1-11. 水精の滝壺

 ※今回、最後の方にちょっと下世話というか、温泉ネタというか、水着ネタがあります。苦手な方は8割くらい読んだ所で「ここから先はちょっと酷いことになった」という文が出てくるので、そこから先は読み飛ばして次話に進んでください。


【クスク村周辺地図】

 ①②③

 ④⑤⑥

 ⑦⑧⑨


 ①……???

 ②……???

 ③……???

 ④……『水精の滝壺』 ←〈現在地〉

 ⑤……『大猪の森』

 ⑥……???(広大な雪原)

 ⑦……『長老小屋』

 ⑧……『クスク村』

 ⑨……『雪神の祠』


 ────────────────────


 眠りに就いた冒険者たちはまず、〔冒険者レベル+生命力ボーナス〕でぐっすり眠れたかどうかを判定した。目標値がそこまで高くなかった事もあり、結果は全員成功。朝まで6時間しっかりと睡眠をとることができた。


 翌朝、朝日と共に目を覚ました冒険者達は、手持ちの保存食とリューラが持ってきていたイノシシの肉、ステラがその辺で撃ち落とした鳥、アニウが近くの林から採取してきた木の実や野草等を使って簡単なスープを作り、空腹を満たした。


 サー:「ふぅははは、肉がたっぷりで元気百倍である!」力コブをもりっとしてみせます。

 ステラ:「……ん。今日も、頑張る」軽く銃のメンテナンスをしながら頷く。元気十分。

 ツバキ:「この野草や木の実はアニウが採ってきたのか。それもカニク氏から教わったのか?」

 GM:アニウは「そうです」と答えつつスープをグイグイ飲んでいる。「おっとぅはさばい…ばる?が得意だったので、色々教えてくれました」

 リューラ:「ええ、ワイルドなサバイバル料理もたまには悪くないわね。さてと……」早めに食べ終えてから腰にロープを結んで滝の縁に立ち、下を覗き込む。「おおー……すごい光景ね、これは」

 GM:改めて、凍った滝の様子をきちんと説明しようか。崖のヘリから急峻なアーチを描いて、厚さ1m以上の分厚い氷のカーテンが20mほど下の滝壺まで垂れ下がっているように見える。滝壺の表面にも同じくらい分厚い氷が張っているらしく、白い鏡のように日光を反射して輝いている。

 サー:「この程度の高さであれば、私なら死なないだろうな」多分、落下ダメージはHPで全部受けられますね。

 ※落下ダメージ:キャラクターや物体が高い所から落ちた時に受けるHPダメージのこと。基本的に高さと比例して増大し、〔受け身判定〕によって軽減できる。

 GM:そのまま滝壺かち割って氷点下の水中にダイブする事になるけど。

 サー:あっ、それは金属鎧だとすぐ死んじゃいそうですね……やめとこ。

 リューラ:「やめておいた方が良いんじゃないかしら、ヴェリース卿。せっかく道具があるのだし、堅実に降りて行くべきでは?」

 サー:「それもそうであるな。今のは冗談である、ふはは!」高笑い。

 GM:では、アニウが元気な声で「うちに任せてください!おっとぅがここを昇り降りするのは何度か見てるんで、安全な場所は分かります!」と言って、胸を張った。

 サー:「よし。では降りる順番と、具体的な降り方を決めるのである」


 冒険者達は相談の末、最初に比較的身軽なアニウとステラ、次にツバキ、リューラと来て、最後にサーが降りるという順番を決定した。滝壺への降り方は、崖上の手ごろな岩に命綱としたロープを括り付け、それを全員の腰に固定して少しずつ繰り出しながら、アニウの後について降りるというものだ。最後の一人は何かあった時に上から引っ張り上げてくれる者がいない為リスクが大きいが、そこはいざという時にロープを切って落下しても耐えられるサーが請け負った。


 GM:「たしか、こっちの出っ張りに楔が打ってあって……あ!冒険者さま、ありました!」……アニウはこんな感じで、君たちを安全な足場へ誘導しながら器用に降りていく。作戦バッチリなので、身軽なステラとツバキは判定せずとも滝壺へ降りる事ができていいよ。

 ステラ:よっしゃ!ではアニウの後に続いてそろそろと滝壺の氷に靴を乗せる。ハーヴェスで雪山仕様の靴を履いてきたから、スパイクが付いてて滑りにくいのに、それでもちょっとふらふらよたよたしてる。「あわわわ、つるつるする……!」

 ツバキ:上に声をかけよう。「俺たちは無事に降りたぞ。次はリューラだな、慎重に来い」

 リューラ:「はーい。分かってるわよ、気を付けるって」返事をしてから降り始める。

 GM:ではリューラは金属鎧を着てるし嵩張るグレイブも背負ってるから、〔登攀判定〕をどうぞ。

 ※〔登攀判定〕:判定の一つ。高所を上り下りする時に使うが、失敗すると登り降りしようとした距離の半分の所で手や足を滑らせて落ちてしまう。特に高所から降りる場合は命綱は必須だ。

 リューラ:(ころころ)……よし、成功!

