第百五十二話

「ちなみにですけれど、とーさま。今回はソフィア達を一緒に連れて行ってもいいのですか?」


「もちろん……と言いたいところなんだがな。今回ばかりはお友達の同行は無しだ」


 ある程度そうなるであろうと予想していたヘレナは何も言うことはなかったがただ静かにリブライトのことを見つめる。

 そんな彼女の様子を見てリブライトは申し訳なさそうに右手で頭を搔く。


「今回は予定が急だったから十分な護衛が用意できていないんだ。そんな中でヘレナだけではなくソフィア嬢やクレア嬢まで連れているところに奇襲なんてされたらたまったものではないし、そうなったら私はレバノスやセレスティアに向ける顔がない。本来であればサリーナが護衛の部隊をまとめるはずだった。彼女が居たのならソフィア嬢やクレア嬢を連れて行くというのにもいくらかの現実性をあった───が、そんな当の彼女が救護院に送られるような大怪我を負うなどという予想外の事態まで起きている。当然だが俺はサリーナよりも弱い、これは他の護衛もそうだ。サリーナすら大怪我をするような相手が奇襲を仕掛けてきたら、いやそもそも正面からの迎撃であったとしても俺らでは何も出来ない、情けないけどな。詰まるところ何かが起きた時に対応するには心許ないのが今の現状だ、護衛の数すら満足ではないのにそんな中でただいたずらに護衛対象を増やすなんてことは俺の選択肢には無い。それにもしもそんな最悪が起こったとしてもお前一人なら俺が全力で守ることもできる……という説明で納得できるか?」


 リブライトの弁明にヘレナは静かにため息を吐く。


「別に私だってとーさまにそこまでして無理をさせるほど我が儘娘じゃありません。元より連れて行ってもらえるとは思っていないのです。ただ行けたらいいなぁ〜、ってそれだけです、それだけですけど―――とーさま、何か隠してますよね」


 ヘレナが置いたカップの音が妙に部屋の中を反響する。


「そんな状況だからこそなおさらとーさまが私を連れ出すというのは不自然です。多分今この街は王都よりも何倍も安全なはず。だって、この街には怪我をしたサリーナを含めても七賢者が四人もいるんです半数以上の王国における最高戦力が集結している。それこそ何らかの意図を感じますけれどそれでも彼女たちが居るならきっとどこよりも安全なのは間違いないはずです。それに王都と違って何か大きなイベントがあるわけでもないのですから、ここが舞台に上がることはそうそう無いはずです。そもそも収穫祭っていう大きな祭りが終わったばかりです。問題が起こるとすれば王都とこの街は比べるまでもない。何より本来であれば舞台は王都の方が地方よりもその影響も衝撃も大きいのは言うまでもない訳ですから、そうでしょ?」

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