さよならなんて
願い事を唱えた。心の中で微かに。二回半で消えてしまって、叶う事は無いのかと、諦めて三回目。
今夜は流星群が見られるらしい。そんなメッセージが届いて、一目散に駆け出した。あの人にそんな気は無いと、分かってはいるけれど。
独りぼっちが怖いから、夜の闇もあまり得意では無かった。夜道をぽつりと出歩くのが不安でしかたなかった。それでも飛び出してきたのは、多分あの人の言葉を、素直に聞こうとしたからだと思う。
結果的に、今の私は光のシャワーを一身に浴びている。田舎のいい所は空気が澄んでいる事だ。あの人が住むのは都会の方だから、もしかするとこんなに綺麗には見えていないかもしれない。少しだけ優越感があった。
一番に家から出た時には、願い事は決まっていた。けれど、この溢れる光は、こんな曖昧な人間の想いを包むにはあまりに美しすぎた。
夢は叶うから昇華する。叶わない夢はただの想像であって、それは誰をも幸せにはしない。出てくる相手も。自分でさえも。
あの人の目を思い出した。笑っていた。心からの笑顔だったかどうか、読解力の無い私には到底、分からない話だけれど。
また墜ちた。どこかの誰かの夢が、光とともに。あぁ、教えてくれたあの人も、見ているのだろうか。きっとあの人は、私の事を考えてなど、いないのだろう。
久しく見た滲む世界を掻き消すように閉じ、今度こそと心に浮かべた。
せめて、あの人の月が綺麗でありますように
三回。
やっぱり、私じゃ駄目ですか。初めの願い事を握り潰すようにしゃがみ込んだ。
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