第8章 3 結ばれた夜

 アリオスはスカーレットの隣に座ると、再度尋ねて来た。


「スカーレット、本当に俺の事を…?」


「は、はい…。そうです。私はアリオス様の事がす…好きです」


ますます顔を赤らめながらスカーレットは言う。


「俺の事が…怖くは無いのか?君は男性恐怖症だっただろう?」


アリオスは慎重に尋ねた。ここで一気に距離をつめて、怯えさせてしまいたくなかったからだ。しかし…。


「私は一度もアリオス様の事を怖いと思ったことはありません。た、確かに始めの頃は警戒していましたが…その気持ちもすぐに消えうせました」


その言葉にアリオスは目を見開いた。


「そ、そうなのか…?」


「はい。アリオス様は…カール様をとても大切にされている愛情深い方です。その事を知ってからは一度も…」


「スカーレット…」


アリオスはスカーレットの肩に手を置き、そっと自分の方に抱き寄せた。てっきり…拒絶の態度を取られるのではないかと思ったが、スカーレットは身体の力を抜き、自分の胸に頬をすり寄せて来た。

そこでアリオスはスカーレットの頬に両手を添えて上を向かせると顔を近づけた。


「…」


無言で瞳を閉じたスカーレットの姿にアリオスは了承を得たと確信し…そっと唇を重ねる。重ねたスカーレットの唇は微かに震えていたが、自分に身体を預けている様子から拒絶は無いと感じたアリオスはスカーレットの唇をそっと割り、舌を差し込んでみた。

その一瞬、スカーレットはビクリとしたが拒絶する事無く受け入れてくれた。

そこでアリオスはより深くスカーレットに口づけし…長いキスが終わるとスカーレットの耳元で囁くように言った。


「スカーレット…君が欲しい」


その言葉に一瞬スカーレットは真っ赤になるがアリオスの首に腕を回し、無言で小さく頷く。

アリオスはそれだけで今までにない位の幸せを感じた。そしてスカーレットを抱き上げ、ベッドまで運んでそっと降ろすと言った。


「優しくするから…俺を受け入れてくれるか?」


「は、はい…」


真赤になって答えるスカーレットの頬にそっと手を添えるとアリオスは優しい笑みを浮かべると言った。


「スカーレット…君を愛している」


「!わ、私も…アリオス様を愛しています…」


アリオスは横たわるスカーレットに再び深い口付けをすると、スカーレットの夜着に手を掛けた…。



 その夜、青白い月夜に見守られながらアリオスとスカーレットは初めて結ばれた。2人は夢中になって互いの身体を求め合い、明け方まで愛を交わし続け…そして夜が明けた―。




****


 薄っすらと太陽が昇り始めた頃…アリオスの腕の中で疲れ切ったスカーレットが静かな寝息を立てて眠りについていた。そんなスカーレットを愛おし気に見つめながらアリオスは彼女の髪をそっと撫で続けながら思った。


(もう…俺とスカーレットは心も身体も結ばれたんだ。すぐにでも仮婚約を本物の婚約にして…シュバルツ伯爵に2人の事を申し入れて、結婚の承諾を貰おう…)


既にアリオスの頭の中では結婚式を挙げる2人の姿が思い描かれていた。


「スカーレット、愛している。もう…離さないからな…」


アリオスは眠っているスカーレットを抱き寄せ、そっと口付けるのだった―。

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