第88話 鬼武者たち
翌日――
都市の南門へと集まったティオたち(ちなみにベルゼビュートはすでに次元の狭間から帰還済みだ)。
アイラたちにもこの国のトップからベルゼビュートによる予言が伝えられ、迷宮へと向かうことになったようだ。
あいにく、この国の有する勇者パーティは別件で他国へと出向いており、今回は討伐に参加することができないらしい。
「さて、行くとしようか」
「そうね、ティオ」
桜が咲く木が連なる南門の前で、やり取りを交わすティオとアイラ。
周囲にはこの国の騎士や冒険者が集まっている。
勇者パーティはいなくても戦力はある。
彼らは何かあった時のために、都市を防衛するのが役目だ。
迷宮へはティオとアイラたちが行くことになっている。
◆
街道を進むことしばらく――
「あれは……」
遠くの方を見ながら、声を漏らすアイラ。
視線の先には土煙がもうもうと舞っているのが見える。
「アイラ様! モンスターの大群です!」
双眼鏡を見ながら声を上げるラティナス。
「くっ、もうモンスターの氾濫が始まっていたというの!?」
冷や汗を流すアイラ。
ベルゼビュートの預言でその可能性があることはわかっていたが、それがまさかこれほどまでに早いともなればその反応も当然である。
アイラたちが絶望感を覚えている間にも、モンスターの大群は猛スピードで都市のある方向へと向かってくる。
本能で人間の集まっている方向がわかっている……そう思えるほどに真っ直ぐと。
「このままでは食い止めきれない……迷宮の奥ではすでに三獣魔が復活しているかもしれないのに……!」
焦燥しながらも聖剣を召喚するアイラ。
……がしかし。
「マスター」
「うん、手はず通りにいこう」
ベルゼビュートの声に頷くティオ。
そのまま――
「《ブラックストレージ》」
と、E Xスキルを発動する。
すると中から甲冑を装備した者たちが凄まじい数出現する。
その中心には鬼の仮面を被った侍装束の男の姿が。
そして彼が――
「ティオ殿、さっそく出番か」
と、ティオに問いかける。
「ああ、ここは任せていいかな? 〝サヤ〟」
そう、サヤである。
サヤは鬼武者の格好をしており、他のアンデッドたちも全て甲冑を身に纏っている。
今回、迷宮のモンスターが氾濫した場合、ティオはサヤたちの力を借りることにしていた。
しかし他者の目もあるので、サヤたちがアンデッドであることがバレないように、甲冑や仮面を被ってもらっているのである。
「ああ、もちろんだ。ティオ殿たちは三獣魔を」
ティオの問いかけにクツクツと好戦的な笑い声を漏らしながら頷くサヤ。
「ティ、ティオ? こ、これは……っ」
「アイラ、彼らはぼくのスキルで呼び出した使い魔たちだ。馬鹿みたいに強いからここは任せて、ぼくたちは迷宮に急ごう」
と、適当なことを言って街道を大きく迂回するルートへと進み始めるティオ。
「つ、使い魔って……」
「ティオくん、あんなに強くなったのに……こんな数を召喚するスキルまで手に入れたの……?」
もはやドン引き、といった感じで声を漏らすラティナスとエイル。
そんな彼女たちなどお構いなしに、ティオたちは進んでいく。
◆
「さて、久しぶりに力を振るうとするか……」
ティオたちが迂回ルートを進むのを見届けたところで、ゆったりと呟きながら腰に差した妖刀・闇時雨を抜くサヤ。
漆黒色の刀身が妖しくも美しい光を放つ。
そして――
「《慟黒剣》ッッ!!」
闇時雨を天に掲げ叫ぶサヤ。
するとその刀身が漆黒のオーラを纏い……ギンッッ!! と、巨大なエネルギーブレイドを形成した。
「喰らうがいい! 唐竹割――ッ!!」
勢いよく漆黒のエレルギーブレイドを振り下ろすサヤ。
今まさに向かってきているモンスターの軍勢の先頭から数メートル先までを消しとばしてしまう。
一瞬の……あまりにも凄まじい光景を理解することができず、ゴブリンやオーク、ミノタウロスを始めとしたモンスターたちの足が止まる。
「今だ! 者どもかかれ!」
闇時雨の切っ先を敵に向け叫ぶサヤ。
甲冑を纏ったアンデッドたちが、一斉に雄叫びを上げかけ出していく。
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