第二百話
「ヘレナ、分かっているな」
「分かってます。とーさまにそこまで念を押されなくても私の役割以外は」
「違う、こうなった以上自分の身を第一に考えるんだ。危険だと思えば躊躇なく力を使え、余計な事は一切考えず身を守ることだけに専念するんだ。よいか?」
リブライトが纏った雰囲気はいつもの彼とは違っていた。それは彼の発する言葉も同様ではっきり分かるほどに重く鋭いものだった。何より珍しく会話の端にすら冗談のない言葉にヘレナは黙ってうなづく。
「でしたら、最初から全力で挑みます」
意気込むヘレナを見てリブライトは頭を掻く。
彼からすれば少しばかり複雑な心境である。ヘレナは外見や考え方の随所は彼女の母親であるレイテ似なのである、これはもちろん良いところ、それは言うまでもなく明らかなこと。問題なのは悪い方だ、これがどういう訳かリブライトと同じなのだ。良くも悪くも集中すると周りが見えなくなるのだ。
ただ、ヘレナに自分と似ている部分がある、という事がリブライトにとってはこれ以上なく嬉しいのである。
「それで、ヘレナ。使う魔法はどうするつもりだ?」
「……
「岩弾は分かるが、どうして炎槍なんだ?」
読んだ字の如く、岩弾は岩を弾丸のように撃ち出す中級魔法で
その上、土属性魔法は性質上触媒があれば消費する魔力すらも抑えられるのだ。これほど持久性と汎用性の高い魔法は他には無い。
ちなみにどうして飛竜討伐でよく使われるのかというと土属性魔法が持久戦向きということとその手数の多さがやはり大きい。それだけではなく当たりどころが良ければ一発でワイバーンを空から落とすことができるのだ。
ワイバーンの外皮がいくら硬いといっても衝撃までは防げない。むしろ硬いからこそ衝撃を逃せず内部で反響する。簡単な話、ワイバーンは空中で
それ自体は物理攻撃でもやろうと思えば可能だが、魔法の良いところは魔力によって威力の最大値が変わっても最小値は変わらないということと物理攻撃は距離によって威力が減衰するのに対して魔法は一定距離までなら威力の減衰がないということ。
簡単な話、下手くそな岩弾でも当てるだけで問題なく撃ち落とせる可能性があるのだ。
「えっと、炎槍については単純に試し撃ちがしたいだけなので、ワイバーンとも相性はそこまでよくもないですしついで程度ですので軽く一、二発撃てればなぁ〜って」
全くもって恐れを感じさせないヘレナの態度にリブライトは諦めとともに深くため息をつくのだった。
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