1-3. 村長屋敷の異変
灯りもなく静まり返った村長の屋敷。アニウが不安を滲ませた声で「おっかぁ……?」と中に再び呼びかけるも、やはり返事は帰ってこない。
ツバキ:「村長はどうした?お前と母親の面倒を見ている筈ではないのか」アニウの肩にそっと手を置きつつ、戸口の闇を見つめる。
GM:それにはラッセルが答える。「皆さんの元へ戻る道すがら他の者から聞いたのですが、村長は今は村の北側にある崖の方へ行っているようです。何でも獣が侵入した痕跡があったとかで、その確認に」
リューラ:まさかとは思うけど、襲われたとかじゃないよな……。
GM:アニウはごくり、と生唾を飲み込むと、焦ったように履物を脱ぎ捨てて中へ駆け上がった。「おっかぁ‼︎大丈夫⁉︎ねぇ、おっかぁ‼︎」
ラッセルには村長を呼びに行って貰い、四人はアニウと共に屋敷の中に入った。消されたばかりでまだ暖かさの残る囲炉裏を発見した彼らは、そのまま屋敷内の捜索に移る。内側から鍵のかかった部屋をリューラが発見し、外に回り込んだサーが窓から覗いてみれば、中に誰かが倒れているのが見えた。
サー:「中に誰かいるのである‼︎」建物の中の人達に聞こえるように声を張り上げます。
リューラ:「了解!」こうなったら扉をぶった斬ってでも……‼️
ステラ:いや、【ノッカー・ボム】を使おう。「……アニウ、この扉、鍵だけ壊してもいい……?」
※【ノッカー・ボム】:
GM:アニウは青い顔をしつつも、君の言葉にしっかりと頷く。
ステラ:じゃあ、《マギスフィア》を扉にくっ付けて……えい。(判定)
GM:成功。《マギスフィア》から一瞬だけ光が放たれると「ボン!」と大きな音がして、扉の錠前だけが綺麗に吹き飛んだ。そのまま扉を開ければ、ぞっとするほど冷え切った部屋の中に、アニウに似た顔立ちの赤毛の女ドワーフが倒れているのが見える。アニウはその女性に大慌てで駆け寄ると、「おっかぁ‼︎おっかぁ‼︎死んじゃやだぁ‼︎」と泣きじゃくりながら肩を掴んで揺さ振ります。
ツバキ:駆け寄って脈を取ろう。
GM:まだかろうじて息はあるみたいだ。でも低体温症が酷いみたいだね。顔色が真っ白で今にも死にそうな感じ。
ツバキ:「ステラ!回復を‼︎」
ステラ:「分かった。アニウ、どいて……」
GM:アニウは銃を構えて近付いてくるステラにぎょっとした顔を向けます。「おっかぁに何するつもりだ⁉︎おっかぁを殺す気か‼︎」
ステラ:「ち、違う。失った体力を少しでも戻して、小康状態にする」首を横にぶんぶん。
リューラ:「ほら、アンタはこっちに下がってな」アニウの襟首を掴んでひょいっと引き離そう。
GM:では、【ヒーリング・バレット】かな?
※【ヒーリング・バレット】:魔動機術の一つ。治癒能力を持つ弾丸を対象に撃ち込み、怪我などで減少した
ステラ:うん。判定……成功。回復量も決める?
GM:いや、十分。1発撃ち込めば小康状態まで持っていけるよ。
ひとまず生命の危機を脱した女性をリューラとサー(これまでのやり取りの間に戻ってきていた)で担ぎ、冒険者たちは囲炉裏のある部屋へと移動した。サーが持っていた《迅速の火縄壺》によってすぐさま囲炉裏には炎がくべられ、アニウが持ってきた毛布や毛皮などで女性をぐるぐる巻きにして囲炉裏の近くに寝かせた冒険者達は、やっと一息ついたのだった。
サー:「『こんな事もあろうかと』と我が従者が購入を薦めていた《迅速の火縄壺》だったが……役に立ったであるな」囲炉裏の前であぐらをかいて座っています。やっと暖かい空間に来られたのに、素直に喜べない……。
ステラ:「……間に合って、よかった」ちょっと疲れた顔をしてる。
サー:「お手柄である」なでなで。
GM:アニウはさっきまで泣きじゃくっていたのが恥ずかしいのか、体育座りのまま顔を膝の間に突っ込んで隠しています。でも、目を閉じたまま眠っている女性の側にずっといる。
ツバキ:「その人がお前の母親のアプトで間違いないのか」と声を投げかける。ちょっと不機嫌な顔で、ぶっきらぼうに。
GM:小さな膝を抱えた手の隙間から、かすれるような声で「うん……」と返事が返ってくるよ。
ツバキ:「そうか」とだけ返して黙り込む。
リューラ:じゃあ、ツバキを嗜める。「おーい、そういう態度は良くないと思うわよ?さっきまでお母さんが死にかけてたんだから、もっと労ってあげなさい」
ツバキ:「俺は別にアニウに怒っているんじゃない。怒りを感じているのは、その母親に対してだ」
リューラ:「だとしても、よ。今はやめときなさい」ぴしゃり。いや、何が言いたいのかは薄々分かるけどね。
サー:「そうである。もうすぐラッセル殿が村長殿を連れてやって来るのに、そんな態度のまま接するつもりか?」
ツバキ:……よし。それを聞いて、黙って立ち上がる。
ステラ:「……どこ行くの、ツバキ?」
ツバキ:「ちょっとした調べ物だ。……いや、ステラ、お前も付いてきて手伝ってくれ」そのまま、さっき母親が倒れてた部屋へ向かいます。
GM:おっ、いいね。何を調べるの?
