そうだ、世界は回ってる



息をすることを赦された。

考えることを赦された。

足掻くことを赦された。

奇しくも人間だった。


塞ぎ込むことを赦された。

狼狽えることを赦された。

藻掻くことを赦された。

奇しくも人間だった。


斯くも難しい、生きるというのは。

うねり曲がる心情を、湛えながら歩くことは。

死への渇望と恐怖を、堪えながら歩くことは。


だが、故に斯くも美しい。

散りゆく定めを、強かに咲かんと歩くことは。

持ち切れぬ生を、過たず進もうと歩くことは。


奇しくも人間だった。

それは希望になった。


走るも跳ぶも、潜るも自由に手に握る。

そして須らく、己の思う儘に目に映す。


ただひたすらに歩く。

それもまた一興。


世界なんてものはくだらない。

愚かで惨めで荒んだ模造品だ。


然れども、世界は回っている。

唯一無二へと、今に驕らずに。




 ああ、そうだ、世界は回ってる!





目を瞑らざれば、案外景色は見えるものだ。


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