第21話

「さっきのアルクさんの言葉……。どういうことだったのでしょうか?」




 リーナは疑問に思いながらも教会の中へと入っていく。

 その後ろをリックがついて行く。


 中は照明がついておらず、少し薄暗かった。


 それも仕方ないだろう。


 通りは街灯によって明るく照らし出され、夜とはわからないほど明るかったが、さすがに建物の中までは明るくない。


 照明が消えていてもおかしくない時間帯だから、中に誰もいないかもしれない。


 そんな不安があったけど、リーナは部屋の中へと入っていく。




 すると、薄暗い部屋の中だが、人影が見えていた。




「あっ……」

「――聖女様ですか?」




 相手は自分のことを知っているようだった。

 優しげな声を聞いて、リーナは少しホッとしていた。




「はい、聖女リーナです」

「せ、聖女様だったのか!?」




 隣でリックが驚いていた。

 そういえば、結局最後までアルクさんはリックにそのことを教えようとはしなかった。


 長い間、同じ旅をした仲間なのに……。


 そのことをリーナは少し罪悪感を抱いていた。




「はい……」

「そ、そっか……。そうだったのか……」





 リックは顔を俯け、何か考えているようだった。




「リックくん、ここまで荷物を運んでくれてありがとうございます」

「私からもお礼を言わせていただきます。本当に、本当に聖女様を連れてきてくださってありがとうございます」




 神官と思わしき男はニヤリと微笑みを浮かべていた。

 そして、リックに対して、金貨を数枚、渡してくる。




「これは些細なお礼にございます。どうぞ、お納めください」

「こ、こんなにもらってもいいのか……?」

「はい……。リックくんには大変お世話になりましたから……。本当ならアルクさんにもお礼をしたかったのですけど、仕方ないですね」




 リーナは悲しげな笑みを浮かべる。

 しかし、それをすぐに振り払うと神官の方へ顔を向ける。




「それより、私の話を聞いて貰えますか?」

「はい、こんなところに聖女様がたった一人でやってくる。ただ事ではありませんよね。すぐにお話を聞かせていただきます。奥の部屋へ行きましょう」

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