母と妹が出来て婚約者が義理の家族になった伯爵令嬢は・・

第8章 ４ 甘い朝

　朝―

眩しい太陽の光でスカーレットは目を覚ました。

「う…うん…」

小さく身じろぎし、パチリと目を覚ますと眼前には自分の顔をじっと見つめる美しいアリオスの顔があった。

「キャッ！」

スカーレットは驚き、小さな悲鳴を上げるとアリオスはニコリと笑みを浮かべながら言った。

「おはよう、スカーレット」

「あ…お、おはようございます…アリオス様…」

するとアリオスはスカーレットを抱き寄せると唇を重ねた。

「ん…」

アリオスの熱い口付けに応えると、スカーレットを抱きしめる腕に力がこもる。しばらくの間、２人は深い口付けをかわしていたが、やがてそっとアリオスは唇を離すと言った。

「すまない、スカーレット。俺は仕事があるからもう戻らなくてはならないんだ…。スカーレットはまだ身体を休めた方が良いだろう？昨夜は…い、色々無理させてしまったからな。スカーレットはその…初めてだったのに…」

アリオスは最後の言葉に少し頬を染めながら言った。

「あ…」

スカーレットはその言葉の意味に気が付き、途端に顔が真っ赤になった。

「ア、アリオス様。私は…」

するとアリオスはスカーレットの髪にそっと触れると言った。

「今日はカールの授業は休みでいい。そ、その…身体をいたわって欲しいんだ。こんな事…俺が言えた義理じゃないのだが…」

アリオスはベッドから起き上がると言った。アリオスはとっくに目が覚めていたので既に服は着込んでいた。

「あの、アリオス様…」

身体を起こしたスカーレットの姿を見て、アリオスの頬が赤く染まる。

「あ、あまりそのような姿を見せつけないでくれ…またスカーレットを抱きたくなってしまうから…」

その時になってスカーレットは自分が何も身につけていない事に気付いた。

「え…？キャアッ！」

小さな悲鳴を上げたスカーレットは頭からキルトを被ってピローに顔を埋めた。そんなスカーレットを愛しげに見つめるアリオス。

「それじゃ、また後で。」

アリオスはベッドから降りてスカーレットの部屋を出ようとした時―。

「あ、あの！アリオス様っ！」

声をかけられ、振り向くとそこにはキルトを巻き付けたスカーレットがベッドの上に起き上がっていた。そして言った。

「こ、今夜…私達と一緒に…お食事をして頂けますか？」

「…」

少しの間、アリオスはスカーレットを見つめると笑みを浮かべた。

「ああ、勿論だよ」

そして部屋を後にした―。

＊＊＊＊

午前１０時―

　アリオスがザヒムと２人で執務室で仕事をしていると、不意に彼が声を掛けてきた。

「アリオス」

「何だ？」

「今朝はどうした？やけに機嫌がいいが…何かあったのか？」

「え？」

その言葉にどきりとした。

「な、何故そう思ったんだ？」

すると書類から目を話したザヒムはアリオスを見ると言った。

「お前なぁ…俺達は何年の付き合いだと思ってるんだ？それにお前はとても分かりやすいからな」

「え…？そ、そんなに分かりやすかったか…？」

「ああ。ほら、正直に言えよ。昨夜、屋敷に帰った後何があったんだ？」

（ザヒムになら…本当の事を話しても良いか…）

アリオスはザヒムをじっと見つめると言った。

「実は…昨夜スカーレットと気持ちが通じたんだ…」

「何？それは本当の事か？」

「ああ、スカーレットも俺を好いてくれていた」

「ほらな、言ったとおりだろう？それでその後はどうなった？…って聞くまでもないか。お前を受け入れてくれたんだろう？」

「あ、ああ…」

その言葉にアリオスは顔が赤くなりながら続けた。

「俺は…スカーレットを愛している。今すぐにでも彼女と結婚したいくらいだ」

「へぇ〜…お前はもう誰とも結婚を考えないと思っていたが…良かったじゃないか。そう思える女性に出会えて。おめでとう、アリオス」

ザヒムは心から祝福の言葉を述べた―。