第13話:荷物持ち

「な、何をするのですか!?」

「やめておけ。憐れみで渡すな」

「ど、どうしてですか? 助け合いは大切ですよ」

「この金はお前のものだからな。憐れみで渡すとどうなるか……。乞食たちが集まってきて、良い結果にはならないぞ?」

「で、でも、それだとこの子は……」

「自分で稼げないものは命を落とすだけだな」

「あっ……、そういうことですね」




 リーナはなにか察したようで、ポンッと自分の手を叩いていた。

 そして、少年の前で屈んでいた。




「あの、このお金で私の荷物持ちをしてくれませんか?」

「お、おいっ!!」

「い、いいのか? 俺は盗みを働こうとして……」

「食べていけないんですよね? それなら私と一緒に来てください。ご飯くらいは食べられますよ」

「――本当に良いのか?」




 少年は俺の方を向いて聞いてくる。

 明らかに俺が反対していたから当然と言えば当然だが。

 しかし、俺は腕を組み、言葉を漏らす。




「――雇うのはリーナだ。俺じゃない」

「でも、あんたは反対なんだろう?」

「――あぁ、人を信じて良いことはない」

「そ、そんなことないですよ!」

「それじゃあ、お前は良いことがあったのか? 信じた結果、裏切られたんだろう?」

「あぅ……。で、でも、それは私がせ――」




 余計なことを言いそうだったので、俺はリーナの口を閉ざしていた。

 そして、少年に聞こえないように小声で告げる。





「おい、一応聖女であると言うことは黙っていろ」

「どうしてですか? 一緒に行動するなら不便じゃないですか?」

「いや、お前が聖女と呼ばさないように名前を教えてきたんだろう? ならこいつに対してもそれを同じ扱いをしたら良い」

「別に聖女ということがバレても何も問題ないですよね?」

「大ありだ! それで態度が変わるやつもいるんだぞ!」

「で、でも、私が雇えば――」

「雇い主すら裏切るやつが何人もいるんだぞ?」

「わ、わかりました。でも、雇うのはいいのですよね?」

「――勝手にしろ。そこに俺は干渉しない」




 まぁ、リーナに手を出そうものなら殺るだけだけどな。

 しかし、それを話す必要もないだろう。




「わかりました。それじゃあ、一緒に来てもらいますね」

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