 GM:では問題なく降りられた。

 リューラ:「ふぅ。ま、これでも子供の頃は屋敷の高い塀をよじ登って越えていたのよね、私」ドヤ顔。さぁ、サーも降りてこーい!

 サー:よ、よーし。行きます。

 GM:サーもごつい金属鎧だし、でっかい盾を持ってるから〔登攀判定〕どうぞ。

 サー:お願いしますダイス様……(コロコロ)あっ。1ゾロ……。

 ステラ:へ、変転を使うんだ‼︎


 サーは【剣の加護/運命変転】を使用。辛うじて足を踏み外さずに済んだものの、固定が甘かったメイスを滝壺の氷の上に落としてしまう。


 GM:『ビシッ』という音がしてメイスが滝壺に張った氷に突き刺さる。幸いにも氷が割れる事はなかったが、下にいた三人とアニウは相当肝が冷えたかもしれない。

 サー:そーっと滝壺に降り立って、メイスを回収しながら仲間に謝りましょう。「す、済まなかったのである……」

 ツバキ:「大事には至らなかったから気にするな」

 ステラ:「そ、そうだよ。先に進もう……?」

 リューラ:「はーい。このまま東に進んで森に入りましょうか」

 GM:おっと、その前にイベントがある。

 リューラ:おや?

 GM:サー、君は滝壺の真ん中に突き刺さった自分のメイスを回収するべく、そこに近付いた。すると、氷の下に何か物体が閉じ込められているのが見える。なんとなーく、人型っぽく見える気もするね。

 サー:「む、この氷の下にあるのは……」まさかとは思うが、カニクさんでしょうか。

 ステラ:サーの声を聞きつけて近くまで行く。「本当だ、何か見える……」

 GM:この氷に閉じ込められた謎物体だけど、氷の上で焚き火を5〜6時間ほどやれば、熱で氷を溶かして到達する事ができそうだ。それ以外の方法、例えばこのままサーのメイスでガンガン氷を割っていくとかのやり方だと、中に閉じ込められてる物体ごと傷つけてしまう可能性が高そうだね。

 ツバキ:つまり、しばらくここに留まれって事か……どうする?

 リューラ:GM、このエリアって他に『探索』できそうな場所ある?

 GM:あるよ〜、凍った滝の裏側とかね……。

 リューラ:よし、じゃあ私は留まる事に賛成!多分滝壺の真ん中で凍ってるやつも、ほんとは『探索』しないと見つからないのをGMが誘導したように思えるし。

 GM:ソ、ソンナコトナイヨー。偶然ヨー。

 ステラ:急に片言になるな(笑い)こっちも別に留まってOK。大事な情報かもしれないしね。

 サー:私も賛成です。

 ツバキ:よし、じゃあここも『探索』だな。

 サー:「我々は少しこの辺りを調べる。氷を溶かす焚き火の番はアニウに任せるが、よいか?」

 GM:「任せてください、サーさま!」とアニウは拳を握ってみせる。

 サー:「うむ、では頼むのである。……それと、そろそろ私のことは『サー』のみで呼んでくれて構わない。それに敬語も不要である」

 GM:「で、でも……」アニウは逡巡しているようで、他の三人の顔も見てくる。

 ステラ:「ん……いい。私の事もステラで。アニウの方が年上だし、それに……と、友達に、なりたいから……」最後の方はちょっと尻切れとんぼになる。

 ツバキ:「俺も呼び捨てでいい。同じ目的の為に協力する仲間だ、対等な関係で行こう、アニウ」

 リューラ:「んー、なら私もリューラでいいわよ!一人だけ様付けされるのは、何だかむず痒いし」

 GM:アニウは君たちの言葉を聞いて、しばらく考えていたようだったが、やがておずおずとこう言った。「さ、サー……ステラ、ツバキ、それにリューラも……よ、よろしくね?……これでいいの?」

