第17話 魔と聖

side イリナ


私達のご主人様はモンスターです。

いつも違う人間に変装しております。

実際のお姿を拝見させて頂いた事はございませんが、さぞ恐ろしいお姿なのだろうと思います。

ご主人様は、とても恐ろしい方です。

ダンジョンの支配者でモンスターを、次々産み出します。

人類の敵とされる魔獣を、平気なお顔で召喚され、信じがたい事に使役してされているようです。

私達魔族は瞳の色は同じでも、モンスター達を使役する事はありませんし、仲良くする事もありません。

ましてや森や山で対峙する事になれば、戦ったり逃げたりする事になると思います。

人類から忌み嫌われている魔族も、同じなのです。


そんなご主人様ですが、我々使用人には凄く優しいお方です。

妹がダンジョンに来て、早々倒れた時も、慌てずに対処されていました。

奥に連れて行かれて、家を召喚しポーションを使い、療養を命じられました。

そのあとも、色々な物を召喚されて、私達の姉妹を支えてくださいました。

私達姉妹は、窮地を脱しました。


私は本当にパニックで、妹の危機にも、ダンジョン内での危険にも、全てに対応する事が出来ず、見守る事しか出来ませんでした。

どんどん弱っていく妹を見て涙し、そこにいる事しか出来ず、ご主人様の盾になるようにダンジョンを進む事も出来ず。

今思うと本当に愚かでした。


私達は魔族です。

魔の族と言われるだけあり、魔法に精通しており、特に闇の魔法が得意です。

私達魔族は、人類から見ると生活習慣も、特殊でしょう。

太陽が出ている時は寝て、空が暗くなる頃に行動を開始します。

祖先は吸血鬼と言われるだけあり、太陽があまり得意ではありません。

太陽が出てる時は活動しない事はありませんが、なんというか太陽が出始めると眠くなるので、仕方がありません。

魔族は人類に捕まった時点で、生涯が終わると両親から教わってます。

いつからかはわかりませんが、人類とは仲良くないのは知っていました。

仲が悪くなった理由は、聞いた事があります。

聖国の偉い人が、魔族を人類から外す認定をしたからだと聞いています。

偉い人は何をもって、そうしたかはわかりませんが、本当にいい迷惑です。

そこからの魔族は、世界で生きにくいなりました。

その最たるものが奴隷狩りでしょう。


私たちが住んでいた集落は山の中にありました。

山を開拓してスペースを作り、比較的モンスターが現れにくい山岳地帯で生活をしていました。

山々に囲まれ、神様が住まうとされる山の麓です。

太陽も届きにくく、とても良い場所でした。

人類からしたら険しい山の中になるので、住みにくく近づかないので、見つかりにくい場所だと思っていました。

なので私達が奴隷狩りに合うとは思ってもいませんでした。

山菜を取りに森に入った時に、襲われました。

逃げ出す事も助けを呼ぶ事も出来ませんでした。

そのまま殴られ、気を失い、気付いた時には鳥籠の中にいました。

そのあとは、分かるように街に連れてこられ、奴隷の刻印を刻まれました。

人類と違う所といえば、勝手に連れ去られたとしても罪にはなりませんし、殺したとしても罪にはなりません。

むしろ永遠の労働力として扱われます。

魔族の奴隷は一度奴隷になると解放される事はありません。

ましてや奴隷の刻印のせいで、逆らう事が出来ないようになっています。

奴隷の刻印は闇の魔法です。

闇の魔法の中に魅了する呪文があり、それを身体に刺青する事により完成します。

私達魔族は他者を服従させようとする性質はないため使う事はありませんが、闇の魔法に精通しているだけあり、効果はよくわかっています。

自分達が一番分かるのです。

これは絶対にしては、いけない事です。

人類は本当にひどい人ばかりです。


ダンジョン内では、モンスターに襲われた事がありません。

むしろ言っている事がわかるようで、言う事を聞いてくれます。

あれほど怖かったモンスターが仲間になったようで、まだ慣れませんが、どうにかやっていけそうで安心です。

マスターはダンジョンの管理者だと思いますので、人類からは敵だと思われるでしょう。

私達と同じように見つかれば囚われ、殺されるでしょう。

そんな事は絶対にさせません。

マスターは私達が守ります。


マスターと少しお話をさせて頂きましたが、凄く聡明な方で、何もかもご存知なようです。

そんなマスターが私達を買ったのです。

理由があっての事でしょう。

私達が買われた理由は、勝手ながら思うに、人類に対抗するためだと思います。

ダンジョンは、とても広いです。

マスターが聡明なお方だろうと身はひとつです。

やるべき事やりたい事、色々あるでしょう。

とても時間が足りないのではないでしょうか?

管理をするだけではなく、人類との抗争もあるでしょう。

私達が、マスターの手となり足となる事をお約束します。

私達はマスターに多大なる恩があります。

すでに返すことができないほどに。

恩返しをさせて頂きたいです。

妹を生き返らせて頂いた恩。

私達姉妹の窮地を救って頂いた恩。

食事や宿を頂けた恩。

あのままいけば私達は遠くない未来、死んでいたでしょう。

恩は返さなければなりません。

ただ言う事を聞く奴隷ではなく、マスターの助けをさせてください。

奴隷とか関係なく従わせてください。

そして、あわよくば人類へ天罰を下せるチャンスをください。

あわよくば魔族の怨みを晴らさせてください。

どうぞよろしくお願いします。


___________________



side 聖国シルバード


天界で閻魔様とお話しして一年が経ち、言葉もなんとなく分かるようになりました。

歩けるのも、あと少しで出来るようになるはずです。

この一年は本当に暇でした。

赤ちゃんって本当にやる事ないんですね。

寝るか泣くか御飯かトイレしかないです。

たまに使用人の方だと思う方に遊んで貰えるのが、密かな楽しみです。


閻魔様とお話した通り、ちゃんと貴族のお家で生まれたようです。

使用人がいるのが間違いなさそうですよね?

それで私の名前はエリザベス シルクロードになりました。

ちゃんと女の子に生まれた事も良かったです。

性転換は嫌なので地味に嬉しいです。

それと一年間、暇だったので、異世界ならばと思い、色々試してみました。

どうやらステータスという物が見る事ができるようです。

まるでゲームですね?

みんな見れるのでしょうか??

ステータスにはスキルがあり、完全治癒とあります。

聖国だけあり、それに合わせたスキルを、閻魔様がくれたのでしょうか?

閻魔様、なかなか気のきく方です。

そんなこんなでのんびり過ごしています。

私、エリザベスはスクスクと順調に育っています。

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