第16話:ニモの村
ようやくニモの村へとたどり着いた。
そこはラクウェルとそれほど変わりない、寂れた村で土壁でできた建物が並んでいた。
そして、相変わらず嗅ぎ慣れた臭いが周囲を漂っている。
最悪の衛生面。
これだけ見ると人が住んでいるようには思えない。
しかし、ここにもたくさんの人が住んでいた。
それでも少し王都に近い分、ラクウェルよりは人の暮らしは良いものかも知れない。
ここに住んでいる人たちは農家や狩人といった人たちが多かった。
しっかりとした仕事を持っているだけ、貧困街の人たちよりはマシ。
生きていけるだけマシ。
そう考えられていた。
そして、彼らも貧困街の人間よりはマシ……という意識を持っていた。
だからこそ、貧困街の人間を軽蔑し、卑下していた。
そんなこともあり、俺たちが村に入った瞬間に、舌打ちを聞くこととなった。
「ちょっと俺、反論してくる!」
「――やめておけ。時間の無駄だ」
リックが憤慨して、突っ込んでいこうとするので、それを止める。
こんなところで余計な時間を使いたくない。
「どうしてここまで嫌われているのでしょうか?」
「まぁ、奴らからしたら俺たちは決まった仕事もない放浪者だからな。境遇は似たようなものでも、奴らなりのプライドがあるわけだ」
「俺たちだって仕事をしてるぞ?」
「――お前はこそ泥だけどな」
「こそ泥も立派な仕事だ」
リックは自信たっぷりに答えていたが、その様子に思わずため息が出てしまう。
リーナも苦笑しか浮かばなかったようだ。
「今はリックくんも荷物運びって言う立派な仕事がありますもんね」
「――まぁ、今回だけだけどな」
「俺、これからも荷物運びをしようかな? それでメシ食えるならいいよな?」
「客が取れるならそれでもいいんじゃないか?」
そんな話をしながらあぜ道を進み、宿屋へと向かう。
◆
そして、たどり着いた宿屋でも、当然ながら良い対応はされなかった。
「はぁ……、あんたたちが泊まる? 金は持ってるんだろうね?」
「――当たり前だろ?」
明らかに険悪な対応をされる。
だから俺はにらみ返していた。
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