第17話:掃除
金を払うと渋々といった感じに部屋へと案内してくれる。
ただし、部屋の中はボロボロの倉庫といった感じで、荷物が散乱していた。
「おい、この部屋は……もごもご」
余計なことを言い出しそうなリックの口を閉ざす。
「じゃあ、この部屋を好きに使わせてもらうな」
「えぇ、ごゆっくり」
女将は最後まで冷たい視線のまま、俺たちを見ていた。
◆
「さて、それじゃあ、まずはこの部屋の掃除から始めましょうか」
リーナがにっこりと微笑んでいた。
確かにまともに寝る場所がない。
リーナの言うことは最もだった。
しかし、リックにはそれが腑に落ちなかった。
「なんで俺たちが片付けるんだ? 宿の奴らにやらせようぜ!」
「いえ、ここの部屋を貸してくれただけでありがたいですから……。片付けくらい私たちがやりましょう」
「――そうだな。俺たちが片付けをするか。あの女将もこの部屋のものは好きに使って良いと言っていたからな」
俺が意味深にリックへ向けて言うと、彼はハッとしていた。
「なるほど……。そういうことか……。よし、それなら俺が頑張って片付けてやるぞ!」
真っ先にリックがヤル気になり、部屋のものを片付け始める。
そして、落ちていたものはカバンの中へ……。
「って、勝手にものを取ったらダメですよ!?」
リーナが大慌てでリックを止めようとする。
しかし、その手を俺が押さえる。
「いや、あの女将もここの部屋のものは自由に使ってくれと言っていただろう? 俺たちがこうやって持っていっても何も問題ないはずだ」
「そ、そういう意味じゃないと思いますけど……?」
「いや、俺たち貧困街の人間にあぁいう物言いをしたらこういう結果になることはよく知っているはずだからな。だから、俺たちをこんなものがたくさん置いてある場所へ連れてきたのもわざとのはずだ。好きなものを持って行ってくれて良いって。そうじゃないと、普通、宿屋がこんなゴミだらけの部屋へ案内するはず無いだろう?」
「た、確かにそれはそうですけど……」
「つまり、そういうことだ。だから、リーナも気にする必要はない。欲しいものがあったら持っていくといい。これも代金に含まれてるのだからな」
「わ、私は大丈夫です……」
「ほらっ、この手鏡とかはどうだ? 少し割れてるけどまだまだ使えそうだぞ?」
「割れてる鏡は危ないですよ!? と、とにかく私は私でゴミを片付けていきますね。だから二人も勝手にものを取っていくのはほどほどにしてください」
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