第41話 転生魔導王の旅は続く
数分後――
「そう、私たちを心配してあとを追ってきてくれたのね……」
樹海の中で、ティオの隣を歩くアイラ。
その姿は何ともしおらしく、頬は薄らとピンク色に染まっている。
ひとまずヴァサーゴの死体を回収し、ティオたちはアイラたちと一緒に、ルミルスに戻ることにしたのだ。
「ねぇねぇ、ラティナス、今なら……」
「えぇ、アイラ様に本当のことを聞けるかもしれないですね」
後ろの方で、そんなやり取りを交わすエイルとラティナス。
そして先頭を歩くティオとアイラに駆け寄り、こんな質問をする。
「ねぇねぇ、アイラ様!」
「改めて、私たちにティオを追放した本当の理由を教えてくれませんか?」
……と――
「そ、それは……!」
二人の言葉に、アイラは顔を真っ赤にする。
そのままチラリとティオの方を見る。
そして――
「……わかったわ、本当のことを話すわ」
――少し恥ずかしそうな表情で、アイラは話し始める。
ティオは「ぼくを追放した本当の理由……?」と、不思議そうに首を傾げる。
「ティオ、私があなたを追放したのは……あなたのことが好きだったからよ。……その、異性としてね……」
「「「…………は?」」」
アイラの言葉に、ティオ、ラティナス、そしてエイルが間抜けな声を漏らす。
その反応を見て、アイラの顔がさらに真っ赤に染まっていく。
「し、仕方ないじゃない! ティオのことが小さい時からずっとずっと好きだったんだもん!」
まるで子供のように叫び出すアイラ。
彼女の言葉はさらに続く。
「救世の旅を続けていくうちに、ティオの怪我の数が増えてきて心配になってきたの。それをルシウスに相談したら、このまま旅を一緒に続ければティオは近いうちに死んじゃうって……!」
涙目になりながら、そんなことを言うアイラ。
さらに話を聞けば、毎日のようにルシウスに「このままではティオは死んでしまう」と、脅かされ続けた。
そしてパーティを追放するように、毎日……毎日……暗示をかけるようにしつこく言われ続けたのだと……。
大好きなティオを失いたくなかった――
でも自分の気持ちを伝えるのが恥ずかしかった――
それで完全な実力不足ということにして、救世の旅から離脱させたのだという。
「えぇ……?」
「ウソでしょ、私、もっと深刻な理由があると思ってたんだけど……」
少し引いた様子で、ラティナスとエイルが言葉を漏らす。
アイリスとベルゼビュートも困惑顔だ。
「ルシウス……どうしてそんなことをアイラに?」
ジト目で、ルシウスに問いかけるティオ。
そんなティオに、ルシウスは――
「そ、それは……! お前のことを気遣った結果だ! だからこそ、アイラ様にお前を離脱させることを進言し続けたのだ……ッ!」
――苦しげな表情で、そんなことを言い始める。
「ウソね」
「ウソだね」
ルシウスの言葉を聞き、ラティナスとエイルが、そんなことを言う。
「絶対ティオが邪魔だっただけですよね、ルシウス……?」
「今まで言わなかったけど、ルシウスがアイラ様のこと好きなのバレバレだよ……?」
さらに言葉を続けるラティナスとエイル。
そんな二人の言葉に、ルシウスが「な、そそそそそんなことは……ッ!」と慌てた様子で否定しようとする。
「確定ですね」
「確定ね」
二人揃って、呆れた様子のアイリスとベルゼビュート。
そんな中、一部始終を見ていたリリスとフェリスが――
「ってことは、この白いお兄さんは女勇者様のことが好きなのに、ティオが邪魔だから追放したってこと?」
「う〜〜〜〜、なんだか気持ち悪いのです〜!」
――などと、思ったことを素直に言ってしまう。
「ぐッッ!? わ、私は先に戻らせてもらう……ッッ!」
ルシウスは羞恥のあまり顔を真っ赤にすると、そのまま足早に出口の方へと向かっていってしまった。
「アホらし……」
疲れたような表情で、ティオは声を漏らすのだった……。
◆
翌日――
「ねぇ、ティオ。本当に一緒に来てくれないの?」
宿屋の前で、ティオに問いかけるアイラ。
彼女たちは、一度ヴァサーゴの件を国王に報告するために、王都へと戻るのだ。
ティオに想いを伝えた今、一緒について来てほしいと素直に伝えたのだが……ティオの答えは「N O」だった。
何故かというと――
「イヤ〜! 絶対にイヤ〜!」
「そんな気持ち悪いお兄さんと旅をしたくないのです〜!」
――などと、ルシウスに対して、リリスとフェリスが言ったから……というのも一つの理由である。
騒動も片付いたので、二人に樹海へと帰ってもらおうとした。
しかし二人は、こう言ったのだ。
「やっぱり樹海には帰りたくない!」
「もっとティオさんたちと旅がしたいのです〜!」
……と――
どうやら、別れの時が来た途端、ティオたちと離れるのが寂しくなってしまったらしい。
樹海へはいつでも戻って来られるし……というわけで、まだティオたちと旅をすることを二人で勝手に決めてしまったのだ。
(まぁ、いいかな……?)
無理にサヨナラするのも可哀想だ……。
そう考えたティオは、二人としばらく旅を続けることにしたのだ。
「アイラ、今は一緒に旅はできないけど、コレを渡しておくよ」
そう言って、ティオは漆黒色の首飾りのようなものをアイラに差し出した。
「コレは……?」
不思議そうに、それでいて嬉しそうに首飾りを受け取るアイラ。
「もし、どうしてもぼくのことが必要な時は、それを首につけてぼくの名を呼んでほしい」
「わかったわ、ありがとう、ティオ……」
アイラは頬をピンクに染めると、そのままティオの唇……の少し横に、ちゅ――と啄むようなキスをする。
「な……ッ!?」
いきなりの出来事に、困惑した声を上げるティオ。
そんな時であった――
「アイラ様! 馬車に遅れます、早く行きましょう!」
――アイラの後ろから、そんな声が聞こえる。
見ればルシウスが顔を真っ赤にして怒鳴っているではないか。
(はぁ……ティオがパーティに戻ってきてくれたら、ルシウスはクビね……)
アイラはゲンナリした表情を浮かべ、そんなことを思うのだった。
「さて、ぼくたちも行こうか」
アイラたちを見送ったあと、ティオが皆に声をかける。
「はい! ティオ様となら、どこまでも♡」
「使い魔として、一生ついていくわ……♡」
「次はどんな旅が待っているのかしら!」
「今からとっても楽しみなのです〜!」
ティオの言葉に元気に応える、アイリス、ベルゼビュート、リリス、フェリス。
パーティ追放から始まった、転生魔導王の旅は……まだまだ続く――。
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