第百七十八話
「な、なに、そのスタイル」
聞き間違えが良かった。本当に心の底からそう思った。
だって、そんなの到底ろくでもないじゃん。
「え? サリーナ知らないのですか?」
「知らないよ。なに私の知らないところで私の名前使って変なジンクスを作ってくれちゃってるの」
「意外です。あれだけ流行っているのですからとっくにサリーナは知っているというか、許可くらい取っているものかと」
「いや、ルーナ。普通に考えて? 私がそういうった事に許可を出すと思う?」
「有り得ませんね。確かによくよく考えなくてもサリーナなら断りますね。そうすると、本当に無許可という事ですか?」
清々しい程の即答に頷いてため息をつく。
「そういう事、というかサリーナスタイルって一体何なのさ」
「ん? 読んで字のごとくですよ。サリーナの服装スタイル、略してサリーナスタイル」
まだ、戦い方や剣技や体技から取っているなら納得のしようもあるのだけれど、どうしたら私の服装を真似しようなんて発想になるのだろう。
「今や、女性冒険者達の間では知らない人はいないと言うくらいに男女問わず人気のある衣装なのですよ。売り文句と言うか流行り文句は『誰もが夢見る英雄を
ん? 女性冒険者が知っていて女性に人気があるというのは納得できる、それがなんで男女問わず人気になるのだろう。まさか、男性冒険者もこのデザインの―――。
流石にそれは無いだろう。無いと信じたい。
途中まで想像しかけた恐ろしい光景を首振って払う。もしそれが本当だとしたらそれは地獄でしかない。
「えぇ、というかキャッチコピーまであるの。私の知らないところで本当に何してくれちゃってるの? 使用料を請求しても怒られないでしょ、何より無許可何だからそのへんも賠償ものなんだけど」
ただ、このやり方と言うか全体から感じるこの印象はどうにも違和感がある。どうにもよく知っている雰囲気を感じる。
というか、私最近そういった感じの話を聞かされた気がする。
「ねぇ、その衣装ってどこで売ってるの?」
「サベレイ通りのシルク商会です」
何となくそんな感じはしていたのだ。
頭の中で笑顔いっぱいに手を振る少女を思い浮かべて観念する。
「はは、なるほどねぇ。やっぱりそうだった」
「サリーナ、知っていたのですか?」
はぁ、やってくれましたね、お嬢様。
「知ってるも何も、シルク商会の会長は名義上というか便宜上私ってことになってるからね。それなら確かに使用料もかからない、か」
「え、サリーナ、商会を開いていたのですか? 全くの初耳なんですけれど」
「私じゃないよ、言ったでしょ。便宜上って、商会を開きたいって願ったのはヘレナだよ。私は名前と身分を貸しているだけ、ヘレナが成人したら全部ヘレナに返すんだから」
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