第86話 新たな預言と再会、そして波乱
二週間後の朝――
ティオたちが朝食を終え、宿屋の部屋でゆったりと過ごしていると……
「マスター、三獣魔の一柱――その復活場所がわかったわ」
静かに、ベルゼビュートが言う。
「「「……ッ!」」」
とうとうこの時が来たかと息を漏らすアイリスたち。
「それで、どこに復活するの?」
目を細め、ベルゼビュートに問いかけるティオ。
これまでにない強敵となろう存在の復活、その表情はいつになく真剣だ。
「場所はこの首都から少し離れた場所、迷宮の中だわ」
「迷宮か」
「……厄介」
渋い表情で言葉を漏らすユリとスズ。
ただでさえ強力な三獣魔、それがモンスターの蔓延る迷宮の中ともなればその感想も当然である
「それだけじゃないの、三獣魔復活の影響で活性化した迷宮のモンスターが氾濫する可能性すらあるわ」
「モンスターの氾濫……! それがもしこの都市に到達すれば……」
「ひとたまりもないですね……」
さらなるベルゼビュートの言葉を聞き、その可能性に思い至るアイリスとダリア。
リリスとフェリスも何となくことの重大さを理解したのか「う〜!」「止めないとです〜!」とあせあせしている。
「マスター、私は各国の巫女に預言をしに次元の狭間へとも戻るわ」
「了解だよ、ベルゼビュート。ぼくたちはその間に準備を始めよう」
「はい、ティオ様!」
それぞれやり取りを交わすと、ティオたちは動き出す。
◆
迷宮へ行くために色々な買い出しを終えたティオたち。
そんな彼らの後ろから――
「ティオ……?」
鈴の音が鳴るような声が聞こえてくる。
ティオが振り返ると、そこにはアイラと彼女の率いる勇者パーティの面々が立っていた。
「アイラ、来ていたんだね」
「ティオ! まさかあなたも例の件で?」
ティオの言葉に表情を輝かせるアイラ。
例の件……ということは、ベルゼビュートの一回目の預言でこの国に来ていたのだろう。
「うん、ぼくたちも独自に動こうと思って」
アイラの問いかけに答えるティオ。
そんな彼の言葉に、アイラの後ろに控えていたエイルとラティナスが疑問を抱く。
「あれ? でもなんで……」
「ティオが例の件を知っているのですか?」
……と。
二人の疑問に、何と答えようかと逡巡するティオ。
まさかベルゼビュート本人から情報を教えてもらったから、などと言うわけにもいくまい。
そんなタイミングで――
「ふふっ、そんなことよりまたこうして会えて嬉しいわ」
そう言って、アイラが……ぎゅっ! とティオに抱きついてきた。
「うむぅ〜!?」
彼女の豊かな胸に顔を包まれ、くぐもった声を漏らすティオ。
突然の出来事、そして七魔族ヴァサーゴから命を救って以来、素直に感情を表現するようになった彼女に、ティオは少々困惑してしまう。
「「む……!」」
と、声を漏らすアイリスを始めとする女性陣たち。
しかし彼女たちよりも先に動くものが一人――
「貴様! アイラ様から離れろ!」
ルシウスだ。
語気を荒げて、彼はティオをアイラから引き剥がす。
そしてそのまま――
「おい、あまり調子に乗るなよ?」
そう言って、ティオの胸ぐらを掴んで睨みつけた。
ルシウスの突然の暴挙にどうしたものかと困惑するティオ。
自分が目の敵にされていたことは過去の出来事で知ってはいたが、まさかここまでとは……と。
「やめなさい、ルシウスッッ!!」
響き渡る怒声。
声の下方向を見れば、そこにはこれまでにないほどの怒りを感じさせる表情のアイラが。
「ア、アイラ様……っ」
アイラのものを言わさぬ雰囲気に飲まれ、思わずティオの胸ぐらから手を離すルシウス。
そんな彼に、アイラは衝撃の言葉を言い放つ――。
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