机の隅の落書きに


 多分私たちは、結構不可思議な世界に生きている。頭痛があったり歩きにくくなったり目が悪くなったり、そんな体の不調が当たり前で。存在する全てが須らく宇宙という名前の作品の中で漂っている。その発祥は空虚と言っていいほど曖昧で、あまりにも安っぽい。そしてその存在する全ては、遍く死に向かうことに対して一切の抵抗がない。

 否、私たち人類は意識や思考といったものを運良く手に入れたがために、死にたくないとぼんやり浮つくことはできる。しかし、その反面私たちはいずれ来る終焉を、半ば諦めかの如く受け入れている。祝うべきだとでも言うように寿なんて文字を使って。恐ろしいはずなのに、それを誤魔化すように日々を擦り減らす。

 親が子の名前すら忘れてしまった挙句消えてしまうだなんて。愛する人を遺してその意識を遠く去ってしまうだなんて。酷く哀しいことであるはずなのに。どうしてそうなったと賢い人に聞いたって、進化の過程としか言わないで。

 多分私たちは、結構不可思議な世界に生きている。生き続けることを望みながら、死ぬために生きている。自分が自分であることを何よりも望みながら、自分が自分でなくなるその日のために生きている。

 苦しいとは、思う。重いとも、思う。けど、それ以上もそれ以下も私は考えない。今の私は数学のテストが早く終わって、暇なだけの女子高生だから。

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