第20話

さて迷いの森の魔族奴隷と話してみよう。

食事も終え、昼休憩を言い渡して少し経つ。

皆無言で食べていた。

なかなか美味しかったからか、勢いよく食べていたのが印象的だった。

蒼白とした顔も心なしか良くなっている。

目は未だ生気は取り戻せていないが、この調子でいけば、はやいかもしれない。

やはり、食の力は偉大だ。


「君達は、私に買われたわけだが、ひとまずは、ここでの生活に慣れてほしい。食って寝て体力を回復してほしい」


ここまでは順調か。

奴隷達も今後の自分についてなのだ。

一語一句、聞き間違えないようにしているようだ。


「それで二つほど注意事項がある。この森から出ない事。逃亡しない事だ。取り敢えずはこの二つを守って貰えれば大丈夫だ。あとは何をしていてもいい。森に入り食料を探してもいいし、寝ていてもいい。私は、いつもここにいる事は出来ないので配下のモンスターを置いていく。もし注意事項を破れば分かりやすいだろう?」


特に意見もないようだ。

何もしなくていいのだ。

さら意見もないか。

心なしか距離が遠くなったようにも感じるな。


「力が回復が終われば、仕事をしてもらう。やる事は、商人を襲って積み荷を頂く事だ。モンスターと共に街道に出て、盗賊稼業をするので覚えておいてくれ。それとモンスター共、なるべく仲良くしてほしい。ちゃんと言えば伝わるから逆撫でだけはしないようにな。質問はあるか??」


ついていけないほどの情報量になると人は静止するものなのか?

ってのが適切か?

言いたい事はあるが、何が言いたいのかわからないって事か?

