第4章 4 カールの予感
「このお手紙…ヴァイオレット様からだわ…」
スカーレットの言葉にカールがピクリと反応した。
「え?ヴァイオレット様からですか?」
そして途端にカールの顔色が曇った。
「何と書かれているのでしょうか?」
ブリジットが尋ねてきたので、スカーレットはテーブルの上に置いてあったペーパーナイフを手に取り封を切り裂いて中から手紙を取り出した。手紙は2つ折にされており、スカーレットは早速手紙を広げ、ブリジットとカールの前で手紙の内容を読み上げた。
『ごきげんよう。スカーレット様。急なお誘いですけど、6月15日にお茶会を開くので王宮に遊びに来て頂けないかしら?時間は午前11時。王宮にある『ローズガーデン』のサロンで開催します。お待ちしておりますわ。 ヴァイオレット』
「…」
手紙の内容を聞いてブリジットの顔が曇った。スカーレットが王宮での出来事を話してあるからだ。
「スカーレット様…」
カールがスカーレットの名を呼んだ。カールの顔は酷く青ざめている。
「カール様?どうされたのですか?」
そんな様子のカールが気になり、スカーレットは声を掛けた。するとカールが言う。
「僕…あの方が苦手です。まだアリオス兄様がヴァイオレット様と仲が良かった頃、よくこのお屋敷に遊びに来てらしたんです。僕も何度かお会いした事がありました。けどあの方はお兄様の前では僕に親切にして下さったのですけど、お兄様が席を立った途端、僕に…言ったんです。僕の母は卑しい血の女性なのよって…。それ以外にも喘息で咳をした時、『汚らしい咳をしないでちょうだい』って…」
カールの言葉は最後の方は消え入りそうだった。その話を聞いてスカーレットとブリジットは衝撃を受けた。
「カール様、皇女様にそんな事を言われたのですか?」
スカーレットは尋ねた。
「は、はい…そうです」
「何て酷い…」
ブリジットは声を震わせて言う。
「その話、アリオス様はご存知なのですか?」
「いいえ、知りません。ヴァイオレット様に口止めされたから。絶対今の話はアリオス兄様に話してはいけないって。もし話したりしたら僕がこの屋敷にいられないようにするって…。」
カールはその当時の事を思い出したのか、少しだけ涙ぐんでいる。
「カール様…」
スカーレットはカールをギュッと抱きしめた。するとカールもスカーレットの背中に手を回し、言った。
「スカーレット様。僕…嫌な予感がするんです。スカーレット様が心配です」
「カール様は本当にお優しい方ですね。大丈夫です。アリオス様に相談して決めますから安心して下さい」
「はい…」
カールは納得したのか返事をした―。
****
その日の夜の事―
カールと夕食を取り終えたスカーレットはアリオスの執務室を目指して1人長い廊下を歩いていた。
(ヴァイオレット様はどういうおつもりで私をお招きしたのかしら?しかも2日後なんてあまりに突然すぎるわ…)
ヴァイオレットの意図が分からず、色々思い悩みながら歩いているといつの間にかアリオスの執務室の前についていた。
(何の連絡も入れずにいきなり執務室に来てしまったけれど…いらっしゃるかしら?)
そして深呼吸すると、スカーレットは扉をノックした―。
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