ストレートティーによろしく



 友人に、「恋というものをloveやlikeのような単語を使わずに英語で表現するとしたらどうするか」と問われた。そういうゲームをしているらしかった。

 私は"Sugery dreams砂糖のような夢"と答えた。友人はお気に召したらしくありがとうと何度か言った。

 甘さに現を抜かし、焦がせば苦くなる。扱う人間によって色も形も変わる。燃え尽きたら、あとは炭が残るだけ。

 知らないにしては良い喩えができたと我ながら思う。知らないが故かもしれない。それは私には分からない。

 青春というものを、私はあまり経験してこなかった。未来で苦労しないことに精一杯で、今過ぎている時間にゆったり目を向けるなんて思い付きもしなかった。

 いつの間にか周りは結婚したり子供ができたりしていて、驚く私の方が子供だと揶揄ったりもされた。昔は子供っぽくないだの大人びてるだのと言われていたから、少し新鮮だった。

 恋を知らなくて、愛を知らなくて、何かいけないことがあるのだろうか。浮ついた心に例えば風船がついてしまったら、どこまで飛んでいくか分からないというのに。

 いや。違うのかもしれない。人間が最も強く感じる感情は恐怖であり、その中でも最も強いのは未知への恐怖だと、どこかの文献で見た。

 私はもしかすると本当に、ただ未知に恐怖しているだけの子供なのかもしれない。だとすれば、私の胸元に穴が空いたように通る冷たい空気にも納得がいく。

 寂しがりは甘いものが好きらしい。嵌ってしまっては同じ穴の狢だから、やっぱり外から眺めるだけにしておく。おお、恐いや、恐い。


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