第69話 遭遇
偶然出会った古山さん達と分かれてすぐの事。突如として降り出した大粒の雨に思わず落胆して、近くのカフェに避難した。
「……夏ってこれがあるからな…」
「災難ね」
「何となく、私達っぽいけど」
遥香の冗談には聞こえない発言に思わず苦笑する。
何かしらを楽しんでいると、ことごとく途中で阻まれるのは、確かに俺達らしい…というのは流石に笑えないが。
こんな状況でもいつも通りな遥香に対して、母さんは普段はあまりない状況をどこか楽しんでいるように見える。
俺としては「これ以上余計なことが起こってほしくなかったのに…」と思わずには居られないが。
出掛けてる途中で雨が降ってきた…なんて、よくある事だし些細な気もするが、その雨のせいでまた何か面倒なことにでも巻き込まれるんじゃないかと背筋を凍らせる羽目になるのだから。
「………何やってるんですか凛華兄さん…」
「あ……えっ?リン先輩?」
ほら、こんな風にな。
なんで、こいつ等こんなところに居るんだよ。
さっき古山さん達に会ったばっかりだっての…!
「遥香…と、千隼さんもこんにちは。ご家族で出かけてるなんて珍しいですね」
「…シズ、そういうのは思っても言わないの!」
どっちもまあまあ失礼じゃねえかな、そのやり取りは。うちの人は気にしないからいいけど…気を付けたほうが良いんじゃないか?
「二人とも久しぶり…でもないわね、時々うちに来てたわね」
言いながら母さんは窓際に寄り、二人も席に座った。
「はい」
「千隼さん外出る時そんな感じなんですね!」
「遥香が着せてくるのよ。若すぎるって言ってるのに…」
「いえ、似合ってますよ。スーツのほうが見慣れては居ますけど」
母さんはうちの後輩達に割と人気だからな…。てか、そんなことより…。
「…二人はなにしてんだよ…?」
「私達のことより、凛華兄さんの格好の方が気になるんですが」
「お前の兄貴じゃねえって」
「今はお姉ちゃんだよ」
「遥香止めて、話がごちゃつくから」
「…兄さんはお母さんの誕生日を忘れてた罰を受けてる所だから。二人は?」
最初からそう対応してくれよ面倒な会話させやがって。
「私達は穂香を尾行していました、途中で友梨奈が寄り道したせいで見失いましたが」
「あ…全部理解したよ」
「…もしかしてリン先輩も会いました?」
「会った」
「穂香とどういう関係なんですかね、あのイケメン」
「義理の兄妹らしいよ。ああいう根っこから真面目そうな男の子って良いよね、ちょっと話すだけで性格の良い人なんだなって分かるから……」
何気なく言うと、如月と雫の二人だけじゃなく、遥香や母さんまでも複雑な表情で俺の顔を見ていた。
変な空気になったので思わず視線で母さんに助けを求めるが、何故か視線を逸らされた。
「…凛華兄さんって男もイケるんですか」
「ちょっと待て、何をどうしたらそうなるんだよ…」
「見た目のせいでなんか…」
「いやいや、人の恋路に割り込むほど性格悪くねえよ」
「……は?恋路?」
「彼どう見ても、穂香の事好きだろ。応援するしかないって」
「…いや、さっき兄妹って言ってませんでした?」
「義理だよ、親の再婚がどうとかで…」
「…応援って…。兄さんそんなキャラじゃないでしょ」
心外すぎるんだけど。
「身近な人を好きになった男を応援したいって思う事のどこがおかしいんだよ」
「…あー…」
「兄さんと同じ道に行かなければね」
「穂香はそんな子じゃないですし、そもそも今は凛華兄さんにお熱ですからどうでしょうね」
好き勝手言いやがって…言葉に詰まった如月を見習えよ。
「…こう見ると、雫と椿は本当に似てないわね」
「そうですね」
母さんの何気ない呟きに、いつものように表情を変えずに頷く雫。
俺は思わず、即座に否定した。
「めっちゃ似てるだろ」
「…心外です」
「そういう所とかな。椿も「え〜似てないよ〜」って否定するだろうし…」
そもそも俺のことを好きになる奴皆似てるんだよ。
変に執着心が強い所とか、妙に容姿が優れてる所とか。
……何かしら闇抱えてる所とかな。
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