第19話:旅立ち
翌日になると日が昇る前から宿を出発していた。
既に目を覚ましているリックとは裏腹に、リーナはまだ夢の中だった。
しかし、それを気にすることなく、俺はリーナを担ぐと、そのまま王都へ向けて進んでいた。
そして、日が昇ってきたころに、リーナがゆっくりと目を覚ましていた。
「あれっ? 私……」
「やっと目が覚めたか?」
「あっ、アルクさん。……えっ!?」
ゆっくりと意識が覚醒してきたリーナ。
しかし、自分の状況を理解して驚いていた。
「な、なんで? こ、ここは?」
「はぁ……。ここは外だ」
「み、見たらわかりますよ、それは。それよりどうして私はこんなところにいるのですか!?」
「――王都に行くんだろう?」
「そ、それはそうですけど……」
「なら外で歩いていることは何もおかしくないだろう?」
「歩いていることはおかしくないですけど、私は宿屋で寝ていたんですよ!? それが起きた瞬間に外にいたら驚かないですか!?」
「まあ、たまにはそういうこともあるんじゃないか?」
「あるはずないですよ!?」
「えっ、ないの? 俺もたまに外で寝てるときとかあったけど?」
俺の意見にリックが同意をする。
貧困街で暮らす人間なら一度は経験したことがあるだろう。
身ぐるみをはがされて、いつの間にか外へ捨てられていたことを。
俺自身、まだまだ貧困街へ来たばかりの頃はそんな経験をよくしていた。
俺たちにとってはそういった出来事は日常の範疇だった。
「り、リックくんも!? そ、それにどうして私が荷物のように担がれているのですか!?」
「なかなか起きないからだな」
「あんなこととかそんなこととか色々としたんだけど、どうしても起きなかったもんね」
「な、ナニをしたのですか!?」
「ほ、本当に何をしたのですか!?」
リーナがバタバタと足をバタつかせていた。
「暴れるな。落とすぞ?」
「むしろ、下ろしてください!!」
わがままを言うので、仕方なくリーナを下ろす。
「今の村が最後の休憩だからな。王都に近づけば休まる時間はなくなるはずだ」
「わ、わかっています」
「なら良いが、一応警戒しておけ」
「わ、わかりました」
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