第13話 奴隷

あれから金貸し屋を回った。

金貸しのオリバークに行き、金貨10枚せしめた。

味をしめた俺はオリバークの店主からライバル店の記憶を頂戴した。

その数は20店を越えたあたりで検索を止めた。

首都の情報とかいらんしね。

近くでいいよ。

それで近くの金貸しの情報を取得した。

近場には5つほどあった。

結構ヤミ金ぽい所もあって、ヒヤヒヤしたりして楽しかった。

怖いお兄さんはなぜ凄むのだろうね?

本当に訳わからんよ。


そんなこんなで55枚の金貨が俺の手元にある。

いやマジ、ホクホクですわ。

カイン君は今日一杯で、ご臨終する事になるのは間違いないね。

金のためだ。

仕方なかろう。

そう思うと次のターゲットが来るまで、ダンジョンで過ごす事になる。

やりたい事をやってしまおうと思う。


俺は金貸し屋を出たあと、ギルドで言った通り奴隷市場に来ている。

この世界の奴隷市場は本当にオープンだ。

それこそ動物を売っているかのようだ。

別名、奴隷通りとも言われ、家の前で売られている。

それこそ屋台のようにだ。

鉄格子の中に一人づつ入っている。

人権がないってのは本当に凄いわ。


奴隷達も結構必死だ。

やばいやつに当たると人生が終わる。

そらそうか、とも思うが普通なら目が死んでいる的な事にならんもんかね?

不思議だ。

地球にも奴隷はいたはずだ。

確か聞いた話によると人間が持つ潜在能力?が著しく低下するからなくなったとも一説にはあるとかないとかだったはずだ。

異世界の奴隷は逞しいのか?

いや、そんな事はないと思う。

人間は夢も希望もないとやる気力がなくなるはずだ。

そこは地球も異世界も同じだろう。

何かしらの救済処置があるのかも知れないな。


そんな感じで奴隷を物色する。

奴隷は鳥かごの中で、ずたぼろの服を来ている。

目が合うと鉄格子に寄って自己アピールをするのだ。

滑稽だ。


今回奴隷を買う理由としては、炊事洗濯をしてもらう者を探している。

気立てが良ければそれでいい。

楽できれば、尚更いい。

ライバルには負けてはおれぬ。


しかし《ステータス》で見る事が出来ないのがつらい所でもある。

バッドステータスや掘り出し物スキルなどがあるなら、即行で買うのに残念だ。

まー見れないものは仕方ないが。


というか、なんだったらモンスターの指揮官とかもほしい。

モンスターテイマーとか本当に募集中だ。

モンスターは命令された事しかしないしな。

意志疎通もままならん。

あっちへフラフラー、こっちへフラフラーなのだ。

マジで自分でも考えてほしい。

いや余計な事をされるよりいいか。

ダンジョンのために初心者冒険者を無双しますとかは今はまだダメなのだ。

まー高望みはすまい。


そんな事を考えていると人の気配がない通りに入った。

んん??

なんだここは?

ちゃんと奴隷もいるのになぜだ?


そんな疑問も奴隷を見て見て分かった。

彼ら彼女らは魔族だ。

瞳が赤いから間違いない。

皆、目が死んでいる。

そうだ、これこそが奴隷だ。

ただただ虐げられるだけの存在。

可哀想なやつらだ。

彼らの魔族の分布は、特にないみたいだ。

大きな国や街もない。

山に集落があったり森に集落なあったりするぐらいだ。あったとしてもすぐに潰される。

それほど忌諱感がつよいのだ。

特徴としては目が赤い。魔力が多い。

寿命が長い。

それだけだ。


いや闇系統の魔法が得意だったり邪神徒だったりするらしい。

これは審議のほどは、わからないので置いておく。

しかし魔獣と同じ特徴があるだけで、これほどまでに違うのには驚かされる。

地球でいう人種差別だ。

そういう自分も魔族に分類される。

本当に危ない世界だ。

この異世界では魔族は、そんな扱いだと思えばいいだろう。


「あ、あの!!」


同じ種族として同情しないわけではないが、こちらとしてもそこまで余裕があるわけでもない。

流石に目が死んでいるのはきつい。

話しかけた側としてシカトは本当にきついのだ。

ゴブ1で実証積みだから間違いない。


「すいません!!!お話しを聞いてください!」


んん?

