黒衣の聖騎士〜邪神の加護を受けし少年、聖女の騎士となる〜

第15話：村

　リックが加わってから、旅は賑やかなものになっていた。

「なぁなぁ、どうしてアルクはそんなに強いんだ？」

「馴れ馴れしいな。どうでもいいだろう？」

「俺もあんたみたいに強くなって、たくさん金を稼げるようになりたいんだ」

「――それならこんなところでこそ泥のようなマネをしている暇があったら、体を鍛えると良い」

「そういって俺を追い出すつもりだろ！　あっ、もしかして、アルクはリーナ姉ちゃんを良いことしようとしてたんだろ！」

「良いこと……ですか？」

「あぁ、そんなところだ。だからお前は邪魔だ！」

「そんなことを言わないで、良いことならみんなでした方が良いですよ」

「えっ、姉ちゃんはみんなでするほうがいいのか？」

　リックが驚きの表情を浮かべる。

　どうやら、リーナは何の話をしているか理解していないようだった。

　まぁ、わざわざ訂正する理由もないだろう。

「それより、この先に小さな村がある。今日はそこで休んでいくか」

「いいのですか？　急ぐ旅ですよね？」

「これ以上無理をしたら余計進行速度が遅くなる。とりあえず１日ゆっくり体を休めると良い」

「アルクさん……、ありがとうございます」

「ここの近くの村……というと、ニモの村か！」

「そんな感じの名前だったか？　まぁ、宿くらいあるだろう？」

「あまり評判の良いところじゃなかった気がするけど……」

「えっと、本当に大丈夫なのですか？」

　リーナがリックの言葉を聞いて不安そうな表情を浮かべていた。

「どこでも大して変わらんだろ。むしろ露骨に悪意を出してくる方がわかりやすくていい」

「そういうものなのですね」

「まぁ、リーナはすぐに騙されるだろうから、俺のそばを離れるなよ」

　俺の言葉を聞いて、リックはハッとなっていた。

「お兄ちゃんたちがニモの村にいる間、手を握ってたらいいんじゃないかな？」

「えっ！？」

「――なるほどな。それは名案だ」

「えっ、えっ？」

　困惑するリーナをよそに俺はリックの言葉に感心していた。

「あぅあぅ……。あ、アルクさんはそれでいいのですか？」

「何か問題でもあるのか？　どこか暴走する子供を抑えるのは親の役目だ」

「私、子供扱いだったのですね……」

「独り立ちできて初めて大人だからな」