第百四十七話
「―――どういうこと?」
これについてはソフィアを含めクラスメイトも同様であった。
「だから、ね。無詠唱魔法ってそんなに都合のいいものじゃないんだよね。初級の魔法ならそれこそそれなりの才能が有ればこなせるようにはなるよ。ただそれにもただならない努力っていうのが付きまとうわけだけど……でも、中級以上になると途端にそれは難しくなる、それは努力でどうこうなるものとはまた違う―――結局のところ、努力ではどうしようもできないことがこの世界にもある」
どこか遠い目をして教室の外、その空を眺めるヘレナ。
「じゃ、じゃあヘレナでもこの魔法を無詠唱で使うことはできないの?」
「ううん、そういうわけじゃない。出来るか出来ないかで言えば多分出来るよ。でもそれはあくまで詠唱を使って魔法を発動させてから魔法の効果範囲だったり威力、そういった諸々の情報をこれまでかってくらいにかき集めるのが前提。そうしてその情報に『ヘルフレア』ってタグをつけることができれば、それを引っ張り出して無詠唱という形で再現することはできる。ただ、大前提としてどんなに少なくても一回は詠唱を使わなくちゃいけない。私だって使ったことのない道具の使い方なんてわからないからね、先人たちが語り継いできた説明書はそれだけ偉大ってことだよ」
そうしてヘレナはレイテシアに視線を送る。
それを受けて流れるようにレイテシアは黒板にチョークを走らせる。
スラスラと書き出されるその内容にクラスメイトは釘付けとなる。
(でも、本当はそれだけじゃない……私がここまで無詠唱で魔法を使えるのは前世の助けが大きいから。もっと詳しくいうのならこれは茜のおかげ。この世界の魔法は単純にその名前が英語で表記される、であれば効果を予想するということは私には難しくない。何よりこの世界であっても私の知っている物理法則や一般常識が確かに存在している。火はなぜ燃えるのか、空はなぜ青いのか、そういった一見なんて事のない些細な知識、でもそれはこの世界の理でもあってそれこそどんな世界でも情報は最大の武器なのだ。知ってるのと知らないの、どっちがいいなんて聞くまでもない)
皆が板書にいそしむ中、どこか上の空なヘレナの横顔を複雑な面持ちでソフィアは眺めていた。
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