官の男は笑みを浮かべながら頭を下げてくる。
しかし、口元は笑っていても、顔は笑っていない。
むしろ、一切変わらないその表情は不気味以外の何物でもなかった。
「リックくん、本当にありがとうございました。また何かありましたら、お力を借りてもいいですか?」
「あ、あぁ……。俺は金さえ貰えたらな」
「ふふっ、リックくんもアルクさんと同じようなことを言うのですね。わかりました。そのときはしっかりとお金を用意させていただきますね」
そういうとリーナは神官と二人、奥の部屋へと入っていってしまった。
後に残されたリック。
なんとなく、そのまま帰る気にはならず、奥の部屋での会話を聞き耳を立てることにした。
◆
「――では、大教会で聖女様は襲われた……と?」
「はい、そうです。理由はわかりませんが、突然襲われて、その……。私は騎士の方々が逃がしてくれて、辛うじて生き延びることができたんですよ」
「なるほどなるほど……。それは確かに大変ですね」
「ですので、すぐに大教会を取り戻す手はずを――」
「ですが、その話は一部偽りがありますね」
「……偽りですか?」
「えぇ、聖女様。いえ、『元』聖女様。あなたの味方は既にどこにも居ないのですよ」
「……!? ま、まさか貴方も!?」
「いえいえ、私は別に聖女様には逆らうつもりはありませんよ。でも、聖女を騙る偽者が現れたのなら、また話は違いますよね?」
◆
「ま、まずい。お姉ちゃんが捕まっちゃう……。す、すぐにアルクを呼びに行かないと!」
聞き耳を立てていたリックは慌てて教会を飛び出すと、その足でアルクを探し始める。
そして、町の外へと向かう彼の姿を発見する。
「あ、あ、アルク……。ま、待って……」
「なんだ、リックか。もう荷物運びは良いのか?」
「そ、それはいいんだけど、お姉ちゃんが……」
「神官にでも襲われたのか?」
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