第23話騎士団

side アーク都市 騎士団

現在、謎の事件が多発している。

目下捜索中ではあるが、原因が分かっていない。

謎の事件が始まったのは、切り裂きジャックというふざけた事件からだ。

初めは、若者の斬殺した遺体と切り裂きジャックという者からの手紙が遺体の側にあるのを発見した事から始まった。

ふざけた手紙だったので、内容は公表されていないが、だいたい一文と名前が記されている。

以下の通りになる。


はははっ。やってやった。やってやった。

切り裂きジャック


気持ちいい。

切り裂きジャック


人の肌は柔らかいな。

切り裂きジャック


無能な警備。そんなんじぁ捕まらない。

切り裂きジャック


は~やめられない。

切り裂きジャック


最近はすこぶる調子がいい。

切り裂きジャック


まだまだ切り裂くよ!

切り裂きジャック


等、数えればきりがないほどの手紙がある。

筆跡から身元を探してはいるが、見つけていないのが実状だ。

その足取りも未だ掴めていない。

警備の人員を増やしても嘲笑うかのように別の場所で事件が発生する。

やつには霧がかかっているように見ることが出来ないのだ。


初めはその若者の関係者の線から洗い出した。

手紙を置いていくような人物だ。

証拠も少なからずある。

すぐ見つかると思われていた。

そこから捜査が始まったのだが、捜査を続けていくうちにも、事件は多発し続けた。

無差別連続殺人事件。

捜査方法が変わり、事件が起こる範囲、時期、場所を重点的に軸において、解決を目指しているが、解決の糸口は見えていない。

今では市民にまで切り裂きジャックの名前が知れ渡っている。

夜に歩かないようにするのが、一番の安全策だ。

我々騎士団に生活を脅かされている市民からの苦情が多い。

頭のいたい話である。


そんな日々を忙しく過ごしている時だっただろうか。

またしても、事件がおきた。

商人の謎の失踪が問題になった。

初めは、来るべき日に来ない商人の捜索からだった。

ギルドに連絡をした所、分かったことは、街を出ている事と都市のギルドには来ていない事だった。

都市に入る時にも、名前の確認や所属の確認をしている。

都市に入ったといった情報もない。


道中で何かしらの問題が発生したと考えるのが普通だろう。

こちらも、捜索を進めていく上で、問題になったのは、失踪者の数と情報のなさだ。

失踪者の数は調べただけでも30以上のグループが消えている。

1グループ10人だったとしても、300人の人間がいなくなっているのだ。

それだけの人がいなくなって情報が入ってこないのは、おかしい。

もし仮に街道に盗賊が出たとしても、護衛の冒険者が撃退するだろう。

盗賊も冒険者に勝てるような力があれば盗賊などやってはいない。

それに仮に冒険者達が盗賊が殺られたとしても、商人は助かる事も多い。

逃げ延びる事もあるが、盗賊からしても商人は金づるだ。

生かして、商人を続けてもらわなければ盗賊も困るのだ。

街道を封鎖してしまえば、そこを通る人も減るし、討伐隊が組まれるのは、すぐわかる事だ。

盗賊もそこまで馬鹿じぁないはずだ。


では、街道で何が起きているのか、商人はどこに行ったのか、を探すのが我々の仕事になる。

街での問題も解決してない中、偵察部隊が編成された。

彼ら偵察部隊は、5チーム5人体勢で5方向に偵察が行う作戦が立てられ実行された。

だいたい一週間を目処に組まれたチームだったが、そのうち、森に行ったチームと街道を南に行ったチームが帰って来なかった。

問題の原因は分からなかったが、帰ってこられない事象があるのは、そういう事だろうか。

危険なモンスターがいる線は浅いと考えられている。

もし街道をモンスターの襲撃があったならば、そこに物品や死体がそのままになっているからだ。

そういった報告もない。

モンスターではないのは間違いない所だ。

そうとなれば、盗賊だろう。

組織がかった巨大な盗賊団がいつの間にか結成された線が一番有力だ。

討伐隊を編成し、盗賊団を壊滅しなければならない。

街道の治安維持が最優先だ。


今回の討伐隊は、相手の規模が予想よりも大きい事や拠点がわからない事も含め大人数で向かうことが決まった。

1000人のベテラン騎士と10000人の新米騎士が向かう。

一週間後には問題も解決している事だろう。


そんな我々だが、今は馬を走らせ、問題の森に来ている。

隠れ蓑を探すなら、この一帯では森しかない。

