第87話 激昂の女勇者、狂乱の白魔術士
「ルシウス、あなたを勇者パーティから追放するわ」
……と。
「は……? 追、放……?」
何を言われたのか理解できない、といった表情を浮かべるルシウス。
そんな彼にアイラはさらに言葉を続ける。
「国王様にヴァサーゴの件を伝え、聖魔王様の預言でこの国に来るまでは我慢していたわ。でも今の暴挙を見てそれも限界。私はあなたがティオをパーティから追放するように唆した件を許していないし、そもそもティオがパーティに戻ってきてくれれば戦力は十分……だからルシウス、あなたは追放よ」
「そ、そんなっ! わ、私が追放……っ」
アイラの再度の追放宣言により顔面を蒼白するルシウス。
事の成り行きを見てどうしたものかと考えるティオ、だったが……
「く……! 全て貴様のせいだ、ティオ! 貴様に決闘を申し込むッッ!!」
「……は?」
ルシウスの言葉にきょとんとした表情を浮かべるティオ。
彼のことなどお構いなしにルシウスは――
「今からが決闘だ! 食らうがいい……ッ!」
そう言ってティオに向かって杖を向け、白魔法スキル《ホーリーランス》を放ってくる。
だが……
「《ブラックバレット》――」
静かに、その名を口にするティオ。
彼の目の前の空間から凄まじい量の漆黒の魔弾が勢いよく飛び出す。
魔弾の数々はルシウスの放ったスキルを打ち消し、そのまま彼を滅多撃ちにする。
どんな理由があろうとも攻撃してくるのであれば排除する。
「ぐがぁぁぁぁぁ――ッッ!?」
完璧なタイミングでの不意打ち、それを返り討ちにされることなど予想していなかったルシウスが驚愕と激痛のあまり激しい悲鳴を漏らす。
「ルシウス、落ちるとこまで落ちたな……」
地面に這いつくばるルシウスに杖を向けるティオ。
アイラを始め勇者パーティの誰もが、ルシウスに冷たい視線を向ける。
「だっ、だのむ゛っっ! 命だけは助けで……ッッ!!」
ボコボコの顔で口から歯をこぼれ落ちさせながら懇願するルシウス。
「……消えろ、二度とぼくたちの前に姿を現すな」
逡巡したのちに、そう言って杖を降ろすティオ。
ルシウスは「うぅ……っ」と情けない声を漏らすと、その場から足を引きずって去っていく。
「ティオ、よかったの?」
「アイラ……まぁ、元仲間だし、あれだけやれば再起不能かなって」
立ち去るルシウスを見据えながら、アイラの問いに答えるティオ。
「まったく、マスターは甘いんだから」
「ほんとです……」
あれだけの暴挙をしたルシウスを見逃したことに、さすがにベルゼビュートとアイリスですらも表情を苦いものにする。
しかし――
「えへへ〜」
「ティオはほんとに優しいです〜」
リリスとフェリスは満面の笑みを浮かべながら、ティオにきゃっきゃっと甘えてくる。
「ふふっ……、これでは怒るに怒れませんね」
「まったくだ」
「……だからこそ妖精さんに好かれてるのかも」
リリスとフェリスの様子に、苦笑しながらそんなやり取りを交わすダリア、ユリ、そしてスズ。
「完全に毒気を抜かれてしまいましたね」
「ホントだよ〜」
アイラの後ろに控えていたラティナスとエイルも同様だ。
「ティオ、すぐに勇者パーティに戻ってきてとは言わないわ。でも今回は一緒に戦ってくれないかしら? あなたがいれば例え三獣魔が相手であっても百人力よ」
「もちろんだよ、アイラ。世界のためにも一緒に立ち向かおう」
そう言って、アイラとティオは握手を交わす。
「あっ……そういえば」
思い出したかのように声を漏らすアイラ、一体どうしたのかというのだろうか。
「ラティナス、エイラ、どうしよう……ルシウスに勇者パーティの証を持たせたままだったわ」
「あっ、まぁ……今は仕方ないですかね」
「うん、探すのも大変だし今は三獣魔を倒すことに専念しよう〜」
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