第14話:リック

「――本当に俺も連れて行ってくれるのか?」




 少年は不安そうに聞き返してくる。

 すると、リーナはにっこり微笑みながら言っていた。





「はい、もちろんですよ。ねっ、アルクさん」

「――」

「もう、アルクさん!?」

「――雇い主はお前だ。俺はそれに従うまでだ」

「はい、わかりました。ですから、これは私の意思です。これからもよろしくお願いしますね。……えっと」

「あ、あぁ。よろしく。俺はリック。その……、貧困街で他人が落としたものを拾ったり……」

「そのまま自分のポケットに金を入れるんだな」

「困ってる人を助けたり……」

「その報酬として膨大な額の金を請求するんだな」

「そんなことをしていた。よろしくな」

「まぁ、簡単に言うと小悪党だな」

「もう、アルクさん!! と、とにかく、よろしくおねがいします、リックくん」

「まぁ、足を引っ張るなよ、リック」

「あ、あぁ……。俺にできることなら任せてくれ……」

「――荷物持ちくらいか?」

「うぐっ。た、たしかにあんたほど強い奴が護衛してるなら、俺にできるのはそのくらいだけど……」

「あれっ、二人はお知り合いなのですか?」





 リーナが不思議そうに聞いてくる。




「――知らん」

「俺が一方的に知ってるだけだな。ラクウェルで一二を争う実力者なんだから」

「アルクさんって本当にすごい人だったのですね」





 リーナが感心してくる。

 ただ、俺には興味がないことだった。





「それでこれからどこへ行かれるのですか?」

「それは王都の教か――」




 早速口に出そうとしていたリーナ。

 その口を押さえる。




「はぁ……。王都にあるこいつの実家まで護衛するところだ」





 ため息混じりに嘘を答える。

 いや、聖女であることを考えると教会は家とも言えるので、あながち全て嘘とはいえないか。


 すると、俺の意図が伝わったのか、リーナは何度も頷いて同意していた。





「そうか……。王都は行ったことないけど、このちかくは俺の庭みたいなものだからな。なんだったら道案内をしても――」

「それじゃあお前はリーナの荷物を持ってくれ。たいした量もないからお前でも持てるだろう?」

「お願いしますね」




 リーナがリックに荷物を渡していた。

 まぁ、追ってのことを考えると下手に道案内を任せるわけにはいかないからな。


 最短距離よりバレにくい道の方が大切だから。

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