誰か呼んでるな。


「ん?俺か?何か用か?」


「お願いです。何でもしますので私と妹を買ってください!」


ほぅ。

売り込みか。

しかし二人とは、なかなか図々しい。


「おーそうか。貴様は何ができる。我にメリットがあるとでも?」


「っっ!いえメリットは特にはありません。ただやれと言われた事は必ずやります。教えて頂ければ何でも覚えます。だから!」


ほーこいつは魔族なのに目が死んでいない。目的は始めに言っていた妹か。

彼女はまだ子どもを抜けたばかりに見える。

よくて17歳悪くて14歳か。

顔は整っており、将来は明るいだろう。

可愛い系よりは綺麗系だ。

髪は黒く今まで切った事がないのか、というほど長い。

食事も満足に食べていないようで、ひょろっとしている。

悪くはない物件か。


「そーだな。買ってやらん事もない。妹と同じく買えば安くはなるだろう。だが二人も養う事になるのだ。切羽詰まった理由を聞いてもいいと思うか?」


「そ、そ、それは妹は病に犯されていまして、残り少ない命なのです。最後に姉らしく看取りたいのです。そのあとは何でもしますので、どうかお願いです!」


おーかなり重々ちゃんだ。

まーいいか。

魔族は安い。

ここで売れなければ、すぐに鉱山行きだ。

替えが聞くからな。


「まーいいか。なんとかしてみよう。しかし値段しだいだぞ?店主はどこだ?」


「向かいの家の中です。よろしくお願いします!」


「まー待っていろ」


向かいの木造の家に入る。

中は商談で、使いそうな椅子と机だけだ。

特に飾りつけはされておらず殺風景だ。


「誰かいるか!?向かいの奴隷を買いにきたぞ!」


「はい。只今向かいます」


出てきた男はぶよっした男だった。

頭の髪が少なく人好きな笑顔を浮かべている。

暑いのか油ぎっしゅだ。

うむ。ツラい。帰りたい。

帰りたいがそうもいかんか。


「向かいの奴隷とその妹はいくらだ?」


「おお。お目が高い。魔族とはいえあの容姿です。数年すればなかなかの者でしょう。妹は裏にいますがお連れしましょうか?」


ふん。


「いやいい。急いでいるのだ。早く値段を言え」


「そうでございましたか!申し訳ありません。そうですな。二人ともまだまだ子どもとはいえ容姿がいい。一人金貨10枚でいかがですかな?」


吹っ掛けやがる。

このハゲ野郎が。


「舐めてるのか。金貨10枚なら普通の奴隷を買うわ。魔族だぞ。基本半値。それにいつ死ぬかわからん子どもだ。よくて金貨3枚だ」


「見識が大変よろしいようで…それでも仕入れと食費台もあるのです。金貨5枚は譲れません」


はっ。急に半値とは脆い商人だ。


「食費という割りにガリガリだ。ほぼ何も食べさせてないくせによくいうわ。金貨3枚半だ」


「いえいえ言ってもなかなか食べてはくれないだけなのです。金貨4枚で譲りましょう」


「ふん。まーいいだろう。さっきも言ったが時間がおしい。すぐ済ましてくれ」


「か、畏まりました!」


本当は金貨3枚から金貨3枚半だろうが、まぁいい。

意外な掘り出し物だ。

それから檻から出た奴隷と奥に死にそうな顔をした奴隷を連れて来る。

奴隷の証の刻印も入っている。

悪くなかろう。


「では頂いていく。金と契約書はこれでいいな」


「はい。大丈夫です。本当によろしいので?」


商人は自分で言ったくせに金貨4枚は多いと思っているようだ。

ばかなやつだ。


「大丈夫だ。気分がいいのでな。では行く」


「ありがとうございました!!」


二人の奴隷を連れてダンジョンに入る。

ダンジョン前の王国騎士に呼び止められたりもしたが、今日は見学だけしてすぐに出てくると言っておいた。

流石にぼろ雑巾のような少女を二人も連れていれば止めもするか。

相変わらず、騎士の見張りは無くならない。

人ん家の前でうざいやつらだ。

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