第3章 23 アリオスの反論
「い、嫌ですわ。アリオス様ったら…そんな話…」
ヴァイオレット皇女は慌ててアリオスを見た。その様子を見たスカーレットはピンときた。
(ひょっとするとアリオス様とヴァイオレット皇女様が破局したのは…皇女様が原因なのかもしれないわ…)
アリオスの言葉で、場の空気がすっかり張り詰めたものになってしまった。
「ま、まあ…もう過去の話は良いではないか。今はこれから先の話をするべきだと思わないか?ヴァイオレットも昔の話はやめておきなさい」
「お兄様…!」
ヴァイオレット皇女は何か言いかけたが、 アリオスが口を挟んだ。
「ええ、今後の話をしたほうが良いと思います。過去の話などどうでも良いことですから」
アリオスはピシャリと言った。それは有無を言わさないものだった。
「ああ、そうだな。それよりも私はスカーレットの話を聞きたい。カールの家庭教師をしていると話していたが…失礼だが君はいくつなんだい?」
アイザック皇子はスカーレットに尋ねた。
「はい、19歳です」
「ほお…まだ19歳なのか?」
「まあ、私より年下だったのね?」
ヴァイオレット皇女も以外そうに言う。
「しかし、19歳と言えば…まだ大学も卒業されていないのではないか?」
アイザック皇子の言葉にアリオスが代わりに答えた。
「お言葉ですが、アイザック様。スカーレットはとても優秀な女性です。高校も大学も全て飛び級で卒業しているのです」
「まあ…女性でありながら随分勤勉な方なのね。それでは社交界にあまり顔をだされていなかったのでは?」
ヴァイオレット皇女はどこか棘のある言い方をする。
「はい、そうですね。ほとんど学問に励んでおりましたから…」
しかし、スカーレットは勉強が好きだった。華やかな社交界に立つよりは勉学に励み、様々な知識を身につけるほうが楽しかった。
「どうりで立ち居振る舞いがぎこちないと思ったわ」
ヴァイオレット皇女の言葉にアリオスは反論した。
「私は彼女のそういうところが好ましく思い、好きになったのです。場数を踏んで世慣れている女性たちよりも素直で、余程好感が持てます」
その言葉は明らかにヴァイオレット皇女に向けられた言葉であった。
「そ、そんなアリオス様…!」
流石にこの言葉にヴァイオレット皇女は青ざめた。
「アリオス、流石に今の言い方は…」
アイザック皇子はアリオスをたしなめようとした。
「いいえ、先に私のスカーレットに失礼な事を言ったのは皇女様の方です。」
そして言い終わると席を立った。
「え?アリオス。どうしたんだ?」
アイザック皇子が尋ねた。
「もう帰るのです。挨拶も済んだことですし」
「そんな!アリオス様!私…まだ貴方と2人でお話もしていないのに?!」
するとアリオスは言う。
「申し訳ありませんが、婚約者のいる前で別の女性と2人きりで話をするような真似は出来ません。もし、どうしてもとおっしゃるのであれば、スカーレットを同席させてからでしたらお受け致しますが?」
そしてスカーレットに手を差し伸べると優しい笑みを浮かべて言った。
「さあ、帰ろう。スカーレット」
「アリオス様…」
気づけばスカーレットは立ち上がり、アリオスの手を取っていた―。
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