1-2. クスク村のアニウ
ラッセルと共に四人の冒険者が出発して十日ほど後。彼らはディガッド山脈に入り、目的地であるクスク村の近くまで辿り着いた。
道中、冒険者たちがラッセルから聞き出せた話は、次の通りだ。
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行商人ラッセルはクスク村の村長の子供で、行方不明になった猟師カニクの義兄に当たる。つまり、カニクの妻の兄というわけだ。彼はカニクの失踪後しばらくの間、残されて寝込んでしまったカニクの妻アプトと、彼にとっては姪に当たるアニウの面倒を見ていた。しかしハーヴェスとの間の行商で生業を立てている以上、ラッセルはいつまでも二人の面倒を見続けている事はできない。幸いにもラッセルの父親である村長が自分の屋敷で二人の面倒を見ると請け負ってくれたので、彼はこうしてハーヴェスまでやってきたのである。冒険者ギルドへの依頼書やハーヴェスのギルド支部へ前もって納めた報酬金については、クスク村を出る時に村長から託されたものだ。
アニウはもうすぐ14歳になる元気な娘で、母親譲りの青い髪と父親から教わった山歩きの技術を持つしっかり者だとラッセルは言うが、どうにも心配が拭えない様子で、馬車を急がせていく。「他の村人に助けてもらう事はできなかったのか?」というツバキの問い掛けに、ラッセルは首を横に振る。ただ、その理由についてはラッセルも曖昧に苦笑し、言葉を濁すばかりだった。
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いつしか道は山に差し掛かり、周囲に木立が増えてきた。針葉樹には雪が積もり、時折それらが落ちるバサッという音の他に音はなく、辺りには静けさが満ちている。
GM:空気も針を刺すような冷たさに変わっており、君たちの吐く息も白い。サーは鎧が冷たくなり過ぎてちょっと痛くなってきます。
サー:サーマルマントを頑張って巻き付けて、防寒具もぎっちり着こんでる。
GM:それでも厳しいくらい、ディガッド山脈はめちゃくちゃ寒い場所だ。
リューラ:「ヴェリース卿……この環境でその恰好は自殺行為では?」
サー:「うむ。これでも何が起きても後悔しないが座右の銘だったのだが、すでに少々後悔しているぞ!ふぅはははは‼︎」ガクガク。
ステラ:「寒い……」完全防備で、それでも白い息を吐く。
ツバキ:「……ここまでの白景色を見るのはいつぶりか」独りごちてる。
GM:ここで馬車の幌布をちょっとだけめくって、ラッセルが顔を出した。「もう少しで到着しますよ」
サー:「おお!もうすぐか……‼︎しかし、何だか眠くなってきたのである……」なんか川みたいなものまで見えてきた気がする。
ステラ:「サー、もうちょっとだけ頑張って……!」ゆさゆさ。
ツバキ:「寝るな、寝たら死ぬぞ」定番のこれはやっておかないと。
やがて冒険者たちを載せたラッセルの馬車は、ヒノキの木でできた古いアーチ状の門の下を潜る。 アーチの上には『クスク村』と交易共通語で書かれているのが辛うじて読める朽ち果てた看板が下がっており、また門の全体が独特の紋様で装飾され、雪をかぶっていた。
GM:その後すぐに、馬車はゴトンと一度だけ揺れると停まった。
サクサクと雪面を歩いてくる足音がすると、再び幌馬車の布がめくられ、頭に雪を積もらせたラッセルが「到着しましたよ。ようこそ、クスクの村へ」と言う。
ステラ:「ん」肯いて馬車を降りて、それからサーに手を貸そう。
GM:馬車を降りてみれば、君たちはいっそう強まった冷気に晒される。馬車が停止したのはどうやら村の中にある比較的大きな四辻であるらしく、十名ほどの防寒着に身を包んだ男女が君たちのことを遠巻きに眺めているのが分かる。
ステラ:第一村人はっけーん。
GM:また、山を切り開いて作った斜面に、藁葺き屋根の民家が幾つも並んでいるのも見えるね。分厚い雪が積もった民家の屋根のてっぺんからはどこも煙が上がっており、人が生活しているのは確かなようだ。
サー:「ほう、ここがクスクの村であるか!」馬車を降りてきょろきょろ。
リューラ:元気になった。
サー:暖炉の気配がしたので。いや、この感じだと囲炉裏ですか?
