第四十四話
「……行ったな。いいのか? 見送んなくて」
屋敷の屋根の上に座り込んだ二つの影が遠くなるヘレナとソフィアの後ろ姿を眺めていた。
「……私は、あの子に自分を誇るということはできそうにないです」
「はは、そりゃ耳の痛いこった。俺もそんなことはできそうにもねぇ、ソフィアから見りゃ俺なんて家の権力に
「まぁ、それはそうかもしれませんが。それでもあなたには誇れるものがあるでしょう。私は……」
スっと立ち上がったサリーナを見上げてレバノスは吹き出した。
「おいおい、いつものお前らしくないな。羨ましいなんて言わないでくれよな。こんなもん俺は欲しくて手にしたわけじゃねぇんだからよ。だから俺はソフィアに同じ道は辿らせたくなかった。何よりお前だって似たようなものだろ」
背中に背負った槍の柄を撫でながらレバノスは空を見上げた。
「でもよ、俺には分からなかった。俺は親になって初めて知ったよ、多分、
「……でも、ソフィア様はあなたと違って
「まぁ、それが救いでもあり
屋根から飛び降りたレバノスは土煙を立てることなく静かに地面に着地した。
「んで、どうするよ。俺が四でもいいが」
後に続いたサリーナも何事も無かったかのようにレバノスの隣に降り立つ。
「いえ、私が四つ行きます。元々あなたを巻き込んだような形ですから、なるべくの面倒はこっちの方で―――」
「おいおい、今更だな。ここまできちゃ、面倒の一つや二つ変わらねぇよ。結局全部まとめて面倒事だ。まぁでも、だとしたら俺は西側か」
「心配はしてませんが、用心はしてくださいね。仮にも国宝級の魔道具を持ってる可能性がある―――」
「そりゃ、そっくりそのままお前に返すよ。あの代物が有効なのは魔法士だ。俺は近接戦特化、魔法は使わねぇ。それにそんなものを端っこの隠れ家なんかに置いとくはずがねぇ……中央は最後一緒に叩くか?」
「いえ、終わった方が叩けばいいんじゃないですか? 早い者勝ちです」
「お前のそういうところは相変わらずだな。健闘を祈るぜ、疾風迅雷の英雄さんよ」
ガハハと豪快な笑い声を響かせながら歩いていくレバノスの後ろ姿をしばらく見送って、サリーナも静かに地面を蹴った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます