第12話 街

今、俺はついに街に出ている。

ようやくお一人様がダンジョンに来てくれたのだ。

1ヶ月もダンジョンに籠りっきりは本当に長かった。

彼には感謝だ。

襲撃した時は、ちゃんとダンジョンで目撃者をいない所で殺った。

今では《ワープ》と《千里眼》があるのだ。

挟んで仕掛けるのは分けないし、配下もその場で召喚できるから余裕に狩れた。

初めから特に罪悪感がないのは不思議だが、元々この世界の住人じぁないからだろうか?

自分でも驚く適応能力だ。

まー今では人でもないから、そんなものかとも思うようにしている。


それとモンスターというか魔物というか人形種というかだが、魔物と人とでは外見的特徴がある。

それは目が赤いのだ。

自信の姿を見た事ないからわからなかった。

男は部屋に鏡なんて置かないし。

それで冒険者の記憶を見ていた時に気付いて、本当に良かった。

当たり前過ぎたらしく、そんな話をする事ないしな。

例えばでいえば、子どもでも知ってるアンパンマンを普段からアンパンマンはこんなのって思いだしたりアンパンマンについてトークしてる事なんてないって事だ。

なかなか記憶は、奥が深い。

当たり前が当たり前じぁない俺としては、いつ墓穴を掘るか、わかったものではない。


それで現在ダンジョンの外にいるわけだが、まずは現地のお金を取得する事からはじめようと思う。

お金を稼ぐにはどうすればいいか、みんなも知ってるだろう。

働く事だ。

だが1ヶ月働いて得るお金なんて、特殊な技術もなければ、たかが知れている。

はっきり言ってそんなのは、どうでもいい。

働かなくていいのがダンジョンマスターなのだ。

今更働けるか。


なので今回は物を売る事にする。

覚えているだろうか。

ダンジョンで死亡した際は、ダンジョンに吸収されるが、装備は残る。

だから前回の騎士が残していった装備品が、丸々ダンジョンに残っているのだ。

その数、実に40組。

かなりの値がつくと思われる。

気になる所といえば、その装備品で足がつくかどうかだ。

騎士だけに配給している装備品ならばヤバイだろう。

騎士の記憶や装備屋の記憶を掘り返す必要があるだろう。

もし駄目なら闇市に流す事も考えられるが、はっきりいってそれも面倒だ。

実に上手く事が運ばない。

実際問題、人を襲った方が速い。

金を持ってるやつの家から根こそぎとるとか。


楽な稼ぎ方だろう。

しかしそれでもやらないのは、ダンジョンのレベルが低いからだ。

魔物の仕業と解れば対応される。

警戒され始めると一気に動きにくくなる。

まだ早いだろう。

都市を落とすのは、いつになるとこやらだ。


それと敵の戦力確認もついでにしておこう。

王国騎士の現状把握だ。

我がダンジョンとの差がなくなった時が、この都市も終わりだ。

目にもの見せてくれるわぁ。人間よ。

ダンジョンからはびた一文やらぬぞ。


という事なのでコピーする人間を物色する。

因みに現在はサトシ改めてカインになっている。

田舎産まれ田舎育ちだ。

都会に憧れ上京。

仕事もないので取り敢えず小遣い稼ぎにダンジョンに訪れたカインだ。

彼にはお金がなかった。

銀貨数枚、銅貨一杯の貧乏人だ。

レベルも2レベルだ。

冒険者ギルドには最近入った様子。

ギルドカードなるものがあって、それに掲載されている。

因みにギルドカードもカインから没収しているので身分証もばっちりだ。


そーそー貧乏人で思い出したが、奴隷になるには借金をするのだ。

借金をするのは貧乏人だ。

て事で、金も借りまくろう。

借りるだけ借りてドロン。

最高のお金稼ぎだろう。

時給、いくらか楽しみだ。


なので探すは騎士、武器屋、金貸しだ。

街の様子は《千里眼》で見てはいたが、音無しだったから活気はよくわからなかったが、実際に歩いてみると全然違う。

道端には露天で立ち並んでいるのは知っていたが、露天の客引きが凄い。

1分あれば2、3人には声を掛けられる。

やんわり断るが、しつこいやつも多い。

日本人にはない、熱気を感じる。


そうしていると露店街から武器屋街に入った。

中に入ってみようと思う。

カインの武器から売ってみる。


「へい。らっしゃい。お求め物はどんなのだい?」


武器屋といえばドワーフ。

ドワーフといえば武器屋。

なのかね?