ツバキ:簡単に言えば原因調査かな。推測はできてるけど。
GM:ステラは付いていく?
ステラ:付いてく!サーとリューラに『二人をお願い』って目配せする。
サー:うむ、と頷き返します。
リューラ:ひらひら手を振って見送るよ。ツバキにはちょっと呆れた顔をしてるけど。
ツバキとステラが先ほどの施錠されていた部屋を調べると、どうやらあの部屋に閉じこもったのはアニウの母親自身の意思によるものだったようだ、ということが判明する。また、屋敷内に誰かが忍び込んだり隠れたりしている気配はなく、冒険者たちとアニウが到着するまで建物の中には彼女一人だったことも。
ツバキ:「やはりか……」部屋の中心に立ちながら、しかめ面。
ステラ:「……あの人、自分から死のうとしてたの……?」展開していた【エクスプローラーエイド】を再び《マギスフィア》に引っ込めつつ、ツバキに尋ねる。
※【エクスプローラーエイド】:魔動機術の一つ。探索や解錠といった行動に有利に働く、視聴覚の補助センサーを作り出せる。
ツバキ:「そういうことだろう。夫の失踪以来病んでいるとは聞いていたが、ここまでとはな……」ため息を吐き出す。
サー:親に捨てられた孤児だもんね、ツバキは。
リューラ:しかもナイトメアだし。まぁ私達は知らないんだけど。
ステラ:「……ツバキは、あの人が許せないの?」恐る恐る。
ツバキ:「許せないというよりは、悲しいんだ。子供を残して死のうとする母親など、見たくはなかった」
ステラ:「ツバキ……」言いかけた言葉が突然出てこなくなった感じで、口をつぐむ。
ツバキ:それで我に返って、ステラに頭を下げる。「……すまん、ステラ。少し口が滑った。やはり俺一人で調べるべきだったよ」
ステラ:「ううん……いいの。あっちに、戻ろう?」
ツバキ:「ああ。そうしよう」内心で結構反省してる。小さい子供に見せるべき態度ではなかったな、と。
GM:では……二人が囲炉裏の部屋に戻ってきて、リューラとサーにこっそり調べた結果を共有した頃、屋敷の玄関が騒がしくなる。どうやらラッセルが村長たちを連れて戻ってきたようだね。
行商人ラッセルは、数名の村人と共に村長を連れて屋敷へ戻ってきていた。クスク村の村長アイゼンは、ラッセル以上に長い髭を細かく編み込み、首の周りにぐるぐると巻きつけたドワーフの好々爺だ。心配そうに事情を尋ねるアイゼンにサーが事情を説明すると、彼は深いため息を吐いてから残りの村人を帰らせたのだった。
GM:屋敷の入り口で応対したサーは気付くけど、去り際に他の村人達が君を見る視線が、妙に刺々しかった気がする。
サー:村の子供達もそうだったけど、妙にアニウちゃんや我々に敵対的なのは、何故なんでしょう?
リューラ:お母さんの自殺未遂も含めて、悪ガキ共が『裏切り者』って言ってたのと関係ありそう。
GM:ラッセルと共に屋敷の中へ上がり込んだアイゼン村長は、毛布や毛皮に包まれて寝かされているアニウの母親を見つけると、どすどすと音を立てて駆け寄り、その無事を確かめて盛大に安堵の声を上げた。「よ、よかった……無事じゃったか‼︎」
ステラ:「あ……《アウェイクポーション》を使えば、今すぐにでも起こせるけど……」またちょっと人見知り発揮してリューラの陰に隠れてる。
※《アウェイクポーション》:
GM:アイゼン村長は両手をぶんぶんと大きく振って断る。「いやいや、それには及ばないのじゃ。それにアプトも……娘もだいぶ疲れていたのじゃろうて。今はゆっくり休ませてやりたい」
リューラ:「賛成よ。このまま寝かせてあげましょう」
GM:アイゼン村長は改めて君たちを見回し、「して、あなた方は……」と言いかけるが、すぐにラッセルが耳打ちすると「ああ、なるほど!街から来てくださった冒険者の方々じゃったか」と納得したように手を打った。「改めて名乗らせていただくが、わしはアイゼン。このクスク村の村長じゃ。村に着いて早々、娘や孫がお世話になったようで……ご迷惑をお掛けして、誠に申し訳ない」
ステラ:「……き、気にしなくていい。あの人が無事でよかった」
ツバキ:「あなたが村長か。ラッセル氏から話は聞いている。俺は冒険者のツバキだ」
サー:「そして我が名は──」
ステラ:「しーっ」口元に指を当てて静かに、のジェスチャー。
サー:「……ゴットリープ=フォン=ヴェリースである」ちっちゃい声で名乗ります。
全員:(笑い)
アイゼン村長に四人が自己紹介を終えると、彼は屋敷の納屋から様々な食料や地酒類を持ってくる。病人が寝ているので余り大きな声は立てられないが、ささやかに歓迎の宴が始まった。
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[雑談]
リューラ:しかし今回はサーが調子出てないな(笑い)
サー:うん……どこかで思い切り名乗りを上げたいですね。
GM:どこかでそういう機会もあるかもしれないね。
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