第百四十五話
ソフィアの質問は最もであった。
かく言うヘレナ自身もこれに関しては自分の発言に疑問を浮かべているようで逡巡する。ただ、それもほんの一瞬で次の瞬間には鋭い眼光がソフィアに突き刺さる。
「ソフィア。人が滅ぶときってどんな時?」
「どんな時って―――」
突然の質問にソフィアは言葉に詰まる。
ただ、それも当然と言えば当然である。普段からそんなことを考えている人は極がつくほど稀なことは疑いようがない。
なによりヘレナもこれに関しては答えを求めていた訳ではなく、ソフィアの次の言葉を待たずに話し始める。
「例えば、天災。それはまさしく神の怒りとでもいうような大地の振動や豪雨の襲来、暴風の奔流。そんな天変地異のような力に当然人はなす術はない。そもそもそれには意思がない、どれだけ泣いて叫ぼうとも祈ろうと願おうとそれは力がある限りその力を遺憾なく発揮する。それは例えどんなに
会話を区切るとヘレナは「どうしよう」、とそう言いたげに人差し指で自分の細い首を数回かく。
ヘレナが魔法が必要になる状況を戦場と、そう口走ったのにはそこまで大きな意味は無かった。しいて理由を上げるにしても
「でも、それだけで滅ぶほど人は脆くも柔くもない。例えどんな天災でも生き残る人がいれば必ず文明を再構築する、つまるところ災害程度では到底人を滅亡へなんて追い込めない、追い込むのならそれは下手をすればそれは世界の滅亡と同義。と言うよりも前提として意思なき力では何かを滅ぼすなんてことはできない、それが世の摂理」
「詰まるところヘレナちゃんは人を滅ぼせるのは意志を持った敵だって言いたいの?」
迷走しそうになる話の途中で差し込まれたクレアの助け舟にヘレナは胸を撫で下ろし、その質問に便乗する。
「そう、人が人でありながら魔を打倒する力、この魔が人、あるいは人外の意思。そして最終的に意思がぶつかるのは他ならない戦場だから。それに上位の魔法が使われるのなんて戦場くらいしかない……で伝わる?」
その最後の一言にソフィアやクラスメイトは「確かに」、と揃って頷いた。
その様子にホッと息をついたヘレナ。そんな彼女を見てレイテシアはそれは嬉しそうに微笑んだのだった。
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