まーいい。


「そうだ。料理に心得のある者はいるか?」


集団意識か、すぐに答える者はいなかった。

隣の者同士、顔を見合わせていたり、首を振っている者がいる。

そんな中、一人の男が出てきた。


「はい。少しですが、出来ると思います」


「そうか。ではこちらに来てくれ。あとの者は自由にしてもらって構わない。奥のログハウスを君達で使ってくれ。喧嘩しないようにな」


そそくさと9人の奴隷達は、ログハウスに向かったようだ。

なかなか従順でよろしい。


「それで、君に名前はあるか??」


「はい。私はマイモンと言います」


「そうか。マイモン君には、みんなの食事を担当して貰いたい。1日分の食材と調味料を渡そう」


「はい」


《ショップ》で、料理その物を出すより、安くつくのだ。

削れる所は削りたい。

ダンジョンのミサカとイリナにも同じようにしている。

食材を1日分渡す。


「では行く。よく食べて体力をつけろ」


「ありがとうございます」


「ではまた明日来る。要望があれば、みんなの意見を聞いといてくれ」


「はい」


《ワープ》でダンジョンに戻ろうとした時に、マイモンに話しかけられた。


「お、お名前を教えて頂けないでしょうか?!」


「ああ。そうか。言ってなかったか。俺はサトシだ。モンスター使いのサトシだ」


「そ、そうですか。皆にも伝えておきます」


「うむ。ではな」


______________



その後ダンジョンに戻った。

今回は階層が上がったので、その調整からだ。

まずは階層研究所からだ。

ダンジョンの4階層目も、3階層目と同じ木にした。

特に意味はないが、1階層目と2階層目は水なので順番ってやつだ。

5階層目からは、他を研究しようと思う。

それでダンジョンの3階層目は、ワンフロアになっている。

形は、長方形だ。

縦一キロ、横二キロぐらいだろうか。

かなり広くなったものだ。

それで階層研究所の木の成果といば、ダンジョン内は密林といっていいほど草木が生い茂るようになった。

天井がかなり高いこともあり、木の成長を妨げないからか伸び伸びと育ったのだろうか。

草も人のお腹から胸ぐらいの高さはある。

人の手が入っていないとこうなるのだろうか。

木には色々な実が取れるようだ。

《変身》の記憶によると、ダンジョン内は魔素が多くあり、ただの木でさえ魔素を受けるようだ。

そのためかダンジョン内で育った木には、色々な実が取る事が出来る。

それらもイリナとミサカにお願いして採取してもらっている。

よく働く子達だ。

実の効果は色々ある。

食べると体力が回復する実や、毒を消す実などが一般的だ。

なかなか外では採れない事もあり、必ずしも必要ではないが、需要があるようだ。

それと、稀に取れる生命の実、力の実、魔力の実などは、どんな時でも高値で取引される。

効果はそれぞれの上限突発という破格の物になるようだ。

探してもなかなか見つけることができないのも大きいのだろう。

楽して食べるだけで強くなれる実。

そんな夢のような食材だ。

誰だってほしいだろう。

てか俺が使いたい。

なんとしても食べるべきだろう。

人々の記憶や本では確認しているが、まだ我ダンジョンで見かけた事はない。

楽しみの1つだ。


それと属性、木でステータスが変化するモンスターは、今の所、確認していない。

植物系のモンスターならステータスに影響があるかと思っていたが違った。

ただ隠密性は非常に上がっているのは、間違いないだろう。

まばらに分布も済ませてある。

あとはうまくやってくれる事を祈るばかりだ。


それと初心者冒険者はようやく2階層目に入ったようだ。

その歩みは亀ほどの遅さだ。

攻略法というよりは、稼ぎに来ているように感じている。

まだまだダンジョンの浅瀬にいるようなものだ。

攻略は二の次になっているのだろう。

ダンジョン内で定期的に襲われることもあり、慎重なのかもしれない。

イリナとミサカには初心者冒険者がどれくらいの行動範囲なのかも教えてある。

深追いだけはするなと厳命してあるし大丈夫だと思う少し心配だ。

それとイリナとミサカとモンスターで、強襲はしているが、初心者冒険者を取りこぼす事もあるようだ。

取りこぼすと彼女らにちゃんと報告をしてくれる。

それで床に付くほど頭を下げられる。

というかまんま土下座だ。

見ていて良くない気分になってくる。

なんか虐待しているようだ。

幼女を痛め付ける趣味はないが、止めても止まらないので途中から諦めた。

彼女達の忠誠が目に見える形で確認できるので、いい事にしよう。

覆面の人形がダンジョン内でモンスターを使役して襲ってくるのだ。

外では噂になっているのかもしれない。

あとで確認しておこう。

しておいて、損はないだろう。


そんな彼女らは順調にレベルも上がり、イリナが8、ミサカが7になった。

ステータスの伸びとしては、1レベル上がる毎に5~10ほど上がる。

ステータスが順調に伸びているので喜ばしい事だ。

特に、魔法系統の延びがいい。

さすが魔族だ。

魔族の得意な闇の魔法を何度か見せてもらっている。

影を操ったりして、足止めするのが得意な魔法が多いようだ。

闇の波動をぶつけて混乱させるのもある。

攻撃魔法が少ないのが、困った所のようだ。

その辺の攻撃は、モンスターに頼っているので問題もないだろう。

なかなかモンスターとも仲良くやっていけているようで助かっている。

モンスターもイリナとミサカは、味方で同僚ぐらいに思っているのかもしれない。

万が一、イリナとミサカがダンジョン脱出計画をたてて実行しよう物なら、生死不問とモンスターには言い聞かせてあるし、その辺も大丈夫だろう。

まぁしなさそうだが。


それと3階層目には罠も設置した。

階層が上がって新しく出来た罠だ。

1つはスパイダーネット。

まーくっつくと身動きが取れなくなるやつだ。

視にくい森には、調度いいだろう。

他には隠し扉になる。

そっちはまだ使わなくていいだろう。

まずここまで冒険者も来ない。

必要ないか。

それとモンスターはランクCのモンスターで揃えている。

どうしても個体数は少なくなってしまうが、その分能力は高い。

冒険者が3階層目に足を踏み入れるのが楽しみだ。

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