第7話:追われた理由
着替えを終えた聖女。
やはり、服装だけでだいぶ印象が変わってくる。
聖女らしさはすっかり消えており、ただの少女に見える。
これならば、万が一にも追っ手に気づかれることもないだろう。
「うぅぅ……、辱められました……」
「それはよかったな」
「よくありませんよ……」
「無事に王都の教会へ行きたいんだろう? なら言うことを聞いておけ」
「そ、それはわかっていますけど……。でも……、でも……」
「それより、明日には出発をする。準備をしておけ」
「あっ、はい。わかりました」
騒がしかった聖女だが、教会のことを言うと大人しくなっていた。
「アルクさん。アルクさんはどうして私が襲われたのだと思いますか?」
「――知らん。興味もないな」
「そう……ですよね。おそらく、私が神から神託を得たからなんですよ」
聖女は誰かに話したかったのか、ポツポツと話してくる。
「神が複数いることはご存じですよね? いえ、おそらくアルクさんは神の存在も信じていないかも知れないですけど」
「――」
聖女の問いかけに無言で返す。
すると、聖女はその意図を与して、更に話を続けていく。
「今回、神託を受けたのは神ジャルド。これを聞いたら何かわかりませんか?」
その名前は俺にとって、因縁深いものだった。
そう、ジャルドとは、邪神と呼ばれている神で、その昔に他の神々と対立して世界支配を目論んでいたようだ。
使う力も闇関連のものだったようで、瞬く間に邪神として、伝えられ、他の神々によって倒されたと聞く。
「――邪神の信託なんて受けたら、追われて当然だ」
「本当にそう思いますか?」
「――」
聖女は俺の加護のことに気づいている?
いや、そんなことはない。
加護はまず人目に触れないように服で隠しているし、ここだけは特に見られないように警戒している。
「いえ、それがおそらく普通の感覚なんですよね。私が特殊なんだと思います。それで信託のことを話したら『偽聖女だ!』って言われてその……。あとは見てもらった通りです……」
「まぁ、そうなるだろうな」
地位と体裁を気にする世の中だか処分されてもおかしくないだろう。
ただ、それにしては行動が早すぎる。
前もって準備していたのだろう。
たまたまきっかけとして邪神の神託があったのだろう。
しかし、そのことをわざわざ聖女に話す理由はない。
「で、でも、私はいつも通り神託を受けただけなんですよ!?」
「それがダメだったんじゃないか? 邪神はかなり嫌われているようだからな」
「うぅ……。でも、きっと理由を伝えたらわかってくれるはずなんですよ」
「――人を信じて良いことなんて無いぞ?」
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