第10話:休憩

「アルクさん……」

「――なんだ?」

「すこし歩くの早くないですか?」

「――いや、このくらい普通だ……」




 必死に追いかけてくるリーナに対して、俺は休むことなく進んでいく。

 普通の道ならリーナも何も困ることなく追いかけてくるのだろうけど、ここはあまり人の通らない獣道。


 さすがに普段歩き慣れてないような、道にリーナは歩きずらそうにしていた。





「ど、どうしてこんな道を進んでいくのですか? もっと普通の道を通っても――」

「――お前は狙われているのだろう? それなら普通の道を通ってどうする? あっという間に殺されるぞ?」

「うぅ……。そ、それもそうでしたね。わ、わかりました。道については何も言いません。でも、流石に歩くスピードは落として貰えませんか?」

「――そんなことを言ったら追っ手に追いつかれるぞ!」

「で、でも、もう私、歩くのがやっとで……」




 確かにリーナは既に虫の息だった。

 これ以上の速度で歩くのは厳しいかも知れない。




「はぁ……、仕方ない。ここら辺で休憩にするか」




 まだ歩き始めてすぐなのに、これだと先が思いやられそうだ。




「あ、ありがとうございます……」




 すぐ側にあった岩に腰掛けるリーナ。




「王都まであとどのくらいかかりそうですか? 結構歩きましたよね?」

「全然歩いてないぞ?」

「えっ?」

「そもそもお前、疲れるの早すぎじゃないか? 隣国から逃げてきた元気はどこへやった?」

「あのときは必死に逃げてたからその……。全身が痛くて……」




 慣れないことをした反動で、リーナは筋肉痛になっていたようだ。


 それで変わった歩き方をしていたのだろう。




「それならそうと早く……」





 言いかけた言葉を止め、俺は近くの木陰に視線を向ける。

 そこには先程までなかった気配があった。


 動物とかなら気配を隠すような真似は、人相手にしないだろう。




「――誰だ!?」




 俺が声を上げるとビクッと驚いていた。リーナが。




「わ、私はリーナですよ?」

「お前じゃない! そこに隠れているやつだ!」

「隠れて……? 誰かいるのですか?」

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