第3話 私はもう詰んでいる

あれから二年の月日が経ち五歳になった。ここに来て僕の習い事が増えた。


公爵家の時期当主である僕は礼儀作法、剣術、馬術、魔法とそれなりに忙しい日々を送っている。


周りの変化は姉は学院に行っており、妹が産まれた。


二歳の妹はもう本当に可愛い。天使なのだが、何かジーっと見られることがあり僕も2歳児に何か聞くわけにもいかず五歳児の子供と二歳児が見つめ合うと言うなかなかな光景がよく出来上がっている。


別に嫌われているわけでは無いと思うのだがな。


そんなことがある中で一番驚きだったのは、僕が歴史を学ばずとも知っていたことと、三歳の時から読もうとしていたものは、古代魔法に関するものだったことを知ったことだ。普通の本は日本語だった。


古語が読めるのはこの世界の常識から考えて異常だが、僕はそれどころでは無い。


歴史を知っていたのはロイドとしての僕ではなく、日本として生きた僕なのだ。僕が住んでた地球は魔術などの超常現象などはなく、そのようなものが存在したならば二次元だけだ。


だがあまりにも知りすぎているし、それに時折り感じるデジャヴ。なんらかの原因で僕がゲームを元にした世界にいることが確定してしまったということだ。考えるだけで吐き気がする。


前世では神を知覚できなかったがそれがそんなに幸せだなんて思わなかった。






さて、今僕がいるであろう世界のモデルとなっているゲームはブレイブアブソリューション。


ブレアブと呼ばれていたこのゲームは異世界RPG とギャルゲーが合わさったようなゲームだ。それでもギャルゲー7、ストーリー3ぐらいであるためイベントや行事はギャルゲーのようなものだ。


僕は主人公ではなく、公爵なので必要なのはストーリーの方だ。今の段階では邪教徒しか暴れていないと思うが、そいつらのせいで魔王が復活する。


それを主人公とハーレム達で倒すというありふれた物語だ。


別にそれほど人気だったというわけでもなく、僕もただ暇だったから最後までやっただけでガチ勢ほどに詳しいわけでも無いけど、記憶力は良かったのでそれなりに覚えている。


そして、そのヒロインの一人が僕のメイドな訳だが、ヒロインが何も無い所にいるわけがない端的にいえば設定が必要なのだ。


大義名分やフラグを立てるための根幹。これがなければ何も進まず、ただの女の子であり話が進まない。

ではクローフィーには何が起きるのか?


ロイドに売られるのだ。ギャルゲー、エロゲーそれを元にした小説などを読んでる人には分かると思うが、原作と呼ばれるものが始まる前にヒロインと一緒にいる奴などはかませ犬と呼ばれるような奴であり、大抵碌でもない事をしている奴らである。


自分は邪教徒と繋がり、金と召喚を手伝うのだが乗っ取られてそこで死ぬのだ。


その未来に対して思うものがない訳でもない。僕は死ぬのは嫌だが、端的に言って僕は詰んでいるのだ。


勿論、神を見たわけではなく力を感じただけなのだがそれを無視して神を怒らせて弄ばれる可能性があるような原作改編などをするほど僕は勇敢でもなければ、バレないであろうとタカを括るほどのオプチニストではない。


もし本当に原作どうりに進むのであればだ。自分の身の振り方を真剣に考える必要がある。


それから少し考えているとクローフィーに声をかけられた。





「ロイド様。剣術の稽古のお時間です。」


「わかった。ロッゾは訓練場?」


「はい。そこでお待ちになっておられます。」


騎士達がいる訓練場に行くと、茶髪に茶髭を生やし、初老に差し掛かりっているのにもかかわらずそれを感じさせない動きで剣を振っている。

ロッゾはオスキュリテ家騎士団中隊長だ。


僕に気づくと素振りをやめて近づいてきた。


「ロイド様。早速剣術の稽古を始めますぞ。」


「ああ。よろしく頼むよ」


「まずは、素振りをと型の確認です。」


まだ子供だから鉄芯のない木剣を教えられたように振っていく。


所々に指導してもらいながら数時間振り続けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ギャルゲー転生したって現実は厳しい 最高級ウィンナー @saikoukyuubanana

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