第16話:ニモの村

 ようやくニモの村へとたどり着いた。


 そこはラクウェルとそれほど変わりない、寂れた村で土壁でできた建物が並んでいた。

 そして、相変わらず嗅ぎ慣れた臭いが周囲を漂っている。


 最悪の衛生面。


 これだけ見ると人が住んでいるようには思えない。

 しかし、ここにもたくさんの人が住んでいた。


 それでも少し王都に近い分、ラクウェルよりは人の暮らしは良いものかも知れない。

 ここに住んでいる人たちは農家や狩人といった人たちが多かった。


 しっかりとした仕事を持っているだけ、貧困街の人たちよりはマシ。

 生きていけるだけマシ。


 そう考えられていた。


 そして、彼らも貧困街の人間よりはマシ……という意識を持っていた。

 だからこそ、貧困街の人間を軽蔑し、卑下していた。


 そんなこともあり、俺たちが村に入った瞬間に、舌打ちを聞くこととなった。




「ちょっと俺、反論してくる!」

「――やめておけ。時間の無駄だ」




 リックが憤慨して、突っ込んでいこうとするので、それを止める。

 こんなところで余計な時間を使いたくない。




「どうしてここまで嫌われているのでしょうか?」

「まぁ、奴らからしたら俺たちは決まった仕事もない放浪者だからな。境遇は似たようなものでも、奴らなりのプライドがあるわけだ」

「俺たちだって仕事をしてるぞ?」

「――お前はこそ泥だけどな」

「こそ泥も立派な仕事だ」




 リックは自信たっぷりに答えていたが、その様子に思わずため息が出てしまう。

 リーナも苦笑しか浮かばなかったようだ。




「今はリックくんも荷物運びって言う立派な仕事がありますもんね」

「――まぁ、今回だけだけどな」

「俺、これからも荷物運びをしようかな? それでメシ食えるならいいよな?」

「客が取れるならそれでもいいんじゃないか?」




  そんな話をしながらあぜ道を進み、宿屋へと向かう。







 そして、たどり着いた宿屋でも、当然ながら良い対応はされなかった。




「はぁ……、あんたたちが泊まる? 金は持ってるんだろうね?」

「――当たり前だろ?」




 明らかに険悪な対応をされる。

 だから俺はにらみ返していた。

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