短足な髭もじゃが話しかけてくる。


「武器を新調しようかと思ってな。今はこれを使っている。これのワンランク上の武器をみせてほしい」


「なんでぇーお前初心者か。おめぇにあったやつならあっちにある。ついてこい」


結構適当な感じの扱いだ。

接客業としていいのか?それは。

初心者だからかもしれんな。


「よく初心者だと分かったな?始めてだと記憶にあるが」


「かぁー何年やってると思ってんだ。みりゃ分かる。武器も防具も初心者用だ」


という事らしい。


「しかしおめぇー意外にふてぶてしいな。初心者が武器屋に来る時はみんなびびってるもんだ」


「まーな。昔からだ。所で武器買い取りもやってるか?」


「そんなもん二束三文だそ?まーしゃねーから買った物から少しは引いてはやる。武器はここだ。これだつーのを持ってこい。あとて見てやる。じぁーあっちいってっからな?」


「了解」


ふむ。

意外に優しいな。

しかし初めから騎士の武器を持って来なくて良かった。

絶対武器の出どころを聞かれてたな。

アブナイアブナイ。

さて出るか。


「悪い。財布を宿に忘れたようだ。取りに行ってくる」


「なんだ、しまらねーヤローだな。行ってこい」


「じぁーまたあとで」


「おお!」


店を出る。

まー分かると思うが、もう1回はいかん。

武器屋の記憶を頂きに来ただけだ。

もう2、3件行っとくか。

念のために。


その次は騎士団の詰め所だろう。

すぐそこだ。

ここは遠くから観察だけだ。

ここでも2、3人身繕っておいた。


てか金貸しってどこだよ?

《千里眼》にはそんな機能はない。

上から見るだけだ。

ズームとズームアウトしかない。

屋内NGだ。

覗けんのだ。

くそぅ。


夜の世情も興味あったのだがな。

覗き魔、オーイエスだ。

アホか。俺は。

こーいう時こそ、冒険者ギルドだ。


冒険者ギルドは2階建てで、わりとでかい。

1階には受付カウンターと依頼表が貼ってあるボードだけで構成されている。

溜まり場は2階にある酒場だ。

カウボーイに出てくるような暖簾のような物を押し、中に入る。

昼も過ぎているので人もあまりいない。


「お疲れ様でした。スライム討伐はいかがてしたか??」


そうだった。

カインは冒険者ギルドで依頼を受けダンジョンにきたのだった。


「いや、なかなか一人だと厳しくてね。必要な分量はまだだ。今回は聞きたい事があってね」


「そうでしたか。お早いお帰りでしたので、気になりまして…それでお訊きしたい事とはいかなる事でございましようか??」


この人は30過ぎになるだろうおば…お姉さんだ。

今のは殺気か?

いや流石に思考の上での事だ。

思い違いだろう。

それで流石に冒険者ギルドの受付穣だけあり、スレンダーでキレイなお方だ。

中堅冒険者からは人気が高いとある。


「やはり仲間がほしいと思ってね。奴隷を検討したいのだ。それで物種がなくてね。都合をつけれそうな方を紹介願えないかと来た次第だ」


「そうでしたか。それなら四番街にあるオリバークがお薦めでしょう。良心的な金利で借りられると思いますよ」


「そうか。ありがとう」


「いえいえ。冒険者と奴隷は切っても切れぬ関係にあります。お早めのご利用が吉と出る事を願っています」


「では行ってくる」


「いってらっしゃいませ」


心なしか冷たいか。

ギルド穣ともなれば慣れたものかもしれないが、笑顔の裏の冷めた目はゾクゾクするな。

奴隷を買うってのは、どういう事なのかよくわかってるって所か。


さっきの切っても切れぬ関係とは、パーティーを組むと報酬で揉めるからだ。

ダンジョンといえば一攫千金が世の常。

同じ同郷でも金に目が眩む事も少なくないとか。

ダンジョン内は、自己責任なのだ。

死体が残らないなら一緒に居合わせたやつしか死因はわからない。

モンスターにやられたと言えば、それで終わる。

お金の切れ目は縁の切れ目だ。

奴隷には報酬なんてないからな。


さて四番街に行きますかね。

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