GM:そうだね、どの家にも囲炉裏があるよ。
ステラ:「……凄いね。こんな所にも住んでるんだ。人」
GM:「ええ。この地は寒く、厳しい土地ですが」とラッセルが答える。
ツバキ:「何処にだって、そこに意思があれば人は生きる……ステラもそうだっただろう?」
ステラ:「……うん」たった一人、いや魔動機と二人で暮らしていたあの島の事を思い出して、ちょっとしんみりしてる。
サー:「うむ、人の強さが良くうかがえる。よい場所であるな」
リューラ:「……ところで、なにか特産品はあるのかしら?特に、食べ物とか」じゅるり。
サー:さっそく食い気を出してますよこの人。
GM:「もちろんです。後ほど村長の家で、ささやかながら宴を開きましょう」
リューラ:「やった‼︎」小さくガッツポーズ。この為に冒険者やってるからさ。
馬車を降りた四人は、ラッセルが村の奥に構えているという商店へ馬車を運んで戻ってくるまでの間、村の中を少し見て回る事にした。しかし、すぐに好奇心旺盛な子供たちによって取り囲まれてしまう。
GM:「ねーねー、おにーさんたち旅人?」「どっから来たの?」「何しにきたのー?」子供たちは次々に君たちのマントの裾をぐいぐい引っ張ったり、鎧をぺたぺた触ったりしてくる。
サー:「む、そう引っ張らずとも名乗るのである……(大きく息を吸い込み)我が名は──」
ツバキ:ガッと兜の下に手を突っ込んで口を押さえます。「馬鹿、やめろ!雪崩でも起きたらどうするつもりだ!」
リューラ:(笑いながら)こっちもちょっと被せ気味で言うよ。「あ、アタシたちは冒険者よ!ハーヴェスから来たの」ちなみに、依頼の件は伏せておく。何か訳アリみたいだし。
GM:「冒険者!スゲー‼︎……あ、なぁお前、雪合戦やる⁉︎」ステラの服もぐいぐい引っ張りますね。歳が近そうと思ったのか、他三人に比べて遠慮がない感じ。
ステラ:「や、やらない……!」人見知り発動してます。仲間の誰かにしがみつきながら、首をすごい勢いで横にブンブン振ってる。
他全員:かわいい。
サー:あ、そうだ。ツバキに分かった分かったって感じで頷きます。
ツバキ:兜の下から手を抜こう。でもいつでも差し込める様にしとく。
サー:信用ないなぁ……では改めて名乗ります。「我が名はぁ、ゴットリープ=フォン=ヴェリース……」(ささやき声)
全員:(爆笑)
子供たちとしばらく遊んでいた冒険者たちだったが、やがて遠くからもう一人別の子供が歩いてくると、子供たちは途端にその子供を取り囲んでからかい出した。
GM:「やーいやーい、弱虫アニウ!」「泣き虫アニウ!」と、その子に向かって皆で雪玉をぶつけている。
ステラ:すると、この子供が依頼人のアニウちゃんかな?
リューラ:多分ね。「何してんの、この悪ガキども!」と言って止めに行くよ。
サー:「止めぬか‼︎大勢で寄ってたかって一人を虐めるなど、恥を知らぬか⁉︎」こっちも子供たちの間に割り込んで行きます。
GM:では子供達はリューラとサーにも雪玉をぶつけ始める。投げられると分かるんだけど、少し固めに握ってるみたいで、君たちの鎧にぶつかってカン、コンと音がする。
ツバキ:こいつら……。
GM:「どうせお前らもアニウが呼んだんだろ!」「裏切り者の親父を探す為に呼んだんだー‼︎」ばしばし、ばしばし。
リューラ:「こら!痛いじゃないの……ん?裏切り者って、どういう意味?」
子供たちはそれに答えないまま、投げられるだけの雪玉を君たちやアニウと呼ばれた子供に投げてから、一目散にどこかへ逃げて行ってしまった。
サー:私は頭のてっぺんから足の先まで甲冑なので全くのノーダメージである。
ステラ:流石だ……とりあえず、雪玉を投げられてた子はどうしてる?