 全員:「「「「よろしく!」」」」


 かくして、滝壺周辺の探索が始まった。滝の裏側には案の定薄暗い洞穴が広がっており、冒険者達は時折焚き火を見守るアニウの元へ戻って休憩しつつ、洞穴の調査を進めていった。


 GM:……よし、これでこの洞穴は全部マッピングできたよ。隠された宝物とかも、もう残ってなさそうだ。

 サー:「思った以上に生活感ある場所であったな。毛布に寝床に、宝石と生活用品の入った宝箱……誰かが住んでいたのであろうか」

 ツバキ:「あるいは、今も住んでいるのかもな」数日以内に誰かが出入りした形跡はないらしいが。

 GM:ないですね。でもそれ以上前の事はちょっと分からない。

 ステラ:「それに、これ……魚の骨で作った、妖精の人形?」掌サイズのそれを摘んでぷらぷらさせてる。

 リューラ:「何なのかしらね、ソレ。ちょっと立派な宝箱に入ってたけど」

 GM:ではこの辺りで、じわじわ溶けていた氷が遂に閉じ込められてた物体に到達したようだ。アニウが「み、皆!こっち来て!」と呼んでいる。

 サー:「おお、溶けたのであるか!」見に行きます。

 ツバキ:まぁ、全員で観に行こう。一応武器はいつでも抜けるようにしておく。


 冒険者達とアニウが見守る中、氷の下から現れたのは髪の長い女性の姿をした、一体の妖精だった。何とあの状態でも生きていたらしく、手足を氷から引っこ抜いて脱出した妖精は、喜びの叫び声を撒き散らしながら彼らの周囲を駆け回った。すぐに〔魔物知識判定〕が行われ、この妖精は『温泉の精霊』こと、下級妖精ヴァンニクであると判明した。ヴァンニクは水・氷属性に完全な耐性を持つため、あの状況下でも死なずにいたようだ。


 GM:「イィィヤッホォォーーゥ!わたしは自由だァァァーー‼︎」ヴァンニクは腕をぐるぐる回しながら君たちの周りをぐるぐるぐるぐる回っている。「ありがとう、ホントありがとう知らない人達!あのまま春までずっと閉じ込められっぱなしかと思って、しょーじき絶望してたのよ!」

 ステラ:「う、うるさい……」あんまりこういうノリに慣れていないので、両耳を手で塞いで顔をしかめてる。

 GM:ちなみに、このエリアの正しい名前は『水精の滝壺』と言うよ。

 リューラ:なるほど、ヴァンニクがいるからか……。

 GM:「ありがと、ありがと、ありがと、ありがと、おまけにもひとつありがと‼︎」ヴァンニクは君たちとアニウの全員の手を勝手に握って振り回す。「わたしはヴァンニク、妖精よ!助けてくれたお礼に、私にできる範囲で何かお返しをあげるわ!例えばこの滝壺をあったか〜い温泉にするとかね‼︎」

 サー:「それも良いが、まずどうしてあのような状態になっていたのか説明できるか?」

 ツバキ:「洞窟の寝具などの持ち主についても教えてくれ」

 GM:「うーんと、そうね……」ヴァンニクは一旦停止して腕組みをする。それから「まずは二番目の質問から!わたしの洞窟にいろいろな物を持ち込んだのは、あっちの方から来た人間よ!」と、ちょうどクスク村の方角を指差す。

 ステラ:ドワーフじゃなくて人間って言ってるし、カニクっぽいね。「その人間、でっかい筒を持ってなかった……?」

 GM:「ええ、持ってた!それで獣をずどーん、ばぎゅーんって仕留めるって言ってたわ、たしか。それで、私も時々その手伝いをしてたの‼️」


 ヴァンニクが語った(妖精特有の、時系列がめちゃくちゃな)話をまとめると、どうやらカニクは狩りをした帰りに時折、この滝壺に住むヴァンニクの元を尋ねていたらしい。滝壺の水を温泉に変えて貰い、狩りの最中に負った傷や疲労を癒したり、装備の都合で崖上に運ぶのが大変な大きな獲物をヴァンニクの妖精魔法で凍らせ、一時的に洞窟に保管したりしていたようだ。


 GM:「その対価として、あの人間は色んな綺麗な物を持ってきてくれるわ。きらきらした石とか、木で出来た鳥の羽みたいなものとか!中でも一番のお気に入りは、魚の骨で作ったわたし達ヴァンニクの人形ね!」ヴァンニクは誇らしげにそう言った。

