5
飛空艇から飛び降りたルインは、屋根の上に立つ黒衣の男に襲いかかった。
風を切る音に気が付いた黒衣の男が剣を抜き放ってルインの一撃を食い止めたが、その衝撃までは食い止められず屋根に膝を付いてしまった。
その好機を無駄にせず、剣の平で黒衣の男の脇腹を叩き、一瞬で気絶させた。
崩れ落ちる黒衣の男に鈴羽を放ち、屋根から飛び降りて青物屋へと駆けた。
店に入ると、仕掛けた罠や結界に苦戦する男たちに襲いかかり、手際良く気絶させていく。
予想通り、ここへの押し込みは自分を誘うための罠であり、賊は三流以下の者ばかり。見張りも先程の黒衣の男だけであった。
罠と結界を解除したルインは、地下へと赴き、青物屋の主人にだけわかる合い言葉を告げた。
「お怪我はありませんでしたか?」
緊張した面持ちで出てきた青物屋の主人に優しく語りかけた。
「は、はい。皆、無事です」
良かったと頷き、主人らと上に上がると、そこは警備隊の面々で埋め尽くされていた。
「ルイン、どのか?」
青い外套を纏った警備隊総隊長の問いに、ルインは頷いた。
「だいたいの事情はあの子供から聞いたが、できれば詳しく説明して欲しいのだが……」
念のため、この近くに子供を潜伏させ、警報が鳴ったら警備隊所へ走れと命じておいたのだ。
「申し訳ありません。まだ賊の首領と交戦中なのであとにしてください」
総隊長にその言葉の意味はわからない。ルインも説明する気もない。いや、説明している余裕がなかった。
ルインが用意した人形──『
式人の戦闘能力は小覇王の甲殻兵並で、武器は内蔵されてはいない。代わりに晶霊石を入れて魔術を使えるようにはしたが、これまた魔石も高額ときて公女が用意してくれた資金では一体に二つが精一杯であった。
計画当初、魔石の節約で“操る„ことと"装備„することで解決したが、精神を飛ばし操るというのは魔力と精神力を想像以上に酷使する。日々の訓練でルインの魔力も精神力も逸脱しているものの相手は闇の世界でも玄人中の玄人。簡単に罠や結界を破ったように見えるがその解除には並ならぬ繊細さが必要であった。
それでもルインには余裕があったが、戦いはまだまだ続く。無駄な動きは控えなくてはならないのだ。
「あとのことはこの“三式„が説明いたします──」
二の角の隠れ家に押し込んできた特殊警備隊の面々のようにスレシア侯爵領特殊警備隊の面々もしばし“男性型の人形„を目詰め続けた。
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