GM:まだ同じ場所にいるよ。涙目で下唇をぎゅっと噛んで、俯きがちに立ち尽くしてる。十代前半くらいのドワーフの少女だ。
ステラ:恐る恐る近付いてみよう。「だ、大丈夫……?」
GM:彼女は目元をゴシゴシ拭ってから「あ、はい。大丈夫です、もう慣れっこだから」と、君の方を毅然とした表情で見上げてくる。ラッセルの話によれば彼女は14歳……君より年上なんだけど、彼女もドワーフだから背丈は君よりも低い。
ステラ:「そ、そう……」でもちょっとした痣くらいはできてそう。
GM:できてるだろうね。
リューラ:「あのガキ共、今度見かけたらタダじゃおかないから……ねぇ、貴女がアニウって子で間違いはないのかしら?」鎧にくっ付いた雪玉を払い落としてから推定アニウちゃんに近付きます。
GM:じゃあ皆が彼女に近付いたって事でいいかな?よく見れば分かるけど、この子だけ防寒着の下に綺麗な模様の入った服を着ているね。門にあった装飾と似た感じの模様。
ツバキ:他の子供の服装はどうだった?
GM:同じような柄が入ってたけど、もっと地味というか、布が上等じゃない感じだった。
ステラ:この子だけちょっと良い服着てるって事か……。
GM:その通り。それで少女は「はい。うちがアプトとカニクの娘、アニウです」と答えてから、逆に君たちに尋ねてくる。「あんたたちが、依頼を見てラッセルおじと来てくれた冒険者さま方ですか?」
サー:「うむ、いかにもその通り!私は……」(少し声を落として)「ゴットリープ=フォン=ヴェリースである」
全員:(笑い)
ツバキ:学習しているな。偉いぞサー。
GM:雪崩は怖いもんな。
サー:「長い名ゆえ、親しみを込め『サー』と呼んでくれても構わないのである」
GM:「は、はぁ……」微妙な表情で頷いているアニウ。
その後、他の三人もそれぞれアニウに自己紹介を済ませた頃に、行商人ラッセルが徒歩で戻ってきて合流した。冒険者達はそのままアニウとアプトが現在暮らしているという、クスク村の村長の屋敷まで案内される事となった。
GM:君たちはアニウと名乗ったドワーフの少女に案内され、雪の積もった村の中を歩いていく。いや、積もっているというよりむしろもう壁に近いね。雪を掘り進めて作られた道の両脇に、真っ白な雪の壁が立っている感じ。場所によっては、高さが二〜三メートルを超えるところすらある。
ステラ:雪国あるあるだ〜。
GM:そんな所を歩きながら、アニウがぽつりと口を開くよ。「──寒いところでしょう。雪と、寒さと、真っ白だけがある世界だぁ」そして、ほぅ、と白い息を吐き出す。
ステラ:「……確かに、寒い」
サー:「うむ、確かに寒いな。私の鎧が凍り付きそうである、いやむしろ既に凍っておるな!」
ツバキ:「そうだな」そろそろこの騎士が凍死しないか心配になってきたぞ。
GM:それを聞いたアニウとラッセルは「それはいけねえ」「少し急ぎましょうか」と言って、足を早める。ドワーフだからあんまり早くはならないけど。
それから5分も歩いた頃、冒険者とラッセルたちは村で一番大きな建物へたどり着いた。村長の屋敷だ。しかし他の民家と異なり、この家の屋根からは煙が立ち上っていなかった。囲炉裏に火が灯されていないのだ。
GM:入り口の引き戸をガラガラと勢いよく開けたアニウが「おっかぁ、冒険者さまを連れて帰ったよ!」と、子供特有のよく通る声で呼び掛けた。しかし返事はない。
リューラ:なんか事件の匂いがする。
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[雑談]
GM:そういえば、さっきアニウが怪我してないか聞いてたよね。治療はしないの?
ステラ:忘れてた!後で【ヒーリング・バレット】で痣を治してあげよう。
リューラ:小さな女の子が小さな女の子の額を銃で撃ち抜くんですか?
ステラ:そうなる。
GM:絵面がひどい……。
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