 リューラ:ああ、あの宝箱の中身と人形はそういう……。

 ステラ:宝石以外はガラクタだと思ってたけど、ヴァンニクにとっては宝物なんだ。

 GM:うん。妖精の思考や価値観は人族とは大きく異なるからね。アニウは魚の骨人形を手にとって「これをおっとぅが……確かに、手先すごく器用だったしなぁ」としげしげ眺めている。ちょっと感傷に浸ってるのか、目元が赤い。

 ステラ:よしよし、と背中をさすってあげよう。

 リューラ:絵面が尊い……。

 サー:「ふむ……なるほど、よく分かった。それで、どうして水と氷を司る妖精のお前が氷の中に閉じ込められていたのだ?」1つ目の質問に戻る!

 GM:「ええそうね、あれはいつだったかしら……まぁいつでもいいわね!ある日、私ってばうっかりあの人間に話しちゃったのよ、『スカディ様の秘密』を」両手を頬に当てて、ムンクの叫びみたいなポーズを取る。

 ツバキ:「ほう……」

 ステラ:「スカディ様の、秘密……?」

 GM:「ええ、スカディ様が『いいよ』って言うまで絶対誰にも話しちゃいけなかったんだけど、ちょうどその日は人間が美味しいお酒を持ってきてて、私もたくさん飲んじゃったから……つい、うっかり……」

 ツバキ:「それは災難だったな。一体どんな秘密を喋ってしまったら、あんな氷に閉じ込められるんだ?」

 GM:「それはもう、スカディ様が……」と言いかけた所で、ヴァンニクはハッと口元を押さえる。「だ、ダメよ!話したらまたスカディ様の遣いに凍らされちゃうもの!」

 ツバキ:誘導尋問には引っかからないか。

 GM:「とにかく、それからスカディ様の遣いのフラウ達がやって来て、『森のシルフからお前がスカディ様の秘密を人間に漏らしたと聞いたぞ〜』って言って、温泉に入ってた私を……丸ごと凍らせちゃったのよ!それはもう、カチンコチンにね‼︎」

 サー:腕組みをして唸ります。「うーむ、なるほど……」

 リューラ:「カニクが失踪した原因は、この『スカディの秘密』を知ったせいで間違いなさそうね」……もしかして口封じされたのかな?

 ステラ:勘だけど、そんなシンプルな話とは思えないんだよね。何とかしてこのヴァンニクから『スカディの秘密』を聞き出せないかな……?


 ここからがちょっと酷い事になった。既にセッション開始から数時間が経過しており、恐らく皆疲れていたのだろうと思う。


 サー:……実はここに、ハーヴェスから持ってきたちょっとお値段の張る酒がありまぁす!アイゼン村長やラッセルさんと飲むつもりで買ったんだけど、すっかり忘れてたやつ。

 ツバキ:でかした!つまみはリューラがもってるイノシシ肉でどうだ?

 GM:そうだなぁ……ではヴァンニクは「あら、美味しそうなお酒にお肉!もしかしてそれ、わたしにくれるのかしら⁉︎」とぴょんぴょん跳ねてる。

 ステラ:ちょろい。

 サー:「その通り、いわば『解凍祝い』である。そのままちょいと滝壺を温泉にしてくれれば、熱燗で行けると思うが……いかがかな?」

 GM:「ヒュー!それって最高ね!助けてくれた上にお祝いまでしてくれるなんて!いいわ、折角だしあなた達も温泉に浸かって全身の汚れを落としていきなさいな!」

 リューラ:ラッキー!ハーヴェスを出てから多分ろくに水浴びもできてなかったし、ちょうどいいや。

 サー:あの。混浴になっちゃうのですが。良いのでしょうか。

 ステラ:サーとツバキなら……い、いいよ?……きゃるん。

 ツバキ:10年早い。たしか、前のシナリオで全員が《水着》を買っていただろ、それに着替えなさい。

 ステラ:ちぇ、はーい。着替えます。

 リューラ:なぁ、私の水着、確かビキニアーマーなんだけど……。

 サー:何、私もブーメランパンツであるぞ。あ、流石に人目も無いので鎧は脱いで浸かります。錆びちゃうし。

 GM:アニウが君たちを寂しそうに見ている。「うちは何も持ってないから、やめとくね……」

 ステラ:あーっ。待って、今探すから。(キャラシを確認し始める)

 サー:……実はここに、我が従者が持たせてくれたステラの予備の水着がありまぁす‼︎

 ステラ:何でサーが持ってるんだよ!防寒着とは訳が違うぞ⁉︎

 GM:ところが本当に持っているんだな、これが。

 サー:しかも《競泳水着》ですね、これは……。

 ツバキ:「アニウ、選べ。普通の水着か、この鋭角な競泳水着か……お前が選ばなかった方をステラが着る」

 ステラ:「アニウ、選んで……!」潤んだ瞳でアニウを見つめる。ハイレグは嫌だ、ハイレグは嫌だ!