曰く付きの森だが、入らなければならないだろう。


「部隊を半分に編成!部隊長は周りの部隊長と連絡をとるように!舞台編成後、森に入る!相手に悟られる前に捕捉したい。急ぐぞ!」


「はい」


今回の指揮官がいう。

偵察部隊が帰って来なかった事もあり、心配ではあるが、これだけの人数が居る。

大丈夫だろう。

今回の作戦は電撃戦になるようだ。

敵の拠点に一気に仕掛ける。

敵に体勢を整えられる前に決着をつけたいようだ。 敵は捕捉レベルが異様に高い。

今までの偵察部隊が帰って来なかった事からも伺えるだろう。

先手を打たれる前に決着まで持っていきたいのだろう。


「それから、本陣をここに置く。一夜をここで過ごすことになるだろうから、拠点組は準備に取りかかれ。始め」


「はい!」


拠点組も動き出した。

作戦が始まる。

ここの森は曰くつきの森だ。

方向感覚を狂わせるらしく、一度入ったら出てこれなくなるやら、危険なモンスターの住処があり、出くわした者に生還者はいないやら、色々ある。

所詮は噂だ。

あっているか間違っているかもわからないが、手付かずの森である事は確かだ。

人の手が入っていないので、草木もすくすくと育っている。

草木の背の高さは腰を越している。

行軍には不向きではあるが、そんな事を言っている場合でもない。

盗賊に逃げる時間を与える方が厄介だ。

いい事といえば、人が通ったあとには何かしらの変化がある事だろう。

もし盗賊のアジトがあれば、獣道位にはなっていそうに思う。

遠くない内に何かしらの痕跡が揃うだろう。


「伝令!ここから東北に獣道を発見!人の痕跡を確認しました!」


「そうか!報告を聞こう!各部隊長も集結してくれ!」


現在、本隊は森に入り、ゆっくりと東南方向に行軍していた。

先発隊をだし、敵拠点や盗賊の足取りも探していたようだ。


「部隊長から作戦概要を確認してくれ!確認しだい東南方向へ本隊は出立する!」


部隊長から集まるように指示があった。

向かう事にする。

どうしても大人数だと脚が遅くなる。

危険を避けるためとはいえ、これだけの人数を1方向に向けるのも大変だ。


「敵拠点を発見したようだ。遠目で見た限り家のような物が建っているらしい。本隊を占領部隊で出し、残りの部隊で浅く広く包囲網を狭めていく。俺から目をはなさずついてくるように。いいな」


「はい」


俺達の部隊は、後方支援や逃げ出した盗賊を発見する事になるらしい。

全部隊で突撃するほどの規模ではないって事かもしれない。


「では出発する!先発隊はついてこい!」


そう司令官がいい、部隊が動きだす。

我々は、本体のあとを追い、放射線状に散らばっていった。

そこからは、早かった。

騎士団の本隊が盗賊と思われる一段と接触。

皆、目が赤く魔族だったようだ。

なんとその魔族達は、驚くべき事にモンスターを使役して抵抗してきたらしい。

なかなかモンスターもランクが高く苦戦したらしいが、多勢に無勢だ。

取り囲みモンスターを仕留めていき、被害も出ず勝利したようだ。

我々後方部隊も、時同じくして他の盗賊を探したが、どうも本体がいる所以外では発見されなかった。

巨大な盗賊団かと思われた盗賊達は、なんとたった十数人しかいなかった。

盗賊団の中にモンスターテイマーがいたのが誤算だった。

盗賊のアジトには、商人の馬車も留まっていた。

今回の事件はこの一団で間違いないようだ。

しかし、捜索が進むにつれ、盗品の品数が明らかに少ない事が分かった。

売り捌くにしても事件発生から、それほど時間も経っていない。

これだけの少人数で犯行に及んだとしたら、襲撃するだけで精一杯のはずだ。

盗賊に別動隊がいると分かり、捜索を継続するようだ。


それからの数日は、森の外の拠点と盗賊団のアジトを中心に捜索が開始された。

しかし、その後の足取りや痕跡は発見されなかった。

どうも逃げられたように感じる。

騎士団の遠征は1週間を予定していた事もあり、都市に帰る事になった。

残念だが、ここまでのようだ。


馬でかけて、都市に戻った。

長い遠征だったと振り返り、やっとの事で戻ってこれたと思う。

遠目で都市が見えて、無事に帰ってこれて、ほっと息をはく。


近づくにつれて違和感に、気付いた。

都市に煙があちこちから立ち込めていたのだった。

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