愛して、それから一口
歪んでる?百も承知よ。そんな事は
ええ、知ってるわ。私が二番目に愛した男よ。でも、金食い虫だとは思わなかった。だから、丁寧に髪と皮を剥いで、中身を取って。綺麗に売り捌いてやった。溶けた分は取り返せたし、感謝の言葉もいただいたわ。善い事をすると心が安らぐわね。
こっちは私が五番目に愛した男ね。二番目とは違って真面目で誠実で、良い男だったわ。でも彼、束縛しがちだったのよ。そういうのはナンセンスでしょ?だから、服を脱いだ彼を彼より強くしっかり縛って、夜の砂浜に放り出してあげたの。ゴミが散乱する砂浜にね。
これは確か、八番目だったかしら。たくさん愛してきたから、もうあまり覚えてないの、ごめんなさいね。彼はどちらかと言うと自由を慮る人でね、過ごしやすかったわ。でも、あまりにも放任だったし、浮気性だったの。せっかく愛し合っていたのに、途中で違う女の名前なんて、反吐が出るわ。だから、空を自由に飛び回る鳥になってもらったのよ。白い鳥はメタファーなんて言うものね、幸せを運んでくれそうでしょ?
分かってるのかって、言われてもねぇ。だって私、殺人鬼じゃないもの。
嘘じゃないわよ。私がやったのは声が聞こえるまで。じゃなきゃ面白くないわ。私なら愛する男の生き汚くて情けなくて可愛い喘ぎ声を、まさか亡くすなんて野暮なことしない。間違いなく私は彼らを愛してたんだから。
間違ってるのは貴方たちの方じゃないかしら。だって、私の事を連行して此処に繋いでおきながら、物的証拠が何一つ出てこないじゃない。私が殺人鬼であるという決定的な何か、無いの?
……素直なのね。そういう男は嫌いじゃないわ。あら、怒らないでちょうだい?これは私の個人的な見解だから。表現の自由、って奴よ。
仕方がないから、少しだけヒントをあげましょうか。私が彼らと出会ったのは不特定多数の男女が集まるパーティ。私が彼らと交合った時、周りにはたくさんの
やる事は決まったんじゃない?私はもう用済みよね。さ、帰してちょうだい。
あら、随分手荒なのね。心配しなくても、私は悪い事なんてしてないから逃げないわよ。それとも、貴方も愛して欲しいの?
っふふ、冗談よ。
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