第百七十六話
「て? それって国宝級ってことですか?」
すぐさま魔剣に目を落とすルーナ、ただ未だに半信半疑のようで僅かに顔を傾けている。それも当然と言えば当然だ。魔剣ニブルヘイムには聖杖フィデス・レイのような神々しさ絢爛さは無い。見る人によってはただの
「そう、少なくとも能力自体は」
実際にこのニブルヘイムが伝承通りの威力が出せるのかと言えばそうでは無いけれどそれでも使い方によっては確かに相手を凍らせる事も容易である。
「さっきから気になってるのですけれど、サリーナはこの剣が嫌いなのですか?」
「嫌い、というか苦手なんだよね。ニブルヘイムがとかじゃなくて魔剣自体が。少なからず魔剣は私の事が嫌いみたいだからね、嫌われてる相手に無理にでもコミュニケーションをとろうとは思わないでしょ。現に私は魔剣が無くても特に困ってはいないしね」
ただ、そう思う一方でやはり無意識的に魔剣の存在を避けていたのも事実なのだろう。
でなければ手放すことは無かった。彼らを忘れる事など有り得なかったはずなのだ。
「魔剣って、意志を持ってるのですか?」
「持っているのも有るって話。これも近しい物なのは確かだしね」
魔剣の種類を分けるとするとその大半は意志を持っているかいないかの二種類になる。
亜種ではあれニブルヘイムのように意志を持った魔剣は魔剣の中でもその稀少性が高く神が創った剣『
そしてもう一種は言わずもがな人の手で作られた魔法の
「つまり、サリーナはこの剣と会話が出来るということですか」
「いや、意思があっても疎通が出来る訳じゃないならね。一方的で一方通行だよ」
「ん? ならどうして意思があるなんて分かるんですか?」
「意思がなければ勝手に動いたり使用者以外には危害を加えるなんてこと起こりようがないでしょ」
基本的に『神剣』の類は使用者を選ぶ。
ニブルヘイムだって例外では無い。私のことが本当に気に入らなければきっと今頃私は氷の中だ。少し不思議ではあるもののニブルヘイムは私の事を認めてくれているという事なのだろう。
「つまり、意思のある魔剣は人を傷つける、と?」
「ものすっごく端的に言えばね。とはいえそれは意思の無い魔剣でも同じ、そもそも普通の剣だって同じ事だよ。全て等しく他者を傷つけ殺しうる。違うのは使用者にその意思があるのかないのかってだけ。そもそも『神剣』だからってそれが『聖剣』とはなり得ないでしょ。意思のある剣なんて人からしたら等しく邪剣だよ」
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