 GM:ひでぇ二択をNPCに押し付けるな、こら‼︎


 かくして、突如滝壺で始まった温泉飲み会。水着に着替えた冒険者達とアニウは、これまでの旅の疲れと汚れを温かな湯で綺麗に落とし、ツヤツヤの卵肌へと生まれ変わった。ちなみに《競泳水着》はステラが着た。


 ステラ:ぶくぶく。なるべく水面下に体を沈めています。

 GM:もうちょっと厳かな湯浴みの時間を想定してたんだけども。

 ツバキ:いいんだ、どうせすぐまたシリアスな展開が始まるだろ?

 GM:……まぁね。それじゃあ〔生命抵抗力判定〕で行う飲み比べに勝ったら、ヴァンニクをべろべろに酔わせて聞き出せた事にしようか。


 これは冒険者達の圧勝だった。何せ、歴戦の強者である彼らに対してヴァンニクのレベルはたったの3。そもそも敵う筈がないのだ。しかし、GMはこの情報を確実にPLに与えておきたかったので、終始笑顔を浮かべていた。(少し疲れていたのもあった)


 GM:では、すっかり酔いが回って赤ら顔になったヴァンニクが、ツバキの肩にしなだれかかった。「うぃー、ひっく……そういえば、スカディさまのひみつが知りたいんだっけぇー……?」

 ツバキ:「ああ。ここだけの話に留めて、誰にも言わなければ問題はないだろう」こっちは同量を飲んでも顔色ひとつ変わってない。

 GM:「しょーがないわねぇー……」とヴァンニクは呂律の回らない口でため息を吐き、ツバキの耳元に口を寄せた。「じゃあ教えてあげる、スカディさまのひみつはね……」(ちょいちょいとツバキのPLを手招きする)

 ツバキ:(耳を寄せる)

 ステラ:お、内緒話だ。

 GM:(ごにょごにょ……)


 ヴァンニクの話を聞いて、次第にツバキの顔がこわばって行った。

 ────────────────────

[雑談]

 リューラ:そういえばヴァンニクって全裸の女性の姿なんだよね。

 GM:あ、こら。せっかく健全性のために描写しないでいたのに。

 ツバキ:いやぁ、そんな中にハイレグ競泳水着を出してすまない。

 ステラ:てへぺろ。

 GM:もっと真面目に反省しなさい。ここからが本番なんだぞ。というか競泳水着がハイレグとは限らんでしょうが!持たせたサーの従者も、もっとステラに似合う可愛いのを選んだと思うよ。

 ツバキ:ここからが本番……そうだな……(ヴァンニクの話を反芻しているようだ)

 リューラ:ところでさ、カニクもヴァンニクと温泉入ったり一緒に酒飲んだりしてた訳だよね。

 サー:そうですね。

 リューラ:浮気か?これは浮気なのか?

 サー:多分、同僚と飲み会に行くみたいなノリでしょう。

 リューラ:そう……なのか……。

 GM:はいはいはい(手を叩く)今日のセッションはここまで!解散!各自ぐっすり寝て、次回に備えてください‼︎


 ちなみにサーの従者のPLは、今回GMを担当している筆者です。

 ステラ達パーティーの冒険は、GMを交代しながら遊ぶリレーセッション形式のキャンペーンなのです。

 今回のリプレイの評判次第という所ではありますが、彼女が登場する別シナリオもリプレイにする機会があればいいなぁと思っています。他PLさんがGMをやってるシナリオでは、がっつりメインキャストを張っていますからね。


 そして、サーの鎧の中身は、豊かな金髪に彫りが深い顔立ちをしたガタイの良い青年です。声がやや低いのと顔を隠しているせいで実年齢よりも大分年上に見られる事が多い彼ですが、実はまだ20歳になったばかりだったりします。サラッサラの髪に加えてツバキとは別ベクトルで美形な為、人の多い所で兜を外すとどうしても目立ってしまうというのも、彼が兜を滅多に脱がない理由